魏無羨、藍忘機とお別れする1話
少なくとも俺は、こうして囲われる為だけに藍湛と付き合い始めたわけではなかった。居場所が欲しかった俺に、「隣」という帰る場所を与えてくれたのは間違いなく藍湛。だけども俺が本当に欲しかったのは、広い高級マンションの一室で穀潰しのように悠々自適に暮らせる環境でも、名ばかりの恋人という立ち位置でもなかったのだ。
確かに藍湛を付きまとい続けたのは俺だろう。潔癖で気高く誰からも一線を引いているような近寄りがたい雰囲気をまとっていて、俺はいつもその顔を崩してみたかった。それがどんな理由であっても、俺が原因であるなら何でもいい。ただ笑ってほしくて、ひたすらに藍湛の背を見つけては追いかけ続けていた。江澄に何を言われたって、聶懐桑に揶揄われたってやめることができない。藍湛はモテる男だったが、それは俺にとっても例外でなくそれはそれは魅力的な男だったのだ。でもだからと言って藍湛を好きになったのは何も顔がタイプだったからというわけではない。俺は美しいものが好きだけど、顔だけで選んだ相手に自分自身を捧げられるほど自己肯定感の低い人間ではないのだ。
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