臨職『魔法少女』ただし期限未定-2「まぁてやおるぁぁぁ!!!!」
魔法少女になって1ヶ月
“魔法少女”はやはり“魔法”を使うわけで
今1番重宝しているのが、質量及び重量認識についての魔法だ
別に実際の重量が重くなったり軽くなったりする訳では無い
が、重量の概念を弄ることでその一時の物質質量を任意の重さに認識させることができるスグレモノだ
(初めは本当に何を言ってるのかわからなかったが、そういうものだと無理やりにも納得させた)
普通戦闘時にいわゆる重力操作!
みたいな使い方をするみたいだが、ちょっと工夫すれば別の使い方もできるのがありがたい
つまり、鍛えているのもあり、80キロはある今の俺でも人様の家の屋根から屋根へ、飛んだり跳ねたりがふんわりすんなりできるようになるのだ
いや普段でも飛んだり跳ねたり出来なくはないんだが、普通に体重と重力が屋根瓦に喧嘩を売ってしまうので、そういった面で上下移動はまだしも、横移動は避けた方がいいだろうと思っていたから…
これのおかげで、街を荒らす“敵”を追いかけ、屋根から屋根へ飛び移ることができる…ということは、直線最短ルートが使えるということで!
退治時間もグッと縮まり、被害も格段に減るようになった
余談だが、今までの魔法少女はこの使い方をしていなかったのかと調べたところ、基本的に魔法少女は空を飛び、屋根の上は走らないらしい
それもそうだ
小説家がそんな発想もないのかと少し落ち込んだ
俺はモニターの隅に溜まった塵…衣替えの服に付いた去年の毛玉…
閑話休題(それはさておき)
それにしても、“魔法少女”という概念はすごい
普通20代男性がドスの効いた声張り上げて、屋根から屋根へ走り回ってたら通報待ったナシだろうに
それが「あら、ロナルドくんお仕事?頑張ってね〜」だの、「おいロナルド!落ちんなよ!」だの、どう考えても好意的な声掛けしか飛んで来ない(友人からは稀にからかいの言葉が飛んでくるが、それも悪い内容ではない)
それほどまでに、この職業の認知度は上がっているのだろう
街を守り、人を守る、尊敬する兄と同じような仕事
今すぐにでも兄妹に報告したい気持ちだ
そう……
このキラキラヒラヒラの衣装でなければ!
追いついた敵を殴って消した後(悪さをする“敵”の八割が倒した後勝手に消える、どういう生態なんだ…)、今の自分の服を見下ろす
自分のファッションセンスが世界一かと言われると、否としか返せないが(悪いとは思わないが)、どう考えてもこの衣装が成人男性向けでないことはわかる
もう少し成人男性向けのものが無いか問い合わせをしてみたが、そもそも戦闘に耐えうる布地を使っているため量産が出来ないこと、20代筋肉質男性の前例があまりに少なく既成の衣装がないとの答えが返ってきただけだった
いや嘘だろ…
布はあるだろ…作ってくれよお役所仕事…
そうは言っても敵は待ってくれないので、今日もとりあえずこの衣装に袖を通す
今後魔法少女になる20代筋肉質男性のためにも、俺のためにも、前例衣装を作ろうと心に決めながら