『君の居る朝に』 穏やかな寝息に、心音。
それと、少し小煩いいびきが聞こえる。
昨晩、年喰った俺とエミヤに誘われて、聖剣使いも連れて一緒に飲み会をする事になった。カルデア内のエミヤの自室で、彼の作る美味い飯と年喰った俺が持ち込んだ酒に舌鼓みを打ちながら、とても楽しい時間を過ごした事だけは事確かに覚えている。
腕の中では、聖剣使いが綺麗な寝顔を晒して、穏やかに眠りに就いている。年喰った俺のいびきが、静謐なエミヤの部屋の静寂を騒々しく掻き乱していた。
俺も聖剣使いも互いに服は昨日着ていた軽装のままだったので、俺達は酒をかっ食らっているうちに寝落ちてしまったようだ。
ふと、寝返りを打とうとして、何かにぶつかる。
それは、誰かの背中だった。背に触れる身体は、横向きで寝ているようではあるが随分と行儀の良い寝相で、心音は穏やかに脈打っている。年喰った俺は、あまり寝相は良くなかった筈だ。
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