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    ヒロ・ポン

    支部ないです。ここに全部ある。

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    POIPOI 147

    ヒロ・ポン

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    創一さま(あかんぼ)と新米シッター丈一

    がんばれ丈一くん「ああまた…」
    やられた…と創一を持ち上げ、丈一は創一の口から自分のスラックスに続く涎の列に遠い目をした。
    豊満な方ではない創一はおむつを履かされたアンバランスな体型でよく動く。そして、水源はどこなのかと言いたくなるくらいよだれを垂らす。
    実の親である撻器は「それもよし」と息子を散々にもみくちゃにしていったかと思えば赤ん坊の部屋についての指示だけ出して海外に行ってしまった。
    立会人が滞りなく取り立てをすれば、賭郎の邪魔をする連中が現れなければ、掃除人である自分の出番はない。だからといって子守り業を副業とした覚えもないが、成り行きでこうなっている。
    「ぢゃ!」
    「なんでしょうか」
    創一はマジックテープでくっついているにんじんのおもちゃをもみじ大の手で左右にひっぱっている。まだ赤ん坊の力では剥がれないのだろう、力いっぱいに引いている感じは出ているが結果が伴わない。
    「う゛!」
    正座している丈一の脚の上ににんじんが置かれる。はいはい、とねじるようにしてマジックテープぶぶんを剥がすと創一が拍手した。
    「…」
    もういちどくっつけ、剥がす。また拍手された。長ネギ、たまねぎ、ジャガイモも膝に置かれたので全部二つに割った。拍手は延々と続いた。
    「ぅ…」
    かと思えば飽きたのか、創一は器用にころころと転がって移動し、道具箱にしている籠の縁を掴んだ。
    「あっ」
    箱の中身は丈一の膝の上にある。ほとんど空の箱は引っ張られるままに傾き、創一の上に向かってひっくりかえった。
    小鳥を捕まえる古典的な罠の如くすっぽりとその籠の中に入ってしまった創一に丈一は膝の上の野菜をとっ散らかしながら慌てて籠を撤去した。
    「創一様!」
    「ん」
    泣きもせず、ぐずりもせず、「あったぞ」とでも言っているかのような様子できゅうりの玩具を差し出された。
    「…はい」
    バリ、と小気味のいい音を立てて左右にわかれたキュウリに創一は寝転がったままで拍手をする。
    丈一は急に他の面子が恋しくなった。普段なら絶対にない事だが、「早く帰ってこい」とすら思った。
    普段の仕事の方がよっぽど簡単に思える。そこには行動を果たすべき理屈があり、言語があり、結果がある。受ける痛みにも理由がある。すべては説明がつくことだ。
    それがどうだろう。まるで宇宙人を相手取っているようにしか思えない。言語という概念のない、行動の予想もつかない、どうこうするということもできない相手。
    分かっているのは上から食ったら下から出る事、油断するとシャツに吐き戻される事、飲んだ水分以上のよだれが出る事、マジックテープ式の野菜にハマっていること。
    読む腹のない相手とはかくも厄介で難解なものなのか。いや、考えて解ける事などない相手が厄介なのは頭では理解しているのだが―――

    「たう」
    「…はい」
    手渡されるま、バリ、とレタスの玩具を左右に割る。また、拍手された。
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    トーナ

    DONE初門梶SSですが、門倉さんあまり出ません。すいません…。

    裏ver書きたい。
    僕の秘密

     門倉さんに秘密にしていることがある。それは門倉さんがいない間に僕が彼のシャツを独り占めしてることだ。僕と門倉さんは恋人同士で今でもどうしてこの関係になったのかもわからない。きっかけはたぶん、プロトポロスでの出来事だろうと踏んでいる。お付き合いしてだいぶ経った頃に彼がある日仕事が長引いてなかなか会えなくて寂しくなった僕は洗濯物に混ざっているシャツを見つけた。シャツから香る門倉さんの匂い。たばこと体臭。最後に嗅いだのはいつだったか。そしてふと思いついて、実行すると寂しさが解消された。
     
     その日も僕はあることを始めた。洗濯せずに取っておいた門倉さんのシャツを抱きしめながら眠る。彼と一緒に暮らすようになって、いつしか彼の存在がそばにあるのが当たり前になっていた。だから、会えない間はそばにいないと僕は胸に穴が開いて落ち着けなくなってしまう。
    「…門倉さん」
    僕より大きいそのシャツから嗅ぎ慣れた匂いがした。その匂いがあるだけで門倉さんがいるんだと錯覚できる。だから、よく眠れるようになる。胸のあたりに顔を埋める。今は薄っぺらいシャツだけの感触しかないけど、ここには彼のたくましく厚い 1001