「はぁ…」
疲れた。ものすごく疲れた。
急に舞い込んできた仕事のせいでここ一週間ほどパレスに帰ることができておらず、ろくに眠れてもいなかった。
積もりに積もった仕事をやっと片付け、早く休めと定時で会社を追い出され久しぶりに空が明るい時間帯に帰宅した。
久しぶりに早く帰れたし、この時間ならまだ庭仕事してるかな。
……、よし、パレス帰ってアモンを吸おう。
疲労で限界の頭でそう決めた私は足早に帰宅して服を着替え、金色の指輪を嵌めた。
ぐわりと世界を移動する感覚には未だに慣れない。
耐えるために固く閉じた目を開くと、今日は自室ではなく庭に飛ばされたようだった。
庭……、ちょうどいいや
白銀とピンクの頭を探して華やかな花が美しく咲き誇る庭園を進んでいく。
赤色の薔薇を基調に様々な色の花が咲き乱れるこの庭園は眺めるだけでも心が和むが、1歩足を踏み入れると花の良い香りに包まれとてつもなく癒される。
あ、いた
バラの樹の根元にしゃがみこみ、何やら作業をしているようだった。
ふわふわと動く白銀とピンクの頭がすごく、かわいい
近くには肥料の入った袋のようなものがあり、今日は剪定作業ではないらしい。
「アモン」
「主様!おかえりなさいっす!」
驚かせないようにと一声かけると、しゃがんだままこちらに振り返りいつも通りの笑顔で迎えてくれる。
その眩しい笑顔が疲労で弱った心に染みて涙が出そうになり、慌てて振り返ったアモンに抱き着き、青いバラが咲く胸元に顔を埋める。
「あ、主様……?」
スゥゥゥゥゥ
「えっ!?あっ主様!?何してるんすか!?」
土仕事をしていたからか、いつものバラの香りの中に土の香りが混ざっていてすごく、落ち着く。
暖かい……
安心して気が抜けたのか落ちてくる重い瞼に抵抗できず、そのままゆっくりと目を閉じた。
「あっ、あの主様、オレ今土仕事してたのであんま匂い嗅がないで欲しいんすけど…って、あれ?」
ふと動かなくなってしまった主様を不思議に思い覗き込むと綺麗な顔で眠ってしまっていた。
「こんなに隈つくっちゃって……お疲れ様っす、主様」
それにしても、この体制で寝れるなんて器用っすね〜、主様。
……いや、この体制でも寝ちゃうくらい疲れてたんでしょうね。
「ほんと…、あまり無理はしないでくださいね」
……この時間のこの場所は誰も来ないだろうし、いいっすかね
土で汚れた軍手を外して自分の胸の中で眠る主のまるい頭にキスをひとつ落とし、思ったよりも軽い体を抱き上げ、主の部屋へと歩き出した。