壁「じゃあな、桜木、流川」
「キャプテン、桜木先輩、お先です!」
「気をつけて帰れよ」
後輩や同級生たちが居なくなると、さっきまで騒がしかった部室がしんと静まり返る。去年の今頃、キャプテンだった宮城から職務を引き継いだ流川は、挨拶に頷き返すために上げていた顔を、部誌へと戻した。部室の奥の机に座って部誌を埋めていた流川にところに、お喋りに夢中になって着替えの手が止まっていた桜木が、ようやく練習着から制服姿になって、近づいてくる。
「よお、さっきの、聞いてたかよ」
机の端に腰かけた桜木の尻から、下敷きになった部誌を引き抜いた。
「知らねー」
「桜木センパイ、高校からバスケ始めたのにすごいですね、だってよ、今年の一年坊主はよく分かってやがるぜ」
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