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    Tsumugi_uta

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    Tsumugi_uta

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    Δバレンタインのおはなし
    ドラロナのつもり
    ※アカジャやラジオで情報をお出しされる前に書いています
    ※ロナの瞳を蒼で、歳を200歳↑で書いています
    よろしくお願いします

    可愛い独占欲「ドラ公!これやるよ!」

    窓から飛び込んできたロナルドが、満面の笑みで勢いよく手を突き出す

    何度言っても窓から入ってくるその吸血鬼に呆れ、また、勢いに驚きつつその手に目をやる

    「一体なんだというのだね」

    握りしめた手には可愛らしくラッピングされた何か

    デパートの小袋なんて小洒落たものに入れられて、ロナルドの手の下でブラブラと揺れている

    「いいから!ほら、今日はあれだろ、バレンタインとかいうやつ!」

    人間の文化に疎いであろうロナルドから発せられたその言葉に、少しばかり目を丸くする
    バレンタインだなんて、本質からズレまくったお菓子業界の戦略なんぞ、いったいどこから聞いたのか
    いや、この時期はどこへ行っても広告だらけではあるだろうが…

    「おい、ドラ公?おーい?」

    不思議そうな顔でこちらを覗き込む彼に返事を返しつつ、それを受け取る
    それだけでロナルドは表情を明るくし、またしても窓から出ていこうとした

    「じゃ!」
    「まてまてまてまて」

    じゃ!じゃない!
    受け取って貰えただけで満足するんじゃないよ205歳児!

    引き止められたせいか、ぴよぴよと汗を飛ばすロナルドを椅子に座らせる
    その場で動かず暫し待つよう伝え、台所へ向かう

    「ヌー?ヌヌヌヌヌン」
    「あっ!ジョーン!」

    顔を出した愛しのアルマジロと、205歳児が戯れる声を背に、ミルクパンに牛乳を注ぐ
    ゆっくりゆったりと混ぜながら、蜂蜜とミルクを温める

    1人と1匹分のホットミルクをマグカップに注ぎ出してやると、キラキラした瞳で見てくるものだから、クスリと笑みが零れる

    「で?」
    「ん?」
    「これだよこれ、ロナルドくんは何をくれたのかな?」
    「あへへひろよ」

    向かいの席に座り、ロナルドに尋ねれば、蒼天の瞳が向けられる
    マグカップをあぐあぐと咥えながら見上げる、まるでこちらを伺うような仕草は、純粋無垢な子供の様で
    本当に200歳超えの吸血鬼なのだろうかと時折頭を抱えてしまう

    「そうさせてもらうよ」

    袋から可愛らしいピンクのラッピングを取り出し、かかっているリボンを解く

    シュルリ…パサリ…

    軽い音を立てて現れたのは、普段使用しているものとは違う、少し赤みのかかったような茶色い小瓶

    「これは…マニキュア?」

    綺麗にカットされた小瓶は光を受けてキラキラと輝いている

    「ん、なんかデパートのお姉さんが、恋人への贈り物にどうだって」
    「恋人への?チョコではなく?」
    「だって、チョコはドラ公が作った方がうまいじゃん?なー、ジョン」
    「ヌー!」
    「で、他にも色々考えたんだけどなー、どうにもしっくり来なくて
    お前、化粧品とかつかわないだろ?」
    「使わないねぇ」
    「だろ?
    で、これなんだけどさ」

    貸して、とまだ封の開いていない小瓶を手に取り、開けていいか?と聞くので頷く
    カチリと音を立てて開いた小瓶から、ふわりと甘い匂いが立ち上る

    「ん、この香りは…チョコレートか」
    「そ、バレンタインだからって」
    「はー、今はお菓子業界だけでなくそんな所まで参戦しているのかね」
    「まぁ、いい稼ぎ時だもんな
    ん、ジョン、ここ来て?
    で、ドラ公は、ジョンの背中の上に左手出して」

    まるで打ち合わせて来たみたいに、流れるように左手をジョンの上に固定される

    みたい、ではなく恐らく打ち合わせ済なのだろう
    ジョンもヌヒヒ、と笑っている

    とろ、とチョコレート色の雫を滴らせながら、小瓶から取り出されたハケが指を撫でる
    ジョンの甲羅に付けないよう、ゆっくりと、丁寧に、時間をかけて

    「ドラ公普段手袋してるだろ?で、俺は思ったわけだよ」

    目を伏せていたロナルドが、不意に視線だけでこちらを射抜いた

    「俺が買って渡して
    ジョンだけが塗ってるとこを見るのなら
    ドラ公の指にこれがあるのを知ってるのは、俺とジョンだけになるんじゃないかってな」

    ふぅ、とチョコレート色に染められた爪に息を吹きかけ、満足そうに笑う
    赤く染った頬で、艶やかに、婀娜っぽく

    たった1本
    左手の薬指にだけ塗られた
    赤の中のチョコレート
    この爪が乾くまでは、どこへも行けない
    そんな、ほんの少しの独占欲を見せて、彼は笑っていた

    その笑みは純粋無垢な子供か
    それとも、絡め取られた執着か

    知る由もないないが、知る必要もない

    そのどちらもが、彼自身であり、私の愛するロナルドくんなのだから
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