目が覚めたら見知らぬベッドでパンツ一枚で眠っていた。
昨日の夜、どこかの女とラブホにでも入ったっけ? と思いながら広いベッドで寝返りをうつと、隣には半裸の男が背中を向けて寝転んでいた。
は? 俺が男と寝た? と一瞬困惑したが、その男の身体に刻まれたタトゥーでそれが竜胆であることが分かった。しかし、おかしい。どう見てもその身体は未成熟な少年の身体では無く、青年、大人、そんな印象を与えるたくましい背中である。しかも髪型も違う。そんなことを考えていたら、長い襟足がさらりと流れた。
目を閉じたまま竜胆らしき男が俺の方を向いて腕を背中に回してくる。
「ん~・・・・・・?」
「・・・・・・竜胆?」
竜胆らしき男が目を開いた。そして俺の姿を見て、「うわぁぁ!?」とベッドから飛び起きた。そりゃそうだ、俺だって本当はそのくらい驚きたい気持ちなのだから。
「に、兄ちゃん・・・・・・?」
俺と同じく、半身のタトゥーを確認したらしい竜胆らしき男が震えた声で問いかけてきた。
「おう」
「え、え、なんで、え」
「俺の方が知りてぇよ、一体どうなってんだ」
そう言って俺はむくりと上半身を起こす。
俺は十八歳の姿のまま、大人の竜胆と邂逅を果たした。
竜胆に現在の状況を説明される。天竺は潰れてしまったこと、その後色々あって、今は梵天という組織に自分が属していること。そこには当然俺もいて、相変わらず恋人関係を続けていること。
「あんまり未来の話とか聞かない方がいいかもしれないけどさ・・・・・・」
と、困った顔になりながら話す竜胆に、「ふーん」と俺は相づちを打った。
梵天が東卍に負けるという事実はいささかショックであったが、俺たちが相変わらず恋愛関係でいることには安心した。
「おまえ何歳になったの?」
と、俺が問いかけると、
「え、と、三十・・・・・・かな」
と、恥ずかしそうに竜胆が返事をした。
三十歳の竜胆。思わず俺はぷっと笑ってしまった。
「なんで笑うんだよぉ!」
と、怒る竜胆が愛らしくて、「悪い悪い」と言いながらも笑いは止まらず、最終的に「あっはっは」と笑ってしまった。その間、竜胆はぐぅ、という顔をしながらも何も言わない。昔(?)なら、こういうことをすると、「兄貴のバカ」と怒られたものだが、それをしなくなった辺り、確かに大人になっているらしい。
「大人になったなぁ、竜胆」
と言って、頭を撫でると、竜胆は、
「やめろって」
と言って俺の腕を振り払った。
その仕草は十八の頃から変わらず見慣れたままだったから、多分三十歳になった俺は未だに竜胆の頭を撫でているのだろう。
しかし、違うのはそこからだ。竜胆は振り払った手を取り、振り払った手に指を絡めてきた。お、と俺は思う。十八の頃なら振り払って終わり、だったのが、今は振り払ったら指を絡めるまでレベルアップしている。可愛い。ここまでの仕草ができるようになるまでの竜胆と俺の間にあったらしい年月の重みを感じて、俺は思わずキュンとした。
そんな風に俺が感慨深く思っていたら、竜胆の顔が近づいてるのに気づいた。
「・・・・・・おいおいおっさんどうしたんだよ」
「おっさんって言うな! ・・・・・・いや・・・・・・うん、その」
「その~?」
俺が煽るように問いかけると、俺の顔をのぞき込むように見ていた竜胆はバツが悪そうに視線を反らし、
「えっちしたい」
と呟いた。
昔なら素直にえっちしたいとは言えなかった竜胆が、はっきりとそう言えるようになったのに俺は竜胆の成長を感じさせてしんみりとした。
俺はにっと笑って、
「いーよ。竜胆がどれだけ成長したかお兄ちゃんに見せてみな」
と、俺は答えた。
「っは、あ、ん、あっあ・・・・・・んあ!」
「兄ちゃん・・・・・・兄ちゃん・・・・・・」
俺の上にまたがった竜胆は俺の肩の辺りに顔を埋めて、匂いを嗅ぐように深く深呼吸しながら俺の性器をいじっていた。その手つきは十八歳の竜胆より格段に巧みになっていて、俺の性器の弱いところを重点的に攻めてくる。
もうこの三十歳の竜胆には俺の弱いところはすべてバレバレなのだ。なにせ俺の知らない十二年間、何度も何度も身体を重ねた後だから。
「も、そこいいって・・・・・・!」
「なんで? 兄ちゃんここ好きじゃん? な? 変わってないよな?」
「は、ひぃぃい」
竜胆の親指が、亀頭の裏側の少しくぼんだところをぐりぐりと押した。俺はその刺激に思わず背中をしならせて喘ぐ。
「も、やめ・・・・・・! だめだって・・・・・・!」
「だめじゃなくない? むしろ気持ちいんだろ? おら」
「あ、あ、くっそ・・・・・・だめ・・・・・・! あ、あぁ!!」
俺の性器が白濁を吐き出した。ぴゅっと飛び出た白濁は俺の腹を汚した。
「はぁっ・・・・・・っおまえ、刺激強すぎ・・・・・・」
「だって気持ちいい方が兄ちゃんも嬉しいだろ?」
「・・・・・・そうだけど」
「うわ、すげ、またたった」
「そりゃおめー若いから・・・・・・」
「はは、こりゃ一日中ベッドから出られない・・・・・・な・・・・・・」
そう言いながら、竜胆の目があるところに止まった。
「なんだこれ」
竜胆の指が俺の首筋を這う。
「ん?」
「キスマーク、誰に付けられてんだよ」
竜胆の顔が怒りにゆがむ。俺はそれを聞いて愉快な気持ちになった。
「おまえだよバカ」
そう言って俺は三十歳の竜胆の頭にチョップを食らわす。
「あ」
俺の言葉でハッとしたのか、竜胆は 恥ずかしげに目をそらして顔を赤くする。
「おまえもバカだなー十八の自分に嫉妬して」
「だって・・・・・・俺が付けたわけじゃないし」
「じゃあおまえも付ければ?」
俺は腕を額に当て、目を細めて囁いた。
「いいの?」
「もちろん、竜胆なら」
「・・・・・・」
竜胆は何も言わずに俺の首筋から胸元にかけてむしゃぶりついた。たまに噛みつかれてチクリと痛むが、じゅ、ちゅ、ぢゅーと激しい音を立てて首回りを舐め尽くされ、キスされ続けられ、俺の背筋にゾクゾクするものが走った。
「ぷはっ」
「は、は、はぁ・・・・・・」
「兄ちゃんは俺のもの」
満足げに口の端をもちあげた竜胆が俺の顎を掴んで顔を上げさせる。一体自分の首元から胸元がどうなっているのかわからないが、めちゃくちゃにされてしまったのはわかる。
俺は竜胆の唾液でベタベタになった胸元を撫でた。そして、そこについた竜胆の唾液を指先でぬぐって、指先をペロリと舐めた。
「・・・・・・兄ちゃん、俺もうだめだ」
「はぁーん?」
「十八の兄ちゃんをもう一度抱けてるだけでももういっぱいいっぱいなのに、そんな刺激的なことすんなよ」
そう言うと、竜胆はさっさと自分の下着を脱ぐと俺の膝の下に腕を通し、ぐい、と自分の方へ俺の腰を寄せた。
「おい、ばか急に挿入んな・・・・・・! あぁっ!!」
「はぁ・・・・・・兄ちゃん・・・・・・兄ちゃん」
竜胆が腰を振る。急に挿入れられたものだから、俺の胎内はまだほぐれてなくて、竜胆の一突き一突きが過激な刺激となって身体の奥を熱くする。
「♡ ♡ あぁー♡」
「兄ちゃん、可愛い、可愛い」
竜胆の性器が身体の奥のコリコリとした部分をかすめた。俺は思わず仰け反り、快感に耐えようとする。
竜胆の両手が俺の両腕を捉えて、ぐい、と腹部に押さえつけた。自分の二の腕が自分の乳首をこすり、俺はその刺激に耐えきれずますます喘ぎ声をあげる。
「あ♡ も、りんど、だめだ、俺イっちゃう♡」
「イけよ。俺にガンガン突かれて気持ちよくなっちゃえよ」
「♡」
おまえ初めてえっちしたときはそんなこと言えなかったのになぁ、なんて感慨深くなりながら俺はもう一度達してしまった。
「兄ちゃん・・・・・・可愛い」
「もうおまえやめとけー? そろそろウザいぞ」
「だって・・・・・・また十八の頃の兄ちゃんが動いてるところをもう一度見れるなんて思わなくて」
二人でシャワーを浴びて、乱れたベッドの上でごろごろしていると、竜胆が何度も俺の髪の毛をかき上げて俺の横顔をじっと見つめる。俺はそれを無視してこの時代の雑誌を読んでいた。
「兄ちゃん・・・・・・」
「おまえさ、そんなに兄ちゃん兄ちゃん言って、今の俺は嫌なのかよ」
「いや、そういうわけじゃないんだけど、今の兄ちゃんはどっちかというと色っぽいから、昔の幼さの残った兄ちゃんを見ると可愛く見える」
「・・・・・・」
褒められて嬉しくないことはないが、自分自身と比べられていることがなんだか癪に障った。
俺は隣に横たわる竜胆の後頭部に手を回し、ぐい、と引き寄せると、キスをした。竜胆もそれを受け入れて俺と舌を絡める。脳内にくちゅ、ちゅ、ちゅ、と音が反響する。
満足した俺は竜胆の頭を離してぺろりと唇を舐める。竜胆ならこのくらいのキスで顔が赤くなっているはず・・・・・・と思いながらその顔を見ると、柔らかな微笑みを浮かべていた。
「・・・・・・くっそ」
「兄ちゃん、舐めてもらっちゃ困るぜ」
そう言って、竜胆は俺の両手を取ると俺の頭上に押さえつけ、また俺にのしかかってきた。俺は期待に身体が震えた。