貴方と共に汽車の車窓から外を眺めると川沿いの桜が淡い紅色を纏い始めた。
私がまたこちらに戻る頃は満開になっているだろうか。
昨年末に月島が私に会いに上京してきた(私が呼び寄せたのだが)。
待ち合わせ場所をはっきりと伝えたわけではないが、月島の事だから私の思考を察し上野公園の彼の方の銅像の下で待ってくれているだろうと期待した。
先に来て吃驚させてやろうと企み私は銅像付近で隠れて待っていた。
しかし、約束の時間が経過しても月島は現れない。いるのは大きな花束を抱えた背広の男だけだった。
上りの列車はとうに上野駅に到着しているはずだ。
私の思惑が外れ別の場所で待っているのだろうか、もしくは何か揉め事に巻き込まれただろうか(月島は巻き込まれ体質だから)とあれやこれやと一抹の不安が過り、居ても立ってもいられず表に出たところで大きな花束を抱えた男が私の名を呼んだ。
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