ドーン、パラパラパラパラ……
秘境のある小さな島。甘金島は人が多いからと連れてこられたこの場所は、確かに2人きりで花火を見るには丁度いい。
「やはり、宵宮殿が作る花火は圧巻でござるな」
「そうだねぇ」
万葉の右隣に腰を落とした僕は花火など最初の数分しか見ておらず、今すぐにでも1句詠み始めそうな万葉の横顔を眺めていた。
長い白髪の中に紛れた一房の赤。その赤と同じ色の瞳が、穏やかに咲いては散る光の花を眺めている。
「平蔵」
「ん?」
「そんなに拙者の顔を見つめても、何も出ないでござるよ」
「えっ」
耳だけではなく感覚も鋭い万葉には、バレていても何も不思議では無いのだが何せ長く眺めていたので柄にもなく動揺してしまう。
「あっはは、動揺する平蔵など珍しいものを見れたな。それにしても、ここには拙者たち2人しかおらぬのだから見つめるだけではなく、少しくらい触れても良かろう?」
「うぅ〜後で覚えといてよね……」
握られた手に指を絡め、未だ上がり続ける花火に向き直った。