花園百々人/ヒーーーンつらい :職場でオタバレして苦しむ話 私は職場でオタバレしないように日々頑張っているけども、今日はちょっと気を抜いていた。
「お菓子? 珍しいのね」
昼休みを終えて戻ってきた私が提げていたビニール袋がクランキーの箱を透かしていたのを見て、通りがかった上司に言われた。デスクでお菓子をつまむことは許されている職場で、上司の声にも咎める色はない。
「食べますか? 私ちょっと食べきれないかもしれなくて」
「どうして買ったの」
「あっ」
やっべ。
「えっと……」
何となく、みたいな言い訳が浮かんだのに口は別に動いた。
「好きなアイドルがキャンペーンやってて、お菓子を買うとステッカーがついてくるから買いました」
社会人として上司にはどんなことでも正直に報告すべし――入社してから何度も繰り返し教わってきた通りに私の口は本当のことを言っていた。
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