南の国における出産時の母体保護についての調査南の国における出産時の母体保護についての調査
Mitile Flores
概要
南の国にある複数の村において、50年間で魔法使いの出生率が0.5割下がり、人間の出生率が1割ほど増加していることが調査で判明した。特に、国で最も栄えている雲の街にほど近いA村での魔法使いの出生率の低下は著しく、逆に最も南端に近いH村においては平均よりも魔法使いの出生率が高かった。
調査結果を整理すると、人口が多く、医療の環境が整った都市部に近い村では人間の出生率に対して魔法使いの出生率が低いことがわかった。母子ともに健康な分娩が出来る環境においては、魔法使いの出生率が低い可能性がある。
また、今回の調査では医療環境の不足が見られる地域において、優先されるのは母体ではなく胎児の命である傾向が強いことが判明した。母親が魔法使いでない限り、働き手として重宝される魔法使いとして出生する可能性のある子の命の方が優先されるようだ。南の国の都市部においては、出産により死亡する妊婦の数は他国と比べても少ないものの、地方ではその割合が急増し、出産時の母体保護についての意識が希薄である現状が浮き彫りとなった。
出生率に関するデータを取る中で、国の南部よりも北部に位置する村の方が母子共に健康な出産が行われている傾向があることも明らかとなった。エレベーターの近い北部は他国からの移民が流入しやすい土地であり、南部の魔法使いの子供を期待して母体の健康を蔑ろにしがちな意識がほとんど見られないこと、また、エア茶の摂取が盛んであることが母体保護に影響を与えていると言える。エア茶は中央の国と南の国で栽培されている茶の一種であり、南の国においては妊娠中に常飲することで魔法使いの子供が生まれやすくなると言われている。国土の南部においてエアの葉は貴重であるため、都市部や北部のように簡単に手に入るものではない。エア茶を常飲しない南部の方が魔法使いの出生率が高いことからも、エア茶が魔法使いの子供を生まれやすくする効能を持つことは迷信である可能性が高い。しかし、安全な分娩が行われている土地ではエア茶が普及しているため、エア茶に含まれる何らかの効能が母子の健康に役立っている可能性がある。
今後はエア茶の成分を調べ、母体保護に有効であるかどうか実験を行う。また、同時に気候の違う南部でもエアを栽培出来るよう品種改良を行ったり、有効である成分を抽出した魔法薬の開発を行うことで、南の国における出産時の母子の死亡率を下げると共に、南部の母体保護についての意識変革を促していきたい。