大切にします、だから全部ください 海外調整局の職員の結婚式があった。特別捜査官という肩書きがあるとはいえ、潜在犯の俺には関係のない話だが、結婚した職員は花城の古くからの知り合いで、なおかつボディガードが必要なレベルの男だった。だから花城は俺たちをその結婚式に出席させ、身辺警護をさせたのだった。
結婚式は退屈なものだった。花嫁は美しく眼福で、振る舞われる食事も美味かったが、ブライズメイドたちの陰口には辟易したし、俺を潜在犯と知らずに声をかけてくる無知な女たちは気の毒だった。でもまぁ、式というものはそういうものだ。天井から下げられたシャンデリアに絡みつく白い花々はひらひらと花びらを落とし、それを拾った子供たちはきゃあきゃあと駆け回って遊んでいる。ウエディングプランナーだけは警備にあたる俺たちのことを知っていて、恐ろしそうにこちらを見ていた。きっと潜在犯が怖いんだろう。ここ出島じゃあ、珍しくもないはずだが。
1980