杉の実家へ挨拶に行く杉鯉 あー、本格的に緊張してきた。
見慣れた、けれどもう五年近く前からあんまり使うことはなくなった扉を前に、一度大きく深呼吸をする。
隣には、やたらとでかい手土産の袋を抱えた鯉登が居る。いつも以上にフォーマルな格好をして。
そして俺はと言えば、いつものデートとなんら変わりない服装だ。さすがにパーカーはやめてシャツにしたけど、下はキレイめのジーンズ。上着も普通のダウンを着てきた。
出かける前、ジャケットくらい羽織れと鯉登から散々言われたけど、結局言う通りにはしなかった。だって俺からしたら実家に帰るだけだし、父さんも別にそういうのにはうるさくないし。と、出る前にはそう思ってたんだけど……いざ家の前まで来ると少し後悔している。さすがに今の鯉登と並ぶとバランスが悪すぎたかもしれない。
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