少し疲れてしまったから、静かな場所で休憩しようと思ってたどり着いた書庫。フェネスさんがいたらいいなぁ、と思いながらチラリと中を覗いてみると黙々と本を読んでいるフェネスさんがいて少しだけ、嬉しくなった。
「フェネスさん」
気づかないだろうなと思いながらも一応声をかけてみると、やっぱりオレが来たことにも、声をかけられたことにも気づかずに変わらず本を読み続けている。
カタン
フェネスさんの隣に座って、机の上に投げ出した腕に頭を乗せてフェネスさんを見上げてみる。
「……綺麗っすね〜、」
どんな本を読んでいるのかは分からないけれど、文字を追って動く黄色い瞳や外から入る光を反射して輝くモノクル。完璧な造形の顔にサラリと垂れる赤と黄色の髪。
ぼんやりと眺めて綺麗だなと思っていたら、口からポロリとこぼれてしまったみたいだ。
まぁ、誰もいないしフェネスさんにも気づかれないから、良いっすよね。
顔にかかる黄色の少し長い髪が邪魔そうだなと思って耳にかけてみる。それでも気づかないフェネスさんに少し笑ってしまうけれど、こんな綺麗な顔をまじまじと眺められるのはそうそうないので気づかれないのをいいことに、フェネスさんの顔、すごく綺麗で好きっすよ。…まぁ好きなのは顔だけじゃないっすけど。などと小さく呟きながら、紙の中の小さな文字を追い続ける姿を眺める。
窓から差し込む暖かい日差しに眠気を誘われて、いつの間にかアモンは眠ってしまった。
「んぅ〜、」
本を閉じて固まった姿勢を伸びをしてほぐし、今しがた読み終えた本の表紙を見返す。
「今回も面白かったな」
一言呟いて右の長い髪が耳にかけられていることに気づいた。
あれ?俺自分で耳にかけたっけ?
不思議に思っていると隣から聞こえる小さな寝息に気づいて目線を移してみる。するとそこにはあどけない顔で眠るアモンが夕陽に照らされていた。
「アモン……?」
いつから居たんだろう…!?全く気づかなかった、ごめんアモン…!
眠ってしまうくらい放置してしまったことに申し訳なく思うけれど、夕日に照らされている寝顔がとてもかわいくてふふっと思わず微笑んだ。
元気いっぱいなロノが夕飯の知らせに来てくれるまで、まるい頭を撫でながら可愛らしい寝顔を眺めていた。