東風ちゃん過去『私達、昔は大変だったよね』
少女が言う
「ん?あぁ…あったなそんなこと」
黄色が答える
『今も十分大変だけどね』
少女が笑う
「でも今の方が断然良い」
黄色は答える
そんな黄色と少女の昔話
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赤子は双子だった
赤子は2人とも美しい瞳を持っていた
1人は美しいシトリンの瞳、1人は美しいトパーズの瞳
シトリンの瞳の片割れは捨てられた
少女の霊はそれを見ていた
少女の霊は捨てられた片割れを酷く気に掛けた
「何とかして助けなきゃ」
少女の霊は片割れにとり憑いた
片割れは拾われた
片割れは決して裕福とは言えないが、平凡で質素な暮らしをしていた
片割れはいつからか少女の事が見えるようになった
片割れを拾ったものは、存在しない少女の話をする片割れを忌み嫌うようになった
片割れはまた捨てられた
片割れは路地裏にいた
美しい瞳を持つとして様々な大人に狙われた
片割れは恐怖から大人に敵対した
片割れは誤って大人を殺した
片割れは色が見えなくなった
片割れは大人を殺した
片割れは段々見えなくなる少女に焦りを感じた
片割れは捨てた大人を酷く憎んだ
片割れは生きるために大人を殺した
少女は段々とおかしくなる片割れを傍で支えた
少女は決して片割れを見捨てることはしなかった
少女は何故片割れを捨てたのかと大人を憎んだ
少女は片割れのために大人を殺した
片割れは少女の声が聞こえなくなった
少女はそこに居るのに声が聞こえなくなった
片割れは酷く焦った
少女がいなくなると考えただけで片割れは可笑しくなりそうだった
少女は噂を聞いた
裏社会の噂を聞いた
少女は探した
噂の裏社会のボスを探した
探していくたびに片割れが段々可笑しくなっていくのも目に見えて分かった
片割れは少女が何かを知っているのを悟った
片割れは少女の声は聞こえないが自分のために何かしていると分かった
片割れは少女の手助けをしたかった
片割れは大人を殺しながら少女の様子を伺い続けた
少女はトパーズの瞳を見た
トパーズの瞳は幸せそうだった
少女は段々濁るシトリンの瞳を頭に浮かべた
少女はやるせない気持ちになった
片割れはトパーズの瞳を見た
トパーズの瞳は色とりどりの宝石の瞳に囲まれていた
片割れはトパーズの瞳をどこか懐かしい気持ちになって見ていた
片割れは裏社会の噂を聞いた
片割れは少女が何をしようとしていたのかを理解した
片割れは少女の為にも必ず見つけ出すと決めた
片割れは人を殺め続けた
片割れはどんどん殺めた
片割れは見つけた
片割れは生きる意味を見つけた
片割れはもう一度”家族”を見つけた
片割れは家族に迎え入れられた
片割れは生きる意味を見つけた
片割れは少女がまた見えるようになった
片割れは色が見えるようになった
片割れは自分が黄色と知った
片割れは新たな家族と、少女と、幸せに暮らし始めた
そんな、昔々のお話。