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    ヒロ・ポン

    支部ないです。ここに全部ある。

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    ヒロ・ポン

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    がんばれ黒服くん

    門弥黒服は雄大君に幸せになってほしかった。
    地元からついて来た黒服も、そうでない黒服もそう考えた。
    立会人として憧れの一等星である。そして結婚すれば祝儀をくれ、不幸があれば香典をくれ、頼めばスピーチをしてくれ、頼んでないのに弔問に来てくれる。悩む事があれば手を貸してくれ、宴会は率先して楽しみ会計を出して先に帰る。人間としても尊敬出来た。
    自分たちに出来るご恩返しと言えば門倉雄大の立会いと進行が一切の支障なく終了するように全力で努める事と…その他はなんだろうか?と考えた。

    ある時一人の黒服から雄大君のプライベート情報がタレ込まれた。プライベートを詮索するのはご法度であったが、偶然だからみな許した。皆雄大君の事が知りたかった。
    妻子を連れた買い物の後たまたま通った繁華街で見かけたという黒服の言う事では、弥鱈立会人とともに連れたって歩いて居たという話だった。
    会社の人間が居たから挨拶してくるといって妻子を車に行かせそっと尾行した後、二人はホテルに入っていったという。
    大人の付き合いというものではないか?雄大君の幸せを勝手に定義するのはいかがなものか?というのも議題として提案されたが、以降も報告された弥鱈立会人とプライベートでデートしている時の雄大君の顔が言語化できないほどやさしく幸せそうだったので「この方向で間違いない」と確信した。

    なので、黒服たちは考えたのだ。二人が共にいられる時間を増やせるようにしてはどうだろうか?と
    何かをお膳立てするというのは憚られたし、その必要はないというのが総意だった。では何ができるか?賭けの場以外の立会人と黒服としての業務の時間の短縮、撤収や事務仕事の効率化、まずそこから攻めた。
    この作戦は成功だった。雄大君はプライベートの予定を立てる頻度を増やしたようだった。これは弥鱈側立会人側の黒服への聞き取りにより弥鱈立会人の方にも作用しているようだった。
    これだ。命短し、恋せよ雄大(くん)———黒服たちはいつかのためのご祝儀積み立て口座の満期金額を入れた通帳を胸に抱いて夜ごと眠った。

    しかし、晴天の霹靂というのはその通り突如訪れるものである。
    雄大君の喫煙量が増え、南方立会人に入る蹴りの頻度も増えた。何かが起きている。業務は滞りなく進行しているし、雄大君が残り仕事を出したりそれの始末に追われているような様子はない。
    尾行した黒服は自宅への直帰ばかりになっていると報告して来た。まさか破局か?と一同膝を折りかけたが、その落胆を見かねた古参黒服がそれとなく探りをいれてくれた。
    結論から言うと、破局ではなかった。しかし二人の時間という物がほとんどなくなっているという事が発覚した。
    二人ともいい歳の表の顔もある男である。何も恋人との時間だけがプライベートではないが、何が起きているのだろうか。
    雄大君、大丈夫かな、の声が続く。こうしちゃいられないと黒服たちは斥候として散った。

    そして、今に至る。
    「ベタじゃなくて60線の85%で。投げて塗るツールに慣れて無いならバケツと手修正の方が早いですよ」
    「はい!」
    深夜二時、無傷ながら他人の血液の臭いべっとりで戻って来た弥鱈立会人の指示を受けて作業を手順を切り替える。
    弥鱈立会人がシャワーに入っている間に足元の小型冷蔵庫のエナジードリンクの在庫を改め、机に10秒チャージのゼリーパックを数種類置いた。
    「早割まであと三日だ」
    「次の立ち会いは相手の暴が少々多いですね」
    「CG集じゃないからテキストと差分の増量では間に合わない。万が一の負傷に備えて早割期間の入稿が絶対だ」
    「はい!」

    集団行動に慣れている事が功を奏した。
    そして、ちっちゃなころから悪ガキで親も泣かせたし高校は留年したが、それは教科書でのお勉強がダメだっただけで皆元来の物覚えは早かった。これも功を奏した。
    早々にシャワーから出た弥鱈立会人が濡れ髪をタオルの中に収めゲーミングチェアに腰を下ろす。
    「それじゃあみなさん、よろしくお願いします」
    深夜二時なので、「はーい」という返事に留める。ペンの充電は十分、電圧なども安定している。ここから三日、大の男4人が籠城するだけの蓄えも用意した。
    黒服たちは燃えていた。待っててね雄大君、早く入稿すれば時間ができるから…その一心であった。
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    トーナ

    DONE初門梶SSですが、門倉さんあまり出ません。すいません…。

    裏ver書きたい。
    僕の秘密

     門倉さんに秘密にしていることがある。それは門倉さんがいない間に僕が彼のシャツを独り占めしてることだ。僕と門倉さんは恋人同士で今でもどうしてこの関係になったのかもわからない。きっかけはたぶん、プロトポロスでの出来事だろうと踏んでいる。お付き合いしてだいぶ経った頃に彼がある日仕事が長引いてなかなか会えなくて寂しくなった僕は洗濯物に混ざっているシャツを見つけた。シャツから香る門倉さんの匂い。たばこと体臭。最後に嗅いだのはいつだったか。そしてふと思いついて、実行すると寂しさが解消された。
     
     その日も僕はあることを始めた。洗濯せずに取っておいた門倉さんのシャツを抱きしめながら眠る。彼と一緒に暮らすようになって、いつしか彼の存在がそばにあるのが当たり前になっていた。だから、会えない間はそばにいないと僕は胸に穴が開いて落ち着けなくなってしまう。
    「…門倉さん」
    僕より大きいそのシャツから嗅ぎ慣れた匂いがした。その匂いがあるだけで門倉さんがいるんだと錯覚できる。だから、よく眠れるようになる。胸のあたりに顔を埋める。今は薄っぺらいシャツだけの感触しかないけど、ここには彼のたくましく厚い 1001

    トーナ

    DONEいとしい傷痕の対となってる門梶です。疵に贈るキス


     深夜に目を覚ました梶が最初に気づいたのは裸の背中に当たる大きな存在だった。梶の背中を覆うようにして眠る門倉がすぐ隣にいる。よほど深く寝入ってるようで寝息が耳元に当たる。そっと見上げると普段は鋭い隻眼が閉じられた、穏やかな寝顔があった。思いがけなく跳ねた胸の鼓動を宥めつつ、貴重な時に起きられた自分を褒めた。眠る門倉を見るのが小さな喜びであり、楽しみだった。
     ゆっくり身体の向きを変えて門倉に向き合う。前髪の分け目から見える、皮膚を抉ったような大きな傷痕。梶が雪出との勝負に負けた後に出来たものなのだと聞いた。傷が元で人格や体調に影響が顕れている。プロトポロスで見せた片鱗はたしかに門倉ではない、『なにか』だった。手を伸ばして優しく撫でる。起きないのを逆手に取っていたずらに指を這わせる。


     最初に出会った時とは違うかもしれない。それでも、根幹は門倉なのだと思う。梶は彼が普段から『なにか』を抑えつけているのをひそかに感じ取っていた。梶の前ではなんでもないように振る舞う。そんな彼を前に自分も知らないフリをした。何も出来ないのがもどかしかった。
     感触を感じるのか、眉間にしわ 615

    トーナ

    MOURNING一度は書いてみたかった門梶♀信号が赤から青に切り替わったのを機に、止めていたハンドルを動かす。時刻はすでに終電を迎える頃だった。遅くまでかかった残業を思うとはらわたが煮え繰り返る。同僚の立会人のせいで事後処理が遅れたのだ。必ず、この恨みは後日に晴らすとして。
    『門倉さん?』
    「聞こえていますよ。大丈夫です」
    『なんだか、機嫌悪くないですか?』
    「そりゃあ、どっかのバカのせいで仕事する羽目になりましたからね。せっかくの半休が台無しです」
    スピーカーホンにしたスマホから漏れる彼女のの乾いた笑い声がした。おそらく梶の脳裏には急務の報せを受けて凶相になった私を思い浮かべたかもしれない。
    『本当に、お疲れ様です…。門倉さんにしか出来ないことだから、仕方ないですよ』
    梶の宥めるような声がささくれ立った私を落ち着かせてくれる。
    「梶、眠くないん?」
    『んん…、もう少しだけ』
    「また薄着のままでいたら、あかんよ」
    『でも、かどくらさんとはなして、いたい…』
    どこか力が入らなくなってきてる彼女の声に眉をひそめる。共に過ごせなかった半日を名残惜しむのはいいが、前科があることを忘れてはいまいか。
    「明日、無理やり休みもぎ取ったから、い 1173