AIのべりすとと書く龍+剛ドギマギつば「野目さん!負荷はこれくらいでしょうか?」
大きな鏡とトレーニング器具が壁一面に置いてある部屋で、鈴のなるような声が響いた。
あれから2度目のジムでのトレーニングに野目は冷静に状況を判断しきれないでいた。
1度目に誘ったトレーニングを今思い返すと、自分はとんでもないことをしているのではないかと気が付いたのだ。
というのも、つばさの姿を見れば理由は一目瞭然であった。
普段の彼女とは違ったカジュアルなスポーツウェアに、仕事では見せない友人とはしゃぐような動きに、女性が苦手であった自分を思い返して、動揺し直していた。
このままではアイドルとしての自分が塵のように消え去ってしまうような気がする。
2度目の誘いがあったものの全く集中できていない。このままではまずいと思い、今回は金城も誘いトレーニングをしようと提案したのであった。
「オイ、その姿勢だと腰いわすぞ。腹に力入れてやってみろ。」
「か、金城さん!はい!頑張ります!」
金城のおかげか、緊張はやや緩和している。父親のようだと言われたせいもあり、前回の自分は随分意識していなかったのだと気づき苦笑する。
しかし、健康を気遣って行った集まりがつばさの方から2回目の提案があった際は、遠慮の無い関係になれたと安堵した。
野目は改めて、女性へハッキリと物事を言える金城に尊敬の眼差しを向けていた。
一方金城は、全く心中穏やかではない。
野目とつばさが2人でトレーニングをしていたことにも大きな衝撃を受けたが、正直に野目の気持ちが分かってしまったからだ。
(普通に、目に毒すぎる…)
これは、女性慣れしているとかしていないとかの問題では無い。
彼女の普段の生活と全くイメージが違いすぎる。全てが新しい一面に見えた。
それらしい指導をして、自分が何を言っているのかよくわからない状態であった。
(アイツ、これに耐えたのか…?スゲェな…)
「いつもこのぐらい回数こなしてらっしゃるんですか?」
「あ、あ〜…体調にもよるな…」
有酸素運動で息が速くなったつばさを見て、素数を数えつつ適当に返事をした。
「しかし、いっつも走り回ってるだけあってこういうのは余裕そうだな」
「そうですか?仕事を頑張った甲斐がありますね」
仕事一筋の彼女のセリフに、普段の会話を思い出し胸を撫で下ろした。
(そうだ。コイツはこういう奴だった。)
一度冷静になり、彼女に必要なトレーニングを考え直すために心を無にして彼女の身体を観察した。
引き締まったウエストライン。すらっと伸びた腕。
自分の視線の先にいる彼女が、本当に自分と同じ人間なのかと思うほどに小さい存在に感じた。
「基本的には、静的な運動の方がいいな。体幹あたりとか。あんまりやり過ぎると、無くなっちまいそ…」
「えっ」
「は」
つい口に出してしまった言葉に、彼女は驚いたようにこちらを見た。
「ぐ、具体的には…胸とかということですか…?!」
「あ、いや、無くなるっていうのはそういう意味じゃねぇ!風が吹いたら飛んでいきそうとか、存在がなくなりそうとか、そういう…!いや、存在が無くなるは意味わかんねぇけど…!」
顔が熱くなるのを感じる。必死に弁解をする自分に、つばさはホッとした表情を浮かべた。
「よかったです…!スリムになるのは理想ですが、女性として自信を失うところでした!」
自分とズレた論点で表情を一喜一憂させている彼女に、再度弁解をする。
「悪い。そういった意味で言ったんじゃない。つーか、別に無くなってもお前なら自信無くす必要もねぇだろ」
「え?」
「あ」
「ふふっ、ありがとうございます。人の魅力は見た目だけじゃ無いってことですよね。」
金城が意図していたものとは全く違う理由であったが、もうそれでよかった。
「あっぶね…」
何が危ないかよくわからなかったが、とりあえず金城には危険であった。阿修がいたらからかわれ終わらせてしまえる話題も、2人で仕事以外の話をすると上手く行かない。
金城は気まずくなりつつも、野目に助けを求めた。
すると、金城の思いが届いたのか、ランニングマシンの近くに戻ってくる。
何かを察してか、金城の肩に手を置いて小声で話しかけた。
「金城、大丈夫か…」
「ああ…まだ大丈夫なほうだ…」
自分も相当キテることに若干自覚はあったが、野目の表情を見ると、彼も同じ状況を越えた形跡を感じ同情と共に親近感が沸く。
同じ男として尊敬の意を込めて力強くうなずき返した。
そんな2人の話を聞くこともなく、つばさは金城と野目を見比べて首を傾げていた。
「2人ともどうされたんですか?随分お疲れの様子ですが……」
「いや、なんでもねぇよ」
「そうですか。では、最後はストレッチ?でしょうか?もしよろしければ、手伝って頂いてもよろしいですか?」
平和な2人の心境に、最後の最後に爆弾が投下された。「…………」
「金城さん?」
「……ああ、分かった」
金城は、つばさの背中に手を添えると、野目にアイコンタクトを送った。
(おい、野目!なんとかしろ!)
(任せろ)
2人は、つばさに悟られないよう、小さな声で会話をした。
野目はクッションをマッハで用意し、金城の手とつばさの背中に挟む。
(完璧だな)
(おう、これで心配ないな)
その後も謎の攻防が続き、ストレッチが終わる頃にはひとつの戦況を終えたような趣があった。
「ありがとうございました。やはり、素人の私だとだと限界があるみたいですね。また、お願いします。」
「あ、あぁ……」
「いつでも呼んでくれ。」
つばさと別れた後、金城は思わず頭を抱えた。
「まさか、こんなことになるとはな……」
「俺も、ここまでなるとは思わなかった。」
「お前、なんかあったのか?」
「いや、俺は平気だったんだけどな……金城が……」
「俺が?」
「なんか、途中から『これ、セクハラじゃないよな?』みたいな顔してただろ。身体触る度にどぎまぎしてたからさ、こっちまで変な気持ちになったぜ。」
「マジかよ……」
金城は恥ずかしくなり、手で顔を覆った。疲れからか、いつものように反論することもできない。
「あんまこんな気持ちになることねぇけど…なんか酒飲みてぇ…」
「お前まだ未成年だろ…わかりたくねぇけど…巻き込んだのは俺だから焼肉でも行くか…」
お互いにいろんな感情が渦巻いていたが、今日のところは忘れることにした。
(やっぱ女って怖いな……。)
野目は無自覚なつばさの恐ろしさを改めて感じた。次回誘われた時は殿を誘うか2人で議論し、結果は見送ることになる