逆鱗「ねぇ」
激しい運動をしたわけでもないのに酷くのどが締め付けられる。
寒くもないのに体が震えて手足の末端が冷たくなっていく。
「君でしょう」
「は、ぁな、なに…」
舌がもつれてうまく発音できずに口をもごもごとさせていると胸を強く踏みつけられ呼吸がままならなくなった。
「い”っんむ…っ」
痛みにより漏れた声が上体を倒した男の手によってふさがれて悲鳴すら出せない。助けを呼ぶなんてもってのほかだ。
「君がやったんだよ」
「フィリルも、アリスも、悲しそうな顔をした」
「二人ともが優しいから本気で離れることにはならなかったけれど……さぁ」
胸に置かれた足へかかる体重が増し、重いどころではなくなる。ミシミシと骨のきしむ音がしても男は足を緩めない。
778