「…………ふ、ぅ……」
雨音は、壊れたテレビが立てるノイズに似ている。
埃っぽい路地裏の、四つ並んだ自販機の隣にぐったりと座り込んで、俺は深く、ゆっくりと肺の底から息を吐き出した。切れた唇の端を、舌先でそうっとなぞる。口内に広がる鉄の臭い、ヘモグロビンの味。顔はやめて欲しかったな、と、今更なことを心の中で独りごちて、もう一つ、重い息をついた。
春先の雨が、熱をもった頬に気持ちいい。
(またやっちゃった……)
これで何度目? もう数えるのもバカらしいくらい繰り返したことだ。でも、ちゃんと覚えてる。正式にお付き合いしていた相手としては十三人目。何となくいい雰囲気だった人も含めれば二十二人目。まともに人間関係を構築する以前の人も加えたら、記念すべき三十人目の大台突破だ。あはは、パンパカパーン。
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