或る生者の備忘録(2)case.2 二人の庭師
参謀は孤児だった。
母親の顔は薄っすらとだけ覚えている。貧民街で体を売る娼婦で、父親は顔も素性も知らない。
参謀が幸運だった一つ目は、五歳になるまで母親が育ててくれたことだ。子供を捨てる親ばかりの中、母親は雀の涙ほどの金を得ると、そのほとんどを参謀の食い扶持に当てていた。
参謀の一番古い記憶は、死んだ母親の亡骸をぼんやりと眺めている光景だ。飢えか、病死か。どちらかわからなかったが、骨と皮だけになった母親を前に立ち尽くしていたことを覚えている。
――可哀そうな人だ。
子供なんて早々に見限ってしまえば、もう少し長く生きられたかもしれないのに。きっと頭が弱かったのだろう。そうじゃないと、自らを犠牲にしてまで子供を育てる理由が無い。
12563