「三人でやってみませんか?」
昼日中、西の魔法使いたちに人気の中庭のテラス席を占拠し、子供たちに人気のお菓子を籠ごと持ち去り、双子の目を盗んではじめたお茶会で――ミスラは空をぼけっと見上げたまま、おもむろに問いかけた。口の端にドーナツのくずがついていることは指摘しないまま、肉まんをむさぼるのを中断したのはブラッドリーである。
「何をだよ。オズか? フィガロか?」
「パス。気が乗らない」
チュロスを口に含んだままゆっくりとオーエンが断りを入れる。帽子の下で退屈そうに瞬きをする男は、そのくせぎょろぎょろと目を転がしては隣り合うふたりを交互に見た。
「違いますよ。セックスです」
『はあ?』
昼日中、食事中である。そんなことを気にする間柄でも、男たちでもなかったが、あまりに突拍子のない発言に面食らうのは避けられなかった。見開かれた四つの瞳を前にしても調子を崩さないミスラに、思わず残りのふたりは顔を見合わせ、お互いに幻聴を聴いたわけではなさそうだと確かめ合う。
「いやお前、そういうキャラかよ」
「なんで僕がミスラとセックスしなきゃいけないわけ?」
「なんでってなんです。あなた、ブラッドリーとはしてるんでしょう」
している。だからって、という思いと、だからか、という思いが胸に詰まり、いいかげんオーエンも食事の手を止めた。ちら、とブラッドリーを横目に見れば、顰め面で首を横に振る。どうやらミスラは、オーエンとブラッドリーがセックスしたという事実は知っていても、その詳細までは知らないらしかった。例えば、オーエンが女の姿でしか手を出されてないことだとか。
性欲をろくに自覚しないミスラにはけ口にされかけてから、自己防衛と好奇心のままに自分のまともな抱き方を教え込んだのはブラッドリーだった。股を開くよりも腰を振る方が滑稽に感じたオーエンの、男体より手間のない女体で快感を味わい合ったのはブラッドリーだった。それぞれの爛れた関係は意外にも随分と続いたが、三人揃った状態で肌を意識するなんてことは賢者の魔法使いになるまでなかったのだろう。素直なミスラは、ブラッドリーから学んだ気持ちよさを、同じ場所にいるオーエンからも感じてみたがっている。ブラッドリーから手を離すことはしないまま。
「絶対嫌だ……間に挟まる俺が確実にめんどくさい目に遭うだろうし、万が一最中に揉めたら目も当てられない事態になる」
オーエンが言葉通り女役をしていると知っていれば、ふたりでオーエンを抱くという提案がミスラからされたかもしれないが、それはオーエンに許されないだろう。かといって、竿と穴の中継地点になるなどブラッドリーは絶対にごめんだった。そもそも、ひとり相手でも手こずるのに、ふたり同時になど相手にできるものか。気持ちよさを感じる暇も何もあるまい。