「——また来たのか!」
坐っていた門柱の上から飛び降りて、これ以上ないほどの渋面を晒しながら子供が言う。
「やあこんにちは、お爺さん。元気そうで何よりだね」
そう爽やかに笑って返せば、ますます嫌そうに牙を剥き出す。
「お前が来ると碌なことがない! それに明王様はいま忙しいんだ。だからとっとと帰れ!」
「いや、今日は明王ではなく、君に会いにきたんだ」
しれっと言うと、虚を衝かれたような表情になって瞬いた。
「俺に?」
「そう」
「気持ち悪いな、一体なんの用だ」
「君、私のところに来ない?」
「断る」
「即決だね。ちょっとは考えたりしてくれたりはしないのかな」
「俺の欲しいものは、お前には出せない。絶対に。だから行かないし、そもそも俺が明王様を裏切ることも絶対にない」
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