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    tooi94

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    【ロナドラ】新横浜人狼ゲーム3日目

    新横浜人狼ゲーム 3日目  <3日目朝>

    狩人が防衛に成功しました。犠牲者はいません。ヤッタネ。

    おとうさん、とコユキが小さく震える声で呼んだ。


      <3日目昼>


    「ゲームマスターへの質問は可能かな?」
    ルールなどゲームの進行についてであれば可能です。
    「では、プレイヤー同士の情報交換として」

    ええ、ええ! 大いにけっこう! 交流はのちの判断と断絶に必要なものです。

    「それでは。
     最初に殺された「彼」の名前あるいは顔を、誰か覚えているかね?」
    は、と誰かが息を呑む音が響く。答えがないことを確認して、ドラルクは続けた。
    「ルールと経緯の確認だ。このゲームの始まりは1日目の夜からだった。人狼ゲームの初日というものは、ゲームマスターの意向によりただの導入として活用される場合が多いにある。「人狼が現れたようだ」とナレーションだけで済ませたりね。
    初日、GMは人狼に犠牲者を選べとは言わなかった。占い師に行動の指示もしなかった。
    つまりあれはデモンストレーションだ。
    夜に男の悲鳴は聞こえたが、わざわざ自己紹介を挟んだと言うのに誰も彼を覚えていない。しかし彼の悲鳴は、このゲームでの死が恐ろしいものだと印象付けた。
    恐怖はそれぞれだろうが、食い殺される、吊るされる、罰を与えられる、志向を定めてやれば思い込みで視野は歪む」
    「あーそうか、透の領分かよ…!」
    野球拳が忌まわしげに呻く。
    「このゲームには開催協賛者がいるんだろう。
    ちなみに、さっきマリアさんを害したのは、私にはただの黒い固まりにしか見えなかった」
    「まじかよ、俺は…マリア自身に見えた」
    「俺も」
    ショットとサテツが言う。ロナルドもそうだった。
    「退治人諸君は彼女を傷つける、あるいは罰するなどという真似ができるものはいないと考えているからね」
    「私には」と、ヒナイチが言った。彼女は少しためらうようにして、続ける。「ロナルド、に、見えた」
    「え? 俺?」
    僕も、という声が巻き込まれた一般人たちから複数上がった。
    「君は名前と顔が売れてるからな」
    人を捕食する化物を斃すという点で、イメージ付けられたのだろう」とドラルクは言う。
    「は? 別におまえらバケモノなんて大層なもんなんかじゃないじゃん」
    「そう考える人がいるってこと。イメージの話だよ一般人感覚無しルドくん」
    「主語デカくしてんじゃねえぞ殺した」
    「事後」
    ロナルドの拳がぶつかる前に砂はすとんと床に落ちた。そのままさらさらと移動して、するりと、マリアに手を伸ばす。
    「マリアさん、聞こえた?」
    ああ、と血の気の失せた顔で、しかし悔しげにマリアは頷いた。額に張り付いた彼女の前髪を、ドラルクの指が丁寧に払う。
    「ちくしょう、まんまと騙された…騙されてんのか、わかったのに」
    「既に術中だからね。認識を強めれば、あるいは」
    「あー…でもまあ、それがわかったんなら、おまえら」
    やれそうか、と言う声は音にならない。
    「うん、大丈夫だよ。みんないるし、」
    その後の囁きは小さくて聞こえなかったが、マリアには届いたのか、彼女はうっすらと笑った。
    彼女が目を閉じると同時に彼女は消えた。
    え、と動揺したように、止血を続けていたサテツが息を呑む。握りしめる止血布にも血液の痕跡はない。

    リタイアさせちゃうなんてひどい吸血鬼だなあ。
    彼女は頑張って生きていたのに。

    「私もペナルティかな?」
     確認します。ーーいいえ、なるほど。彼女は彼女の認識で死を罰と改めた。あなたの悪辣な自殺幇助こそありましたが。面白いのでありとしましょう。

    「は?」
    マリアの消えた床を半ば呆然と見ていたロナルドが顔を上げる。
    悪辣。幇助。面白い。そういう言葉に反応したのだろう彼は、未だ姿の見えないGMにひどく治安の悪い顔を向けた。
    暴力で解決したい。
    握りしめてぎりぎりと手袋が悲鳴をあげる手の甲を、ドラルクの細い指が軽くたたいた。
    拳を解く。

    「占いの結果をいうぞ、まずそこの」
    ため息をつくように野球拳が言った。ヒナイチの傍にへたり込む中年の女性を指す。
    「白だ。人狼じゃない。とはいえ、もうこれ人狼が残ろうが村人が残ろうが、最終的にGM殴れれば良いんじゃねえか」
    「いや待ってくれ、一応助けが来ることを前提に、民間人の保護を優先してはどうか」
    「それなら」
    公務員らしい意見を述べるヒナイチに後押しされるように、白だと言われたばかりの女が顔を上げた。
    「それなら! まず吸血鬼から吊りましょうよ! だってあの人たち、死んでも生き返るじゃない! 私は死にたくない!」
    耳を裂くような声で女が叫ぶ。え、と青い顔でヒナイチが後ずさった。
    「そうだ…吸血鬼なんだから、吊ったってたいしたことない、吸血鬼なら」
    震えるように中年の男が追従する。
    そんな、とヒナイチが、先ほどまで寄り添っていた彼らから半歩後ずさった。
    「デモンストレーションだっつっただろ、ここでのことはどうせ幻覚だろうが」
    「信じられない!」今度は年若い女が叫んだ。「やったことあるわ、人狼ゲーム、人狼とか裏切り者が占い師だって名乗るじゃない! 信用できない、だって、最初に占わなかったじゃない」
    「だからデモだっつってんだろ!」
    「信用できない、吸血鬼だもの!」
    「あの、落ち着いてください!」
    慌ててロナルドが野球拳と一般人たちの間に入る。
    ち、と乱暴に舌打ちをして、野球拳はドラルクを見た。
    「同胞、情報交換だ。次は俺かお前だぞ」
    「遺憾ながらそのようだね。
    最初の犠牲者が認識の方向を、GMは催眠かな、あとひとつ」
    「カラオケ屋」
    「なるほど」

    あはは、とスーツ姿の若い男が唐突に笑い出した。その笑い声に驚いて、声高に吸血鬼を糾弾していた人たちが静かになる。
    あはははは。いっそ朗らかな笑い声だ。
    大丈夫ですよ、落ち着いて、引き攣るように笑う男の背をサテツが撫でる。

    ようやく、一見では落ち着いたような場に、ロナルドは浅く息をついた。
    「若造」
    呼ばれて振り向くと、ロナルドの上着を手に持ったドラルクが立っていた。
    上着は見慣れたいつもの赤で、先ほどまで吸っていた血の色はない。
    「幻覚なのか」
    それを受け取って、いつも通り綺麗に乾いた赤であることを確かめる。
    「そうだね。ここでは難しいことだけれど、大事なのは呑まれないこと。ヒナイチ君」
    ドラルクがヒナイチを呼んだので、ロナルドも彼女の方へ目を向けた。
    先ほどまで寄り添っていた民間人たちから半歩、後ずさったその場所で、ヒナイチはひどく心許なく、途方に暮れた顔を押して立っていた。
    「ドラルク、ロナルド」
    泣くような声に、ロナルドは大丈夫だ、と答える。
    「大丈夫だ、ヒナイチも。面倒だけどクソ雑魚おじさんも」
    「面倒は余計だろうが」
    面倒でも投票で決まるんだよ、という声は、隣にいたロナルドにしか聞こえない。

    野球拳大好き 4票
    ドラルク 2票
    ロナルド 1票

    あとは無効票です。

    「夕方」野球拳大好きさんが吊るされました。

    「夜」
    人狼たちは今夜の標的を選んでください。
    狩人は守る相手を指定してください。


    うわこれ幻覚でもけっこういった痛いうっわやめろこのちゃんと食べろ残すな痛えこのやろ散らすな粗末にすんじゃねえ痛きれいにくえ残してんじゃねえ!!!!
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    ――昨夜未明、都内マンションの一室で吸血鬼退治人――さんが死亡しているのが発見されました。

    アナウンサーの声にロナルドは思わず振り返ってテレビ画面を観た。被害者の顔写真が大きく映っている。知り合いではない。すぐに映像は現場と思われるマンションの外観に替わった。どこにでもありそうなレンガ色の建物だ。

    ――同僚が自宅を訪問したところ部屋の鍵が開いており、被害者は全ての血を抜かれた状態で、ベッドの上で死亡が確認されました。

    場面が切り替わり、ブルーシートで玄関を囲った部屋の中へ、捜査員たちが続々と入って行く。

    ――死亡推定時刻は一昨日二十時から二十二時の間。被害者の首筋にはナイフの刺し傷があり、その上から吸血鬼の牙跡が残されていたとのことです。警察では吸血鬼による殺人事件と断定し、犯人の行方を追っています。
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