ナワーブサベダーという男 グチャグチャになった包帯、切れた洋服、汚れた籠手、少ない給金、思い出の写真。
ナワーブの全て。
「ナワーブ」
扉が開いている。誰だろう。体が震える。ナワーブは、ナワーブは、ナワーブは?
「落ち着きなさい。手を離して、それ以上引っ掻けば傷が広がる」
大きな手がナワーブの腕を掴んだ。大人の男?
「離せ!離せよ!誰だお前は!」
声を荒げて、離そうとする。離せない。誰だ。ナワーブの力よりも強い。汗が止まらない。嫌だ。これは誰だ。どこだ。
「嫌だ!嫌だ!離せ!違う俺じゃない!俺は俺は違うごめんなさいごめんなさい、逆らわない、違う俺は」
「大丈夫、大丈夫だからゆっくり深呼吸するんだ」
抱きしめられる。服から嗅いだことのない匂いがした。
「はぁ、はぁ、はぁ、」
「よく聞いてナワーブ。君はもうこんなことをしなくていい」
「ダメ、だめだ。それだけじゃだめなんだ!送らないと、俺は、違う、価値がない」
「もうナワーブサベダーは死んだ」
「違う!違う!ナワーブは生きてる!」
「もう死んだんだ。死亡判断書もある」
「嘘だあり得ない、ナワーブは……違う、手紙が、俺がお金を送らないと、だから、かあさんのために…」
「ナワーブ」
「故郷の、家族が…妹だって、いる……俺は」
「ナワーブ、もういいんだ」
「俺は………」
「なぁ、ナワーブ。ナワーブサベダー」
力強く抱きしめられる。暖かくて、熱い。
「誰かの為に生きたいのなら、私のために生きろ」
わたし?誰だろう。
「ナワーブサベダーは死んだ。今度は私のために生きてくれ」
抱きしめられていた体を起こされる。あぁ、この顔は。
「ナワーブ」
「あーさー、らっせる……」
「私が君の生きる意味になる」
俺は、ナワーブサベダーだ。故郷に家族がいて、グルカ兵として戦場に行き、戦争が終わった後に自由傭兵として生き、今はアーサーラッセルの部下だ。何も間違ってはいない。
「ナワーブ、次の依頼なんだが」
ナワーブサベダーは生きている。
詳細
ナワーブサベダー (27)
ナワーブサベダーという人物をなぞっている男性。本名じゃないし本当のナワーブでもない。背景推理の相棒にあたいする人。ナワーブを殺してしまった反動で認知障害を起こす。自分がナワーブであると思っており、ナワーブならこうするという動きを常々とっている。普通に激ヤバメンタル。
アーサーラッセル (43)
元軍医。グルカ兵隊と共に行動をしていた時期があり、その時ナワーブサベダーと相棒と知り合った。
ある時軍隊をやめ探偵事務所のような組織を作り上げる。ナワーブサベダーがいると情報を聞き、会いに行くと相棒がそう名乗っておりとんでもないぞと察して、戦場から離すために事務所に引き入れた。
相棒を右腕に置いて、できる限りメンタル面の治療を施している。
相棒が『ナワーブサベダーという人物は死んではならない』という切迫した観念に囚われて、認知障害を起こして自分をナワーブサベダーだと思ってる妄想話。
第一回の演繹の星の一人称ナワーブがね……なんかね……嘘嘘の嘘なのでマジで早く傭兵の日記きて〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜