電話「すみません社長、後で電話を借りても?」
「あぁ、言っておくから好きに使いなさい」
無事村に着いた事と、これから行われるであろう当主任命の結果を上に報告する必要があった水木は、克典からの許可を得てひとまずはほっと肩から力が抜いた。これだけデカい屋敷だ。固定の電話ぐらい繋がっているだろうとあたりをつけていたが、正解だった。
「ありがとうございます」
感謝の礼を告げ深く頭を下げた水木であったが、この時はまだ、後に起こる騒動など知る由もなかった。
◆
あぁ、なんてこったっ!
こんなにも、受話器を持つのが億劫だった事があるだろうか。
水木はがしがしと頭を掻きながら、電話交換手に交換先の名を告げる。
『お待たせ致しました。帝国血液銀行の、』
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