ボクらはおんなじユメをみる「 すずめ 私の大切な愛しい子 」
「 第二王子を捕えろ! 」
「 お前はお前の好きなように生きなさい アル」
「 君は私のサーカス団の宝だよ 」
これは
人種も 性別も 性格も 身分も 環境も
何もかもが違うボクらがみた
とっても奇妙で、可笑しな ユメ のおはなし。
「兄さん。兄さん待って!」
「アルーラ 私に懐く分には一向に構わない 寧ろ喜ばしいことだ。だが、危険だからついてくるなという警告を耳に入れないというのは感心しないな。」
「ご ごめんなさい…」
「いや、いいんだ。 すまない 私も強く言いすぎたな…。 ⬛︎⬛︎! アルと遊んであげてくれ」
何かの研究に使う為に集めていた花を⬛︎⬛︎兄さんに渡した⬛︎⬛︎さん。
⬛︎⬛︎さんはボクの顔を見て悲しそうに眉毛を下げてボクの頭を優しく撫でてくれた。
⬛︎⬛︎さん そんな顔しないで ボク 痛くないよ
悲しくないよ。
⬛︎兄さんがボクを見つけてくれたから 大好きなママのことだって 忘れられたよ。
「アル ⬛︎⬛︎兄さんがお前を海に連れて行ってやろう!」
「兄さん? ボクの兄さんは⬛︎⬛︎兄さんだけだよ」
「あぁそう… まっ 行くぞ」
ボクの脇の下くらいを⬛︎⬛︎さんの大きな手が掴んだ。
ふわっ
体が宙に浮いたと思ったら、気付けば⬛︎⬛︎さんの肩に乗っていた。
「じゃ ⬛︎⬛︎ 後の仕事は頼んだ」
「ああ 行ってらっしゃい」
肩にボクを乗せた⬛︎⬛︎さんは優しい足取りで森の中を抜けていく。
一定のリズムで揺れる心地良さにうとうとしていれば⬛︎⬛︎さんは危ないからってボクを一旦下ろして背中に乗せた。
ああ 暖かいな。
ボクの大好きな背中に似てる。
パキッ
サー サー
ザー
ザッ ザッ
バシャ バシャ
ザザーン
ボチャン
ブクブク
この音 海?
もう 海に着いたんだ
あれ? ⬛︎⬛︎さん どうしてあわてているの?
あれ ボク 誰かに掴まれてる
この腕 誰の腕?
「おにいちゃん おきて おーきーて!」
「ん んん…」
パチリ
目を開けば目の前にはパッチリとした大きな黒い瞳。
驚き後退しようとすれば何か細い柱のようなものにドンッとぶつかり飛び上がる。
「え 人?」
「貴様 不敬極まりないな…! その小娘といい 私が誰なのか分からないのか?」
絹糸のような金髪を靡かせて威張っている綺麗な格好をした男。
ボクの住む国の服装とは大分違うけど…他の国の貴族とかだろうか。
よく見たら女の子の方もあまり見かけない服装と髪色だし…というか 此処は何処だろう。
「おい!聞いてるのか?」
「2人ともー!あっちも見てきたけどやっぱり扉がいくつかあるだけで ってあれ? 起きたんだ!」
タッタッと軽快な音を鳴らしながら此方に駆けてきたのは星柄のマントをつけている男
ボクと同じ様に左目が隠れている。
「いやー フシギだね! 来たこともない場所に見たこともない人達と集められて… なんかのゲームが始まるとか!?」
「うぅ… こわいよ」
「! 大丈夫! 僕らがついてるから って名前も知らない人と一緒じゃ不安だよね 僕はエピーロ!君は?」
「すずめ…」
「すずめちゃん! ちょっと待ってね ジャーン!」
何かを見せびらかす様にして手を広げたエピーロの手の中には綺麗な薔薇が咲いていた。
すずめちゃんは影のかかっていた目にキラキラと光を灯し勢いよく上を見上げた。
「お兄ちゃんは ピエロさんなの?」
「へ? あ あぁ そうだよ! 僕はしがないピエロさ 小さなサーカス団でこんなこととか…こんなこととか! 色々やってるんだ」
パントマイムをしたと思えばどこからかバルーンを出したエピーロの手の中で、可愛らしいうさぎが出来上がる。
それを手渡されたすずめちゃんは嬉しそうに笑ってうさぎのバルーンを大切そうに抱えて大きな声でお礼を言った。
「フンッ 下らん」
「ありゃりゃ やっぱり大人には刺さらないかー お二人の名前は?これからいつまで一緒にいるのかも分からないしさ」
「 ボクはアルーラ アルーラ・ノープラトリム」
「アルーラくんね それにしても ノープラトリム…聞いたことのないファミリーネームだ」
聞いたことのないファミリーネーム
きっとエピーロは出身地が違うのかな なんて意味でそう言ったんだろうけど、ボクはなんだか気まずさを感じて苦笑いをした。
「あ えぇっと 貴方は…?」
グッと眉間に皺を寄せた高貴なファッションの男性はボクらの顔を見たと思えば深く溜息を吐いた。
「貴様ら… この私の名が分からんのか?」
「無理もないさ 僕たち なんだか生まれたところが違う様だし… 貴方がどこで有名だろうと僕たちにはさっぱり!」
「 エイドリアン・ヴァルモントだ アストラジア王国… 第二王子」
「第二王子!? 本当にすごい人なんだ! アストラジア王国ってのは聞いたことないけど」
「ボクも…聞いたことない国名」
「すずめもー!」
エイドリアンは信じられないとでも言う様に頬を引き攣らせたものの、どこか気の抜けた様に息を吐いて腕を組んだ。
「此処で下らない談笑をしていても変わらん 扉とやらを見に行くべきだ」
「下らないって… まっ その通り! 案内は任せてー! それじゃ レッツゴー!」