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    サクまめ

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    サクまめ

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    同僚水③

    電話「すみません社長、後で電話を借りても?」
    「あぁ、言っておくから好きに使いなさい」
     無事村に着いた事と、これから行われるであろう当主任命の結果を上に報告する必要があった水木は、克典からの許可を得てひとまずはほっと肩から力が抜いた。これだけデカい屋敷だ。固定の電話ぐらい繋がっているだろうとあたりをつけていたが、正解だった。
    「ありがとうございます」
     感謝の礼を告げ深く頭を下げた水木であったが、この時はまだ、後に起こる騒動など知る由もなかった。



     あぁ、なんてこったっ!

     こんなにも、受話器を持つのが億劫だった事があるだろうか。
     水木はがしがしと頭を掻きながら、電話交換手に交換先の名を告げる。
    『お待たせ致しました。帝国血液銀行の、』
     電話先に出た聞き慣れた男の声に、思わず安堵の息が漏れてしまったのは、気が張っていたせいもあるだろう。俺だと言えば、同僚の男は『水木?』と名を呼ぶ。受話器越しであっても変わらぬ男の凪いだ声に、自然と水木の肩からも力が抜けていた。
    『お疲れさん。どうした?』
    「どうしたも何も、状況報告ぐらいしておこうかと思ってな。…部長は居るか?」
    『真面目な奴だな、お前。部長なら、朝から外に出てるぞ』
     時貞翁の訃報に中央も大騒ぎだ。そんな事を言う男の背後では、成程確かに、引っ切りなしに鳴り響く電話の呼び出し音が喧しい。
    「なら、無事村に着いたとだけ言っといてくれ。変化があればまた電話する」
    『了解。…そっちの暑さはどうだ?』
    「涼しくはないが、東京よりは緑が多い分吹く風は気持ちがいいぞ」
    『いいね。ドブ臭い風を懐かしむ前には戻ってこいよ』
    「当たり前だろ、俺もそう暇じゃないんだ」
     言えば流石は帝血の星だなどと笑う同僚が相手になると、どうにも無駄な話に花が咲いてしまう。
     適当な所で通話を切り、忙しそうにしている家人に一応の礼を言って部屋へと戻った水木は、窓辺に寄って煙草に火をつけた。
     ぷかりと煙を吐き出し、妙に名残り惜しく感じる己の心情に首を傾げながら、重い緑の山々を前にらしくもないなと苦笑を溢すのだ。
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