伝言 道は乾いていた。
道と同じ色をした岩山も、その裾に小さく並んでいる家々も、同じように乾いている。
ざり、ざりと地面を踏む音までも、潤いの一滴も無さそうな極度乾燥だ。
こめかみから顎に流れ落ちた汗は、地面に滴るや、即座に、手品のように消え失せた。吸い込まれたのか蒸発したのかもよくわからない。
空を仰いで水筒の底のぬるい水を含む。
空は、底が抜けたような群青をしていた。
***
小さな砂煙を伴って近付いてくる荷車に知った顔を見とめて、ハンジは口元を緩めた。
「先生、迎えにきた。」
砂埃よけの頭巾の奥に人懐こい瞳を輝かせた青年が、荷車を止めながら声をかける。会うのは半年ぶりで、ロバを御す姿は少し大人びたように見えた。
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