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    Tsumugi_uta

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    Tsumugi_uta

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    お題を決めてみんなで書くやつ
    ドラロナ

    煮込み料理『〜以上、今日は世界の煮込み料理特集!
    世界の晩ご飯のコーナーでした!』

    パトロールの帰り
    どこからかいい香りが漂ってくる
    家を出る前に何となくつけていたテレビから流れていた、“煮込み料理”の言葉がふと頭を過る

    (そういや最近煮込み料理って食ってねぇな)

    そう考えたらもう脳内はそれ一色

    この辺に煮込み料理系の店あったっけ、
    とか、
    煮込み料理ってひと言でいっても沢山あるし、探さなきゃ、
    とか、
    とりあえず今日は店見ながら帰ろうかな
    とか、色々な考えが脳内に広がる

    明日にでもどこか食いに行くかと、空腹を主張する腹を抑え、宥める
    ふらふらきょろきょろと普段より周りを見渡し、店を探しつつ、事務所のあるビルへと戻る

    「どうしたの、ロナルドくん
    変な顔して」

    ドアを開け、事務所へ入れば、出迎えたドラ公が一人百面相?なんて笑うので、手を叩いた音で砂にする
    手にしたスマホで改めて店の見当をつける

    ナスナスと戻ったドラ公が覗き込んで来るのを躱しながら、検索をかけるが、なんせ煮込み料理なんて知識がないもんで、少ししか検索が出てこない

    いやいくら新幹線のとまる虚無だと言ってもシンヨコハマ、腐っても都会だし、なんかしらあるだろ

    なんて更に検索をかけていると、遂に画面を見ることに成功したドラルクが声をかけてきた

    「ねぇ、ロナルドくん、もしかして外食する予定でもあったりする?」

    ギルド以外で、あと、ニンニク料理以外で…と、なんとも言えない顔でごにょごにょと言ってくる
    普段は聞きたいことは煽りつつもハッキリ聞いてくるのに変なの、と疑問に思いつつ、

    「あー、なんか、テレビで世界の煮込み料理って見てさ、久しぶりに食いてぇなぁって思って」

    煮込み料理って作るの大変だろ

    と返せばちょっと嬉しそうな顔、いや、あれはいわゆるドヤ顔というやつだろうか

    とにかく、やたらムカつく顔をして、

    「とりあえず手を洗っておいで腹ぺこルドくん」

    などと宣う

    「は?」
    「いいからいいから」
    「ヌヌヌヌヌン、ヌヌヌ!」
    「今行くよジョーン!」

    急いで手を洗い、キッチンへ向かうと、ふわりと鼻をくすぐる匂い

    「もしかして、」
    「ヌン!」
    「そう、そのもしかしてなんだよね」

    テーブルの上には皿によそわれたトマト料理?が並んでいる
    料理の種類なんて分からないが、それがいわゆる煮込み料理なのは見ただけでわかる

    「そろそろ若造が煮込み料理が食べたい、って言うかと思ってね
    今日の夜食は、サルマーレ…ルーマニア風ロールキャベツだよ」

    さぁさぁ座って、とドラルクに背を押され、席に着く

    「ほら、冷めないうちに召し上がれ!」
    「お、おう…いただきます」
    「ヌヌヌヌヌン!」

    ロールキャベツの中の肉までしっかり味がしみていて、相変わらず美味しい
    ドラルクの料理が不味かったことなどないし、そこは信頼しているのだが、毎回何となく悔しい

    「なぁドラ公」
    「なぁに、口の端にトマト付いてルドくん」
    「いちいち煽んな死なすぞ
    で、なんで俺が煮込み料理食いてぇって分かったんだ?」
    「えー?うーん…愛…かなぁ?」
    「は?」
    「キレるなキレるな
    今日夕方、煮込み料理のテレビ見てただろう?
    その時たまたま起きててさあ
    最近作ってないし、あー、これは食べたいって言うかなぁって思って」

    で、作ってお出迎えしたって訳

    ニコニコしながら、これが愛だと言わずになんだって言うんだい?と言うドラルクに、何も言えずにスプーンを口に運ぶ

    美味い
    俺と、ジョンのためだけに作られた料理

    これが、愛なのだろうか
    ならば

    「…これが、愛なら」
    「うん」
    「俺と、ジョンのためだけの、愛なんだな」
    「……うん」

    そうだよ、なんて笑うから

    「だからね、ロナルドくん
    食べたいものがある時は、まず私に言って欲しいな」

    君たちのために作る料理に、面倒くさいことなんて、ないんだよ

    なんて、慈愛の瞳を向ける吸血鬼に胸が苦しくなり、自然と首が縦に振られる

    この吸血鬼が、俺たちのための料理を作ることを愛だというのなら
    その料理を食いに、ちゃんとここへ帰ってくること
    それも、また愛なのだろう

    この食卓は愛の象徴なのだ

    (あ、もちろんニンニク料理は別だぞ若造)
    (分かっとるわクソ砂おじさん)
    (ヌヒヒ)

    完(ヌン)
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