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    ヒロ・ポン

    支部ないです。ここに全部ある。

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    ヒロ・ポン

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    たつえこ/創一さんがまだお腹の中にいた頃の二人

    私は好きよあなたのお顔じゃすこし厳つすぎるわ。
    そういいながら俺の顔に遠慮なく触るのはこの女くらいしかいない。俺もそれを許すし、許すのもこの女くらいなものだ。

    男の子だけど、どうかしら。
    と差し出して来た写真には小さく分かれた五指が写っていた。
    どうもこうもあるか、と絵子を抱えて持ち上げようとしたら古参全員に止められ、俺は渋々抱きしめるにとどめた。
    「高さがあるとこういう時にいいわね。お腹が苦しくない。」
    絵子の手は迷いなく俺の背に回って、細すぎる腕が俺を抱き返す。
    次の王を身ごもった女だというのにこんなに細くて大丈夫なのかとすら思う。
    絵子を抱きかかえて立ったまま丈一に向かってエコー写真を催促する。まだなにもわからないが、今腕の中にある体にはこの命が宿っているのだ。
    「どっちに似るかな。男前ならいいが」
    「男前にしてもあなたのお顔じゃすこし厳つすぎる。もう少し優しい顔の子になってほしい」
    「ぐはあ。でもいい男ぶりだろ?悪くない。お前に似ても美男になるだろう」
    「じゃあ顔は私。体はあなたね」
    絵子の手が肩から首を撫で、それから頬を包む。
    「あら、おひげが残ってる」
    「もう六時だ、見逃してくれ」
    最近目立つ目じりの皺、眉の毛の流れ、頬骨、耳裏の窪み、剃ってから半日も過ぎてざらつきはじめた顎、全部に触れられる。
    「…ほんと、あなたのお顔じゃすこし厳つすぎるわ。」
    「ダメか?」
    「いいえ?きっとよく笑う子になる」
    「名前はもう決まってる」
    「もう、勝手に決めたのね」
    「ダメか?」
    「いいえ?まず、聞くだけ聞くわ」
    「よし、刺繍の練習がてらにハンカチに刺してある。是非検討してくれ」
    傍らに置いたままだった白杖を持ち、絵子は俺の腕に行き先を委ねる。
    家の中ならもう杖がなくても歩けるのは知っている。でも、俺は絵子のこれが好きなのだ。
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    トーナ

    DONEいとしい傷痕の対となってる門梶です。疵に贈るキス


     深夜に目を覚ました梶が最初に気づいたのは裸の背中に当たる大きな存在だった。梶の背中を覆うようにして眠る門倉がすぐ隣にいる。よほど深く寝入ってるようで寝息が耳元に当たる。そっと見上げると普段は鋭い隻眼が閉じられた、穏やかな寝顔があった。思いがけなく跳ねた胸の鼓動を宥めつつ、貴重な時に起きられた自分を褒めた。眠る門倉を見るのが小さな喜びであり、楽しみだった。
     ゆっくり身体の向きを変えて門倉に向き合う。前髪の分け目から見える、皮膚を抉ったような大きな傷痕。梶が雪出との勝負に負けた後に出来たものなのだと聞いた。傷が元で人格や体調に影響が顕れている。プロトポロスで見せた片鱗はたしかに門倉ではない、『なにか』だった。手を伸ばして優しく撫でる。起きないのを逆手に取っていたずらに指を這わせる。


     最初に出会った時とは違うかもしれない。それでも、根幹は門倉なのだと思う。梶は彼が普段から『なにか』を抑えつけているのをひそかに感じ取っていた。梶の前ではなんでもないように振る舞う。そんな彼を前に自分も知らないフリをした。何も出来ないのがもどかしかった。
     感触を感じるのか、眉間にしわ 615