正宗財閥の坊ちゃん日向は昔からお屋敷でたまに見かける美少年の泛塵くんをお手伝いさんか何かだと思っていたけど、それにしてはテラスに座って庭をぼーっと眺めるだけでなにもしない、たまに話しかけてみても愛想が無いし、母親が帰ってくると入れ替わるように帰ってしまう。一度、いつも眺めているから庭の薔薇を摘んで渡してやったらクスリと笑って「塵だな」とか言われた
しばらくして一家の大黒柱である父親が病死してしまう。通夜の席で雨の中屋敷の外に立ちすくむ泛塵を見つける。駆け寄ってみると今まで表情を崩すことのなかった泛塵が取り乱しているのを察する。
「坊ちゃん…!あの人は、旦那さまはもう、いないのか」
すがる指から動揺が伝わってくる。
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