指先とチョコレート 今日はお土産があるんだよ。嬉々として一二三が差し出したのは、輝くシルバーでロゴが刻まれた平たい長方形の箱だった。そういった類の知識の乏しい自分でも、一目で高級と分かる仕様にどうしたんだと問う。
「オーナーからもらったんだ。シンジュクのデパ地下に期間限定出展しているショコラトリーのアソートだって」
「へぇ。珍しい差入れだな」
「付き合いの長いご友人が経営に関わっていて、キャストの子たちへどうぞと頂いたそうだよ」
「なるほど。暗に宣伝効果も期待されてるのか」
カブキ町の有名クラブに所属するホストの世間への影響力(特に対女性)は絶大である。商売をする立場からすれば、是非ともあやかりたいところだろう。洒落たお菓子は流行に敏感で甘い物を好む女性たちの興味を集めるはずだ。納得の返事に一二三が頷く。
2020