「んん〜、やっぱり書類仕事ってつまんないな〜」
今すぐにでも放り出して稲妻のどこかで起きている事件を探しに行きたいが、書類仕事も重要な仕事である。何より、ここ数日追っていた事件の犯人をやっと捕まえることができたので今日中にはこの事件について書類を纏めたいところだ。
あと少し、と再び書類に向かおうとしたところで元気な声が耳に届いた
「鹿野院同心ー!お手紙と荷物が届いていますよ!」
「手紙と荷物…?」
「楓原さんからみたいですよ」
「万葉から?ありがとう、受け取るよ」
「はい!では書類仕事頑張ってくださいね」
「ゔ、あと少しだし頑張るよ…」
差出人を確認すると、やはり万葉からのようだ。
なんだろう…帰ってくるのかな、それとも誕生日を祝ってくれるのかな。
少しわくわくしながら手紙の封を切り、読み始めた
『暑さが厳しくなりはじめた頃だが、平蔵は元気にしているであろうか。
拙者は今、フォンテーヌに滞在しているでござる。船の仕事が一段落着いたので観光をしているのでござるが、やはり川や海、湖などの水がとても綺麗であるな。
そして、平蔵、誕生日おめでとうでござる。今年も直接祝うことができずに申し訳ない。来年こそは必ず直接お祝いすると約束しよう。この手紙とともにプレゼントも送ったのだが無事届いているであろうか?フォンテーヌの写真機で撮った風景写真と店で拙者が作ったハーバリウムとやらを同梱している。喜んでくれると嬉しいのだが…
姉君によると数ヵ月後に稲妻へ向かう予定だそうだ。詳しいことが決まったらまた手紙を出そう。
平蔵とまた難解な謎を紐解くことができることを楽しみにしている。
それではまた、元気で。
楓原万葉』
フォンテーヌ、か。
相棒がフォンテーヌで活躍し、国を救ったことは耳にしている。
少し興味はあるが稲妻を離れるわけにはいかない。
封筒に残っていた紙を出してみると、風景写真のようだった。
青く澄んだ空に青く澄んだ海。とても、綺麗な写真だ。
ふふ、後で写真立てを買ってこよう。
同梱されていた荷物を開けると、砂と貝殻、サンゴと恐らくなにかのオイルが入った小さなガラス瓶が入っていた。
万葉が手作りしたハーバリウムというものみたいだ。やはり、フォンテーヌの砂や貝殻は一つ一つとても綺麗で、疲れた時などに眺めると、とても癒されそうだ。
ふふ、これは家に飾ろうかな。
…よし!早く書類仕事を終わらせてプレゼントを家に飾りに行かなくちゃね!
手紙とプレゼントを少しの間眺め、仕事を早く終わらせようと机に向き直る。
「…手紙もプレゼントも嬉しいけど来年は直接渡してよね、万葉が帰ってきてくれるだけで最高の誕生日プレゼントなんだから。」