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    ごまみそ

    @gmmszui02

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    ごまみそ

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    冥府if妄想冒頭
    ハーパーになる予定ですがならないかもしんない

    ――兄者

     誰かに呼ばれたような気がして、デスハーは目を覚ました。まだ外は薄暗く、冷たい空気が窓の隙間から忍び込んできた。ぶるりと身を震わせながら毛布にくるまる。しかし一度覚醒した意識にはなかなか眠気が訪れない。デスハーは毛布を羽織り窓辺まで歩いた。城の眼下には見慣れた冥府の街並みが広がっていた。

     デスハーが冥府に帰還して数ヶ月が経つ。神の宝物庫で失ったはずの記憶は、生まれ育った国での生活に刺激されたのか数週間が経つ頃にふいに戻ってきた。弟を救うためなら何もかも失うつもりで魔神の子に差し出したというのに、呆気なく思い出せたものだから拍子抜けしてしまった。弟が人間に戻り自分は記憶を取り戻した。何一つ欠けず、昔の生活が戻ってきた。これ以上の幸福は無いはずだ。
     頭の奥がチクリと痛んだ。そうだ、先程誰かに呼ばれた気がする。知らない声で「兄者」と……変な夢だ。私の弟はオウケン一人のはずなのに。


    ***

    「移住記録?」
    「はい、確認させてもらえませんか」
     書類仕事をしていたデスハーの元へオウケンが訪れた。冥府騎士団団長でもある弟は艶やかな銀の鎧を身に纏い、いかにもキリッとした風貌をしている。再び弟のこの姿を見られる日が来るとは……と思うとつい目頭が熱くなった。それに気づいたオウケンが照れるようにデスハーの眼前で手を振る。
    「あ、兄上……やめてくださいそんな、」
    「すまん、どうしても感慨深くなってしまう」
     二人の間に和やかな時が流れ、どちらからともなく笑いが溢れた。冥府の昼下がりはどこまでも穏やかだった。

    「それで、移住記録だったな。何か調べごとか?」
    「街で珍しく移住者を見かけて」
    「あーー、確かひと月前に来たな。金髪の」
    「そう、そうです!」
     オウケンの話によると、街の酒場で見かけない風貌の男と相席になりそのまま盛り上がったのだそうだ。彼は冥府に越してきたばかりで、この国には珍しい金髪と美しい瞳をしていたという。そして沢山の興味深い知識を披露してくれた。オウケンが気持ち良く酔い潰れた後、目を覚ました時に彼は既におらず、会計は二人分済まされていた。
    「なので御礼をしに、家を訪ねようと」
    「越してきたばかりの者に奢らせるなどお前もやるな」
    「からかわないでください……」
     オウケンが恥ずかしそうに俯く。それを慈しむように眺めながら、デスハーは口を開いた。
    「その男は街中心部の大きな元空き家に住んでいるが……せっかくだ。礼のついでに城に招待しろ。その知識とやらを聞いてみたい」
    「分かりました!行ってきます!」
     そう言うや否やオウケンは走り出した。猪突猛進する弟を見送りながら、デスハーはふと考える。何故こんなに立派な家が長らく空き家だったのだろう。そしてこの冥府への移住者など滅多にあることでは無い。何か予感のようなものがデスハーの胸に引っ掛かっていた。
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