ねこを愛せよ(もっと愛して) 駆け寄ってきた金色のかたまりは、俺の腰あたりに飛び付いた。咄嗟に両腕を広げて受け止める。柔らかい体がぐにゃりと曲がって、俺の腕の中に収まった。
「ただいま、善逸」
彼の名は善逸。俺の猫だ。じゃあなぜ言葉を交わすことができるのかと言うと──彼は、猫又、というやつなのだ。
「たんじろ、服冷たい……」
「あ、ごめんな。コート冷たいよな、脱ぐよ」
外の冷気をたっぷり含んだコートは、随分冷えてしまっていた。善逸は毛が豊かだが、つまりその分寒がりなようだ。俺の温かい手にいつも嬉しそうに擦り寄ってくる。
俺は急いでコートを脱いで、セーター姿で再び善逸を迎え入れた。手を洗って、冷蔵品を冷蔵庫に入れて、ソファに座ってさあと腕を広げると、善逸が弾丸のように飛び込んでくる。柔らかく背中を撫でると、つやつやの毛並みが気持ち良い。黄色にオレンジ色が混ざったような善逸の毛は、本当に金色に輝いているようだった。
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