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    tang_soliloquy

    @tang_soliloquy

    GS4の上げる場所にこまったやつ。
    現在リスイン休止中。

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    tang_soliloquy

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    卒業後7月末。順調にお付き合いしている七マリちゃん、カレカノ初めての夏休みのひとコマ。
    Words Pallet kiss!(@torinaxx 様)のお題の13『遠雷に酔う』のワード「ぞわり」、「何度も」、「気持ちいい」を七マリちゃんで!とリクエストを頂戴しました。お題も含めて組み込んであります。
    ⚠がっつりキスするおはなしなので、苦手な方はご注意ください

    #GS4
    #ときめもGS4
    tokimemoGs4
    #七ツ森実
    #七マリ
    #七主
    sevenMasters

    遠雷に酔う 今年の夏は多忙な予定だ。仕事も課題もあって忙しいのももちろんだが、それ以上に、恋人になった美奈子とのデートをたくさんする予定だからだ。今までの夏休みはお互いに遠慮して日曜日にしかデートをしなかったけれど、今年は違う。平日だろうが夕方だろうが夜だろうが、会いたい時に「会いたい」と言えるし、会いにだって行けるし、お泊まりだってできてしまう。
     それはさておき、せっかく恋人になれたのだから、ただ会うだけじゃない夏らしい思い出も欲しくなる訳で。夏休みが始まったばかりの今日は、ふたりのスケジュールを確認しながら予定を立てるため、実の家でデートをする。

    「あー……あちぃ……」
     いつもどおり近所の公園に美奈子を迎えに行く道中、思わず口をついて出てしまうくらいの暑さだ。真っ青な空に、真っ白な雲。照りつける太陽は眩しすぎて、辺り一面が白っぽく見える。強い日差しに目がやられそうだと胸元に引っ掛けていたサングラスをかけた実は、ふう、と熱を逃すように息を吐いた。天気予報によると、この先しばらくこんな天気が続くという。
    (こんだけ眩しいと、サングラスも増やしたくなりますね。夏物バーゲン始まってるし、ラウンド型でグリーンのレンズとか……ボストンのピンクとか。あるとイイな……)
     明日は午後から撮影だから、昼食がてら少し早めに家を出て眼鏡屋巡りをしようかと目論見る。美奈子とふたりでショッピングも好きだけれど、ひとりで買い物をして、デートの時に彼女に「それ、イイね」と褒められるのも楽しい。果たしてどんなルートで店を回ろうか――そんなことを考えているうちに公園に辿り着き、向こうから美奈子が歩いてくるのが見えた。
    「……っ」
     少しでも涼しい服装をと選んだであろうキャミソールとミニスカートの露出の多さに、ドキッと心臓が跳ねる。
    (ヤバいでしょ……)
     カワイくて、少し刺激が強い格好の恋人と部屋でふたりきり。そんなシチュエーションで、夏休みの計画を冷静に立てられるだろうか。

    「実くん! ごめんね、待った?」
    「ヘーキ。俺もちょうど来たばっか」
     美奈子の格好を意識しまくっていることを上手に隠した、待ち合わせの恋人に相応しい甘い笑顔を向ける。
    「良かった。……すっごく暑いから、待たせちゃってたらどうしようって」
    「びっくりするくらい、タイミングぴったり」
     その言葉を聞いた美奈子は「ふふっ」と笑いながら、実の左腕に腕を絡ませる。どんなに暑い日でも、美奈子の体温は不快に感じないのが不思議だ。不快どころか、触れ合う素肌の感触も、やわらかな体も心地良くて、実の体も頭も熱くさせた。クラクラしそうなのは明らかに真夏の太陽のせいだけではなく、実は軽く首を振り「暴走するなよ、俺……」と小声で自分に言い聞かせる。
    「実くん、何か言った?」
    「何でもない。……早く涼しいトコ、行こ」
    「……?」
     何か聞きたげに見上げる美奈子を促して歩き始めれば、すぐに話題はお互いのファッションや、今日発売のコンビニスイーツのことへと移ったのだった。



    「花火大会は外せないでしょ。今年も浴衣でビシっとキメて、デートしよ」
    「うん! 八月の……四日だね。この日はバイト空けておく」
     冷房の効いた涼しい部屋で、ローテーブルに広げたタブレットや雑誌を覗き込みながらお互いの行きたい場所、したいことを挙げていく。最初は横並びで座っていたけれど、手を繋ぐだけでは物足りなくなり、美奈子を膝の間に座らせて後ろから抱き込む体勢に変えた。実よりひと回りもふた回りも小さな体は収まりが良くて、後ろから回り込ませた両手を彼女の腹の辺りで組む。美奈子からすると実の体は凭れ掛かるのに丁度良いらしく、膝や太ももを腕置きにして、力を抜いてリラックスしている。
    「ナイトパレードはどうする? あれも八月いっぱいだよね」
    「あー……そうだな。お盆休みは遊園地混みそうだし、ちょいズラしますか。……夕方からパレード目当てに行って、お泊まりデートとか。どう?」
    「……お泊まり」
    「ダメ?」
     恥ずかしそうに口籠る彼女の体をしっかり抱き締めて、左肩に顎をそっと乗せて後ろから顔を覗き込んで強請る。美奈子は頬を赤く染めながら小さく頷いてくれて、実は嬉しさに瞳を眇めた。次の瞬間には「あっ」と言って話題を変えようとするのも愛らしく、実の口から笑い声が零れた。
    「夏といえば、海で水着デートも外せないよね。実くん、今月中に行けそうな日ある?」
    「えー……あるにはあるし、美奈子の水着は見たいケド……海水浴じゃなくて青の洞窟じゃダメ?」
    「あのね。せっかくなら、夏らしく日焼けしたいなぁって」
    「……」
     そのひと言に、海と聞いて少し下がっていたテンションが急上昇するのだから、男なんて単純な生き物だと思う。水着姿の美奈子から、サンオイルを背中に塗るよう頼まれるなんてこともあるかも――そんな想像までしてしまった。
    (肩とか背中とか、スゲェ色っぽい……だろうな……)
     くっきりと水着の跡が残る美奈子の肌を想像して、ゴクリと喉が鳴る。彼女の裸を見たのはまだ数えるほどしかないが、胸や腹は特に真っ白で、肌の質感もすべすべでもちもち。そんな色白の素肌と日焼けのコントラストは夏にしか見られないだろうし、その境目に指先で触れたりキスを落としたら、彼女はどんな甘い声を洩らすだろうか。

    (……熱い)
     腹も、胸板も、太腿も。不埒なことを考えたせいか、美奈子と触れている部分がやけに熱く感じる。正確には、熱くなっているのは実だけ。美奈子の体は冷房の効果でひんやりしていて、特に二の腕の感触は外で腕を組んでいた時とは別物だ。
    (ヤバ……)
     心も体も刺激されて、このままでは夏休みの予定を決めるどころではない。心臓が早鐘を打つのが美奈子の背中から伝わってしまいそうな気がした実は、ゆっくり息を吐いて、意識をテーブルの上に向けた。
    「フリマは二十五日か。今ンとこはスケジュール空いてるけど、行けるかな……」
    「月末、お仕事忙しそうなの?」
    「仕事もあるけど、課題に追われてるかもだなって」
    「課題もいっぱい?」
    「美奈子に比べれば、いっぱいってほどじゃないけど……ムズいの後回しにしてスゲェ手こずってそう」
    「……なるほど。厄介なのほど後回しにしちゃうの、わかるなぁ」
     うんうん頷く美奈子は実より半月ほど夏休みが長く、その分、課題の数も多いのだと予め聞いていた。なので、遊ぶだけではなく一緒に勉強する日も作ろうとか、勉強をするならどちらかの家よりも図書館が良いだろうとか、学生らしい予定も立てる。
    (図書館デートでも、美奈子と会えるなら、めちゃくちゃ気分アガるんだろうな)
     進路が分かれてしまった今では、去年までのように勉強をする美奈子の姿を見ることは少ない。問題を解いている時の伏し目がちの睫毛や、考え込んでいる時に無意識に尖らせている唇を隣に座って見つめるのが好きだったから、課題は大変でも、またそんな美奈子を見られるのは楽しみだと口元が緩んだ。



     予定を粗方決め終えても、美奈子を後ろから抱き締める体勢を変えない。いちゃいちゃしたいし離れ難いしで、ぴったりくっついたままSNSをチェックしたり、おやつを食べたり、他愛のない話をしたり、つむじやこめかみにキスを落としたり。そんな風にすごしていると、腕の中の美奈子がピクリと体を震わせた。
    「……?」
     エッチな気分になっている時とは違う反応に実が首を捻ると、再び、キュッと体を固くする。
    (なる……)
     二度目の反応で、実も気が付いた。蝉時雨に重なって聞こえた、遠雷の音。窓に目をやれば、美奈子と落ち合った時の青空とは打って変わり、暗雲が垂れ込めてきていた。外はすっかり暗くなっていて、にわか雨に見舞われるのも時間の問題だろう。
    「美奈子」
    「……ん」
     名前を呼んでも気がそぞろで、反応が薄い。

     美奈子が雷が苦手だと知ったのは、高二の夏。デート中、外を歩いていたら急に様子がおかしくなり、「雷が……」と訴える震えた声に驚いた。それから急いで賑やかなショッピングモールの中へ移動したのを覚えている。ひと言に「雷が苦手」と言っても、苦手な理由は人それぞれ。美奈子は音が特に怖いらしく、だからこそ、どんなに小さな遠雷の音でも聞き取ってしまうのだという。家に居る時にはベッドにもぐり込んだり耳栓をしたりして雷が去るのを待つと話してくれた彼女は「子どもっぽいって思うんだけど、どうしても怖くて」と苦笑を浮かべていた。
     お化け屋敷に行っても笑っていた彼女には、苦手なことや嫌いなものなどなさそうだと漠然と考えていただけに、何かを怖がるのが新鮮にさえ感じたし、苦笑の表情も珍しくて、少しでも気分が落ち着くようにと美奈子の手を握ったのも忘れられない。
    (アレが初めて……俺から手を繋いだんだよな……)
     その少し前に彼女に恋をしていると自覚して、自覚したからこそ距離を測りかねていて。自分からスキンシップするきっかけになった雷は、実にとっては感謝の対象だったりもした。
     恋人になった今は、雷を言い訳にしなくても美奈子に触れられる。しかし、実とのふれあいで少しでも不安が和らいで欲しい気持ちは、あの夏以上に強くなっている。美奈子の腹の辺りで組んだ手に――抱き締める腕に力を込めると、小さな手が上から重ねられた。
    「ヘッドフォンかイヤフォン。使うか?」
     音楽を聴かなくてもいい。耳を塞いでいるだけでも気分が紛れるのではと提案したが、首を横に振る。
    「実くんの声、聞こえなくなっちゃうのは……そっちの方が不安、かも……」
     そうこうしているうちに、ぽつぽつ降り出した雨は、あっという間に窓に叩きつけるほど強くなった。窓を水滴がどんどん流れ落ち、白く滲んで外の景色は見えないけれど、雷は遠いままらしい。雨音と会話に混じってぼんやり聞こえる程度でも、美奈子がそわそわしているのがダイレクトに伝わってきて、どうしたものかと考えを巡らせる。
    (…………あ。アレ、イイかも)
     ひとつ、試してみたかったことを思い出す。そのうち機会があるだろうと考えていたけれど、今こそ絶好の時ではないか――そう決めた実の行動は早かった。

    「な。美奈子、こっち向いて」
    「……?」
     抱き締める腕を緩め、いたずらっぽい声で囁きながら耳にキスをひとつ。くすぐったそうに肩を竦めた美奈子が首を回して実の方を振り向いたので「体ごと、こっち」と言葉を重ねた。実に請われたとおり、ぐるりと動いて向かい合った彼女をひょいと抱き上げる。
    「えっ、実くん?」
     何をするのかと言いたげなのを敢えて無視して、太ももを跨ぐようにすとんと降ろせば、美奈子は慌てて実の肩に手を置き膝立ちになった。
    「重いし、足、疲れちゃうよ」
    「ゼンゼン重くないし、疲れないですよ」
     即否定すると、今度は「この体勢は、恥ずかしいな……」と言いながら膝から下りようとするから、腰にがっちり腕を回してそれを拒む。
    「美奈子。ギュッとしてたいの、ダメか」
     下からじっと瞳を覗き込んで尋ねる声は低く、甘く。声だけでなく、甘い眼差しをまっすぐ向けられた彼女は腰砕けになった。それを見逃さず、実は美奈子の腰を下ろさせて、太腿にしっかり座らせる。
    「キス、しよ」
     返事を待たずに唇を重ね、数秒後。彼女の体から力が抜けたのを褒めるみたいに、チュッと可愛らしい音を立てた口づけをひとつ。それから額に小さくキスを落とし、髪をかき上げて耳にもひとつ。顎の輪郭をなぞり、首筋に唇を這わせ、デコルテを啄んで。また首筋に唇を這わせたら、今度は頬や瞼にキスをして、思わせ振りに唇の端にも触れた。
    「……キス、しないの?」
     肝心な唇にキスされないもどかしさからか、美奈子がおずおずと尋ねてくる。
    「ん? しますよ」
     それを狙っていた実は口の端を上げて笑い、肩に置かれたままだった美奈子の両手を取った。軽く握ったり、指の腹で手の甲を撫でたりと手を愛でながら、顔を彼女の耳元に寄せる。「スキ」と呟いて耳に優しく唇で触れると、美奈子の肩が跳ねた。それを宥めるように手をやわやわと握りながら、耳のあちこちに優しいキスをする。口づけているから顔は見えないけれど、触れる手首からドキドキしているのは伝わってきて。雷が気にならないくらいもっと夢中にさせたいから、いよいよ計画を実行に移す。

     美奈子の手で耳を塞がせて、その上から自分の手を重ねた。
    「……? 雷が聞こえないように?」
     首を傾げる美奈子に、首を横に振る。雷が気にならないように――そう告げた実の声が、彼女に届いていたのかはわからない。今日、初めての唇へのキスは、最初から深いものだった。
     少し開いていた唇の合間から舌をするりと滑り込ませれば、美奈子の体が強張る。いつもなら華奢な背中を撫でたり抱き寄せたりして緊張を解すのだが、今日は耳を塞ぐ手を離さない。優しく歯列をなぞった舌先はどんどん動きを激しくして、惚けたままの美奈子の舌をねっとりと絡めとった。
     くちゅ、と小さな水音がふたりの唇の隙間から零れる。その瞬間、美奈子の目がまんまるに見開かれ、耳から手を離そうとするけれど、実の手がそれを阻む。

    (あの話、ホントだったんだな)
     耳を塞いでキスをすると、口の中の音が頭の中で響くらしいと知ったのは、美奈子と付き合い始めてしばらく経ってからのことだった。恋愛初心者の実は、誰かと付き合うのは美奈子が初めて。デートもキスも、それ以上のことも、何もかもが初めての相手なので、ネットや雑誌のそういう記事を読んで気になったものを試す相手も当然彼女だけ。
     力を入れすぎず、手のひらいっぱいで耳を覆い塞いだまま、くちゅくちゅと音をわざと立ててキスを交わす。自分の体の中の音が響いて聞こえるのは、どんな感覚なのだろう。ふと瞼を上げると、美奈子の目から動揺も理性も消えていないのを見つけ、唇同士が軽く触れ合う距離で囁いた。
    「集中して。他のコト……雷とか、ハズいとか、今は考えないで」
    「……でも」
    「でも、じゃない。な? オネガイ」
     声が届くように耳を覆う手を緩めた実は、彼女が実の顔と声を好きなのを知っていて、それを最大限に活かして強請った。甘く強引な口調とは裏腹に、密やかに唇に触れる。その微かな優しい感触に、美奈子が震える息を吐いた。
    「……ッ」
     それを合図に、再び耳を塞いで激しく唇を奪う。舌で唇をノックすれば、美奈子は花弁のような唇をすんなり開いてくれた。素直にほどけた唇から堂々と舌を入り込ませ、口腔内を丁寧になぞっていく。舌で上顎を擽り、舌同士を絡め。音を立てながら恋人のキスをしていると、実の頭もだんだんぼうっとしてきた。
     耳を塞いで口づけを交わしている最中は、唇が触れ合う音や舌が絡み合う音がどんなに小さくても体の中で反響して、軽いキスでも深いキスでも興奮するのだという。いやらしい音が頭に響いて、どんどんエッチな気分になっていくなら――気持ちいい感覚が全身に行き渡るなら、雷の音なんて気にならなくなるだろうと、このキスを仕掛けた。実際、美奈子は今までにないほど蕩けた表情でキスを受け入れていて、その色っぽくも無防備な顔が可愛くて堪らない。
     彼女の口内を弄り、上顎を撫で、舌先を軽く噛む度に、ふたりの唇の間から甘い水音が響く。口づけの激しさに美奈子の息が乱れ、それに実も煽られた。

    「カーワイイ……。舌、こっち」
     実に誘われるままにそろりと差し出された舌を包み込んで、チュッと吸い上げた。控えめに絡みつくキスが愛らしく、美奈子の好きなようにさせていたけれど次第に物足りなくなってしまい、焦ったさからちょっかいを出す。自分のより薄く小さい舌をなぞり、絡み付け、蕩けるように熱く濡れた舌裏を擦り上げた。
    「は、ン……みの、く……んっ」
     そんなキスだけで完全に息が上がってしまっている美奈子を目を細めて眺めながら、いやらしくて気持ちいいことをふたりで覚えていく。
     舌を甘く吸ってから少しだけ唇を離すと、美奈子が瞼を上げる。その瞳は、熱っぽく潤んでいて。物欲しそうに実を見上げる眼差しに欲を唆られた実は、再び唇を塞いだ。何度も何度も角度を変えて唇を啄み、耳から離した手のひらで彼女の両頬を包む。指先で耳たぶに触れながら深く口づければ、キスの合間に響く美奈子の乱れた吐息にますます体が熱くなった。
    「……美奈子、ホント可愛い。すげぇスキ」
     口づけながらそう囁くと、美奈子が実の背中に手を回して抱きついてきた。縋りついてくる小さな体をきつく抱き締め返すと、キスに興奮して汗ばんだふたりの肌が密着する。体が触れ合う感触だけではなく、太ももを跨ぐようにして座っているせいでスカートがかなり捲りあがってしまっているのも目に毒で、誘われるように手が伸びた。
    「……」
     押しつけられる薄着の彼女の柔らかな体と、薄暗い部屋で浮かび上がって見える白い肌。それと、微かに聞こえる遠雷に酔って自制心を失い、本能に突き動かされるまま噛み付くようなキスをする。口づけを交わしながら、瑞々しい太ももを手のひら全部を使って撫で上げると「あ……っ」と控え目な喘ぎ声が聞こえた。その声をもっと聞きたくて。もどかしいほどゆっくりとやわらかな手つきで、思わせぶりに体中に手を這わせながら、美奈子の甘い声を引き出すキスを贈った。

     一頻りキスを交わしてゆるゆるとした口づけに切り替えると、腕の中で小さな体がふるりと震える。その反応は、もう雷鳴のせいじゃない。とろんとした眼差しを自分に向けさせ、その目を覗きこみながら、実はただ一言呟いた。
    「ダイスキ」
     返事の代わりに、美奈子の瞼がゆっくり閉じられた。それを合図に、再び深いキスを交わす。
    (ヤバイ……気持ちイイ……)
     ぞわりと、腹の奥で何かが波打った。その欲を押し殺すように、キスの合間に掠れた声で美奈子の名前を呼ぶ。美奈子が熱い息を吐けば、それを飲み込むように唇を塞ぎ。うっすら薄目を開ければ、同じように眇められた瞳がこちらを見つめているのに煽られて。雷雲が遠ざかったことにふたりとも気付かないまま、ひたすらにキスを交わし続けた。



     差し込む陽光に照らされた美奈子は我に返ったのか、恥ずかしそうに目線をうろうろと泳がせている。
    「カワイイ……」
     そう呟きながら、指の背で美奈子の頬を撫でる実が醸し出す甘い空気も、彼女にとっては甘さよりも恥ずかしさのスパイスらしい。照れ臭そうに首を竦めて「夏休み、楽しみだなぁ」と小さく呟いた。
    「……俺も。こんなに夏休みが楽しみなの、生まれて初めてだ」
     美奈子に恋する自覚をしてから、ちょうど二年。やっと、片想いではない夏休みを迎えられた。
    (ふたりで過ごす初めての夏は、すげぇトクベツ)
     実は目尻を下げて、油断しきっていた美奈子の顎を持ち上げて引き寄せた。キスの予感に、ぶわっと一気に顔中を真っ赤に染めた恋人が可愛い。彼女が「待って」とか「ダメ」とか何か言うよりも先に、素早く唇を重ねた。しかし、実の心も体もだいぶ落ち着いて、遠雷に酔っていた時とは違う。
    「んっ……」
     そっと触れるだけのキスなのが意外だったのか、美奈子が目をぱちぱちさせたのがわかる。トロトロに蕩ける表情も可愛いけれど、こういう幼い表情も可愛い。
    (まぁ、どんな美奈子もカワイイんですけど)
     ふっと息を吐くみたいに笑いながら、実は瞼を下ろした。

    (この先は、ずっとふたりで……)
     夏休みだけじゃない。何でもない日も、冬休みも、春休みも。四季をふたりで過ごしていく――そう願いながらのキスは、どこまでも優しいものだった。
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    💖💖💖💖💖💖💖😻💏☺💖👏☺☺☺☺☺☺☺☺☺☺
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    tang_soliloquy

    DONE二年二月十四日の七マリ。時期外れですがバレンタインネタ。
    以前アンケを取った『CP創作お題をアンケで決める』で1位だった『熱があるのに』をクリアするのにこれしか思い浮かばなかった。
    七ツ森くんに逆チョコ用意して欲しいのは私だけではないはず……。あと七ツ森くんあの食生活とか睡眠時間とかでも滅多に体調崩さない、さりげなく健康優良児なイメージがあります(熱出し慣れてないタイプ)。
    「……ん?」
     目覚まし時計を止めてあくびをしようとして、ふと喉に覚えた違和感。「あー」と声を出してみても咳払いをしてもそれは消えず、洗顔と歯磨きを済ませて水を飲んで、やっといつもの声に近くなった。
    (湿度は……ヤバいな、四十パーセント切ってる)
     部屋の片隅に置いてある温室計に目をやると、室内はカラカラ。寝ている間に乾燥で喉をやられたのだろうと頷きながら加湿器をつけた実は、普段使いの化粧水に手を伸ばしかけて止め、その隣のボトルに――スペシャルケアのラインナップに指先をかける。
    (こんだけ乾燥してるし、ちゃんと保湿しとかないと……って、気合い入れたい言い訳なんですけど)
     今日は二月十四日。少し――いや、だいぶ期待している、特別な日だ。ほんの一週間ほど前にも実の誕生日という特別な日があったのだが、それはそれ、これはこれ。バレンタインをこんなに心待ちにするだなんて、去年までの自分に言っても信じてもらえないだろう。
    8742

    tang_soliloquy

    DONE卒業後7月末。順調にお付き合いしている七マリちゃん、カレカノ初めての夏休みのひとコマ。
    Words Pallet kiss!(@torinaxx 様)のお題の13『遠雷に酔う』のワード「ぞわり」、「何度も」、「気持ちいい」を七マリちゃんで!とリクエストを頂戴しました。お題も含めて組み込んであります。
    ⚠がっつりキスするおはなしなので、苦手な方はご注意ください
    遠雷に酔う 今年の夏は多忙な予定だ。仕事も課題もあって忙しいのももちろんだが、それ以上に、恋人になった美奈子とのデートをたくさんする予定だからだ。今までの夏休みはお互いに遠慮して日曜日にしかデートをしなかったけれど、今年は違う。平日だろうが夕方だろうが夜だろうが、会いたい時に「会いたい」と言えるし、会いにだって行けるし、お泊まりだってできてしまう。
     それはさておき、せっかく恋人になれたのだから、ただ会うだけじゃない夏らしい思い出も欲しくなる訳で。夏休みが始まったばかりの今日は、ふたりのスケジュールを確認しながら予定を立てるため、実の家でデートをする。

    「あー……あちぃ……」
     いつもどおり近所の公園に美奈子を迎えに行く道中、思わず口をついて出てしまうくらいの暑さだ。真っ青な空に、真っ白な雲。照りつける太陽は眩しすぎて、辺り一面が白っぽく見える。強い日差しに目がやられそうだと胸元に引っ掛けていたサングラスをかけた実は、ふう、と熱を逃すように息を吐いた。天気予報によると、この先しばらくこんな天気が続くという。
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     それはさておき、せっかく恋人になれたのだから、ただ会うだけじゃない夏らしい思い出も欲しくなる訳で。夏休みが始まったばかりの今日は、ふたりのスケジュールを確認しながら予定を立てるため、実の家でデートをする。

    「あー……あちぃ……」
     いつもどおり近所の公園に美奈子を迎えに行く道中、思わず口をついて出てしまうくらいの暑さだ。真っ青な空に、真っ白な雲。照りつける太陽は眩しすぎて、辺り一面が白っぽく見える。強い日差しに目がやられそうだと胸元に引っ掛けていたサングラスをかけた実は、ふう、と熱を逃すように息を吐いた。天気予報によると、この先しばらくこんな天気が続くという。
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    tang_soliloquy

    DONE二年二月十四日の七マリ。時期外れですがバレンタインネタ。
    以前アンケを取った『CP創作お題をアンケで決める』で1位だった『熱があるのに』をクリアするのにこれしか思い浮かばなかった。
    七ツ森くんに逆チョコ用意して欲しいのは私だけではないはず……。あと七ツ森くんあの食生活とか睡眠時間とかでも滅多に体調崩さない、さりげなく健康優良児なイメージがあります(熱出し慣れてないタイプ)。
    「……ん?」
     目覚まし時計を止めてあくびをしようとして、ふと喉に覚えた違和感。「あー」と声を出してみても咳払いをしてもそれは消えず、洗顔と歯磨きを済ませて水を飲んで、やっといつもの声に近くなった。
    (湿度は……ヤバいな、四十パーセント切ってる)
     部屋の片隅に置いてある温室計に目をやると、室内はカラカラ。寝ている間に乾燥で喉をやられたのだろうと頷きながら加湿器をつけた実は、普段使いの化粧水に手を伸ばしかけて止め、その隣のボトルに――スペシャルケアのラインナップに指先をかける。
    (こんだけ乾燥してるし、ちゃんと保湿しとかないと……って、気合い入れたい言い訳なんですけど)
     今日は二月十四日。少し――いや、だいぶ期待している、特別な日だ。ほんの一週間ほど前にも実の誕生日という特別な日があったのだが、それはそれ、これはこれ。バレンタインをこんなに心待ちにするだなんて、去年までの自分に言っても信じてもらえないだろう。
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