死ぬ時に思い出すなら、あの日のことかもしれないと思っている光景がある。
子供の頃、ぼんやりと晴れた日の午後、生まれてからずっと変わらない小さな田舎の探検なんてとうにやり尽くして暇を持て余した俺たちは、農園の柵の中で働く無口な少女に、からかい半分声をかけた。
学校に来ることもなく、表情に乏しく、自分達よりは、むしろ飼われている羊や牛と同類に見えた少女。いつも小汚い格好をして、鼻水を垂らしていることも多かった。
何て声をかけたのかは覚えていないが、全く相手にされず、つまらないなと思っているうち、一人が石を投げ始めた。少女は驚いて持っていた桶を地面に落とし、腕で頭を庇った。
俺は面白くなかった。
石を投げ始めたそいつなんかと違って、俺はその少女がちょっとかわいいことに気が付いていた。話をして、柵から出て一緒に遊ぼうと誘って、そうして笑いかけてくれでもしたら、きっとうんとかわいいだろうってことにも。
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