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    ssmy_i_chigo

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    ただひたすらみゃーちゃんに柔らかい佐々木が大好き。中途半端に終わるし続かない。供養名無

    ##さみゃ

    暖かいガタゴトと揺れる車内。加えて窓から差し込む暖かな光を浴びるのは眠りを誘うのにうってつけだ、と思いながら座り慣れたいつもの席でうとうとと意識が薄れていく。
    ふと聞きなれたアナウンスが耳に飛び込んできて、慌てて立ち上がりかけた。電光掲示板に目をやれば、最後に記憶していた3つ後の駅、つまり今回降車する駅が表示されている。危ない。ここで乗り過ごしてしまったら待ち合わせの時間に遅れてしまう…!と、内心平汗をかきつつ、降車する為に今度はゆっくり余裕を持って焦りを隠すように立ち上がり、扉の前に立った。そういえば、とカバンからスマホを取り出しトークアプリを開く。

    (『先輩。今駅に着きました。もう10分程で先輩の家に到着します。』…と。これでいいかな。)

    送信マークのボタンを押したタイミングで丁度よく扉が開き、トートバッグにスマホをしまって慌てて電車を降りた。少しの焦りは残りつつもホームの中を迷いなくすいすいと歩き、いつもの改札口を抜ける。駅の外に出て、ふと見上げれば見慣れた駅名が見えた。いつの間にか自分の中で"何時もの駅"になっていた事実にはにかみそうになりながらも、こんな事をしている場合ではないのだった、と佐々木の家がある方向へと足を向けて歩き出した。するとブーッというバイブ音が聞こえ、カバンからスマホを取り出すと、トークアプリに「1」という数字が表示されている。

    『返事遅れてごめん。今みゃーちゃん駅?迎えに行くよ。』
    (ふふ、『ありがとうございます。でも、大丈夫です。今回は1人で先輩の家に行ってみたいので…!』よし、送信。……。そ、送信っ 。)

    少し迷ってから、待ってて貰えますか?と打ち、再度送信ボタンを押した。すると、佐々木もトーク画面を見ていたのか、送った直後に既読マークが付いた。心の準備が出来てないまま相手の返信を待つ。中々に自分は恥ずかしい事を言ってしまったんじゃないのか?という気持ちと共に、ばくんばくんとうるさい心臓を必死に抑える。動揺しすぎて送られてきた返事に数秒気づけず、慌てて確認した。

    『分かった。気をつけてね。』

    シンプルだけれど安心出来る何時もの文面に、肩の力が抜け、火照った頬の熱も緩やかに引いていく感覚がした。先輩から貰う言葉は何時だって自分を勇気づけてくれる。誰かがそばにいるだけで力が湧いてくるってこういう事なんだなぁ、いや、まぁ先輩の家に行くだけなんだけど、等としみじみ思い浸る。ハッと当初の目的を思い出し、スマホをしまおうと少し開いたトートバッグからちらりと見えた「藤沢南第二高等学校」の文字。肩にかかるその3年間の重みに少し切なさを覚えていると、トークアプリにもう1つメッセージが送られていることに気がついた。

    『待ってるよ。』

    たった5文字の言葉が、こんなにもありふれた言葉が、こんなにも自分の中で響いて染み込んで、大切な言葉になるのか。その事実が存外嬉しくて、口元がキュッと引き締まった。佐々木に勧められて最近購入したスタンプを使って返信する。今度こそ佐々木の家へ向かう為、トートバッグにスマホを投げ入れ走り出した。切なさとか、どうしようもない嬉しさだとか、そういう気持ちを全部引っさげて走った。待っていてくれる人の元へ、1秒でも早くたどり着きたかった。

    俺は昨日、高校を卒業した。
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