目を閉じておいでよ(全て同じ) 何にも知らない恋人に、何もかもを教えた気がする。手の繋ぎ方、口付けの仕方、抱擁の方法、それからどうやってセックスをするのか。なのに想いを伝える方法は教えなかったのだから屈折している。俺は彼が俺以外では失敗すればいいと思っていて、わざと恋人の作り方を教えなかった。俺以外では失敗するように、そんなふうに何もかもを教えた。彼がそれを知っていたかどうかは分からない。純粋な性格だし、案外気づいていないかもしれない。でも気づいていたら、俺はどう思われていただろう。独占欲の強い恋人だろうか。別にそれでもいいが、嫌われたくはない。
「痴情のもつれの上での殺人ねぇ……」
縢が珍しそうにぼろぼろになった男の残骸を見つめた。監視官であるギノは、色相悪化を避けるためパトカーで待機している。俺たち猟犬が推理をし、それを献上するのがいつものパターンだった。
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