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    taiso_huku

    すけべな鉢雷など

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    taiso_huku

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    大雑把に考えてたのに一回悩みだすと止まらなくなっちゃう雷蔵くんの鉢雷。

    #鉢雷

    人数合わせのために合コンに来て欲しい、と友に誘われた三郎は、俺には雷蔵がいるからときっぱりと断った。
    しかしこの恋人一筋の男を見て、その恋人はあっけらかんとこう言い放つ。

    「困ってるんだろ?行ってあげなよ」

    優しい雷蔵らしいといえばらしいのだが、少しは心配になったりしないのだろうかと三郎は落ち込む。俺のことどうでもいいのか、いや、むしろ信頼してるからこそ?
    それに雷蔵に心配をかけたくないという思いとともに、自分だって興味のない女と飲むより雷蔵と一緒にいたかった。
    でも雷蔵にこう言われてはと、少し拗ねて三郎は合コンへ向かったのだった。


    ーーーのはずだったのに。


    家に帰ってくると、やけに酒臭い。雷蔵、1人で飲んだのか?それか、一升瓶でも倒してこぼしたか。
    不審に思いながら部屋に入ると、雷蔵が暗い部屋の中ですんすんと泣いているではないか。

    「雷蔵!?どうした、何かあったのか!?」

    慌てて電気をつけて雷蔵に駆け寄ると、雷蔵は三郎の顔を見てギュッと強く抱きしめた。
    少し赤みを帯びた頬を一滴の涙が滴り落ちる。雷蔵はしばらくして顔を上げると、潤んだ瞳で三郎を見つめた。
    周りには酒の缶がいくつか転がっている。

    「1人で飲むなんて珍しいな。一体どうしたんだ」
    「…僕のこと、」

    雷蔵は絞り出すような声で言葉を紡いだ。

    「嫌いにならないで…僕より好きな人を作らないでくれ……」

    喋るたび涙も鼻水もズルズル出てくる。え、どういうことだ?合コンの話?

    「雷蔵より好きな人なんて出来るわけないだろ。どうしたんだ急に」
    「だって、合コンって、女の子がいっぱいくるから…」
    「雷蔵が行けって言ったんじゃないか」
    「だって三郎には僕がいるから、他の子に取られたりしないと思って。でも、恋人がいる人でも合コンで意気投合して浮気しちゃうとか、結構あるんだって、ネットに書いてあって、なんか不安になってきて…」

    三郎はブハッと吹き出した。なんだそりゃあ。

    「世の中には浮気する男もいるだろうが、俺は浮気なんか絶対しないよ」
    「うん、よかった」
    「俺が浮気しないおまじない、教えてやろうか」
    「そんなのあるの?」
    「好きって100回言うだけ」

    雷蔵は少し考えて、三郎にもう一度ギュッと抱きついた。そして、小さな声でおまじないを唱え始めた。

    「好き、すき、すき、すき、すき…」
    「俺も好き」
    「すき、」
    「俺も大好き」
    「…この掛け合い、100回するの?」
    「面倒だったら、キス一回で好き50回分にしてあげてもいいけど」
    「えーっと、そうなると、今6回言ったから、あと94回をキスに換算すると…2回には満たなくて…?」
    「いや、真面目か!」

    ツボに入ったのか、三郎は涙が出るほど笑い転げた。雷蔵はギャグのつもりで言ったわけではなかったが、三郎が楽しそうなのを見て不安は無くなったようだった。

    「過剰になるが2回でいいだろ」
    「おまじないの効果、薄れない?」
    「多ければ多いほど効くさ」

    どちらのものともわからない酒の匂いに包まれて、2人はお互いの舌を絡める。息をする暇もなく長く口内を貪られながら、これは一回としてカウントなのだろうか、と雷蔵は悩んだ。
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