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    ヒロ・ポン

    支部ないです。ここに全部ある。

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    ヒロ・ポン

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    なんぽぽ(判南)とかじちゃん(門梶) 健全なおじさんと健全な若者(補導)

    使徒と犬諸事情あり、ホテルを一旦引き払う事になった。
    というのもホテル側の設備の問題で、近年続いている地震への対策として免震と、同時に内装の整備やリニューアルの施工をするというものだった。
    もちろん貘さんがそれでごねるわけもなく、ホテルの偉い人全員来たの?というような面子にも「いいよ~」と返していた。
    賭郎の資産は切間の資産であることも多く、お父さんが住んでいた屋敷には前の一人でお屋形様をやっていた時から今に至るまでそのまま創一さんが住んでいた。
    だから貘さんと僕等は変わらずにホテル暮らしをしていた訳だけど、一旦退去という事で次はどうするかの家族会議となった。
    「どうする梶ちゃん。俺はここの立地とか部屋気に入ってるんだよね…またここに戻ってこようとおもうんだけど」
    「僕もそうしたいですね。もう完全に住み慣れてしまったので…」
    「マルコも同じ!もうあの枕はマルコの枕よ」
    じゃあ枕は貸してもらおっか、という貘さんに後ろに控えている総支配人はすごい勢いで頷いている。
    系列ホテルを案内することもできると言われたが、三人で話し合った結果全然違うところに仮住まいを設けることになった。
    「ハルも前に一緒に住むかどうかって話してたから、お試しで住んでみようかなって思ってたんだよね。」
    「じゃあ僕はどうしようかな、どっか適当にホテル行脚でもします」
    「いいね、どっかいいとこあったら教えてよ。普通にワンルームのホテルっていうのもたまにはいいだろうし。マーくんは俺が連れてくよ」
    「マルコは枕とポテチがあればいいのよ」
    「手がかからないなあ、マルコ」
    それじゃあ荷造りを、とそれぞれの寝室に別れ、ホテルの部屋を出たのは三日後の事だった。



    ―――梶は途方に暮れていた。
    最初の一週間は貘にも言っていた通りにホテル行脚をした。
    十分に暮らしていけるだけの衣服などが入ったスーツケース一つでふらふらとその日部屋に空きがあるホテルに行くのは楽しかった。
    その間も賭郎勝負やそれ以外の細かいギャンブルなどをして過ごしていたので日常はとくに変わりなく過ぎていく。
    が、事件という物は起きる時に前触れなど見せてくれない。
    シンプルな話、面倒な相手に当たった。命や全財産などを賭けさせられることはないが、相手の嫌がる顔を見たがる相手だった。
    聞いた前例なら女装で投稿時間の通学路を歩かせたり、全裸で過疎地域に置きさられたり、交際相手の前でそいつが用意した男にケツを掘られたり。
    テーブルに乗る金や物の条件がいいためこの男の誘いを受ける者は後を絶たず、被害者は増えていく一方だった。
    しかし梶はもとより裏社会で暮らす人間だったため加えて賭郎の手の内にその身を置いているという事もあって大抵の苦痛や屈辱、表社会に席のある物が困り果てるような恥、それらを受けてもいくらか心身に後遺症がのこるとしても、大したダメージを受ける事はないのだ。
    だから勝っても負けても大差ない。そう思いながらテーブルに着いた。そして負けた。
    それでも死ぬこと以外はかすり傷であるこの業界の人間として「さて何が来るかな」と構えていられる余裕があった。
    「じゃ、財布と携帯出して」
    「…」
    「梶様」
    今回の立ち会人である南方に促され梶はポケットに入れていた私用携帯と財布を出した。
    「中身ですか?」
    男は財布の中にざっと目を通す。携帯には見向きもしないが、梶の方を見てにっと笑う。
    「君、今根城がないんだってね」
    男は財布の中身を小銭入れに放り込んでいたクリップのひとつまで全部取り出して並べ、ニヤニヤと笑った。


    賭け金を提示する時に要求されたのは携帯と財布だった。その中にある情報が欲しいのかと思ったが、カード類の暗証番号や携帯のパスコードを要求されなかったためそこには触れず、勝負後に要求されたとしても突っぱねるつもりだった。
    負けた今改めてそれの要求でもあるかと思ったが男は興味なさげに梶の財布と携帯を黒服が持っている薄い麻袋の中に投げ入れる。
    「不用心だなあ。ホテルのキーまでここにある。」
    まあいいけど、とそれも袋の中に投げ入れ黒服を下がらせた。
    「これって何が目的なんですか?僕の財産狙いかと思ったんですけど。」
    「君が持ってる財産なんか雀の涙でしょ。君は嘘喰いの手駒、自由になる金がさほどあるとも思えないし…でも今日はこのまま無一文でこの気温と大雨の中放り出されるんだよね。嘘喰いも今、国内にいないんでしょ」
    危なく、ぐう、と唸る所だった。思わず唇を噛むと男ははしゃいだ。男が今日本当に見たかったのが梶のこの顔だった。
    弥鱈さんの亜種かな?などと思いながら梶は男の講釈を聞き流しながら頭の中で今日をどう過ごすか組み立てた。いくつかは思いつくが、何手か先は詰みだ。健康的に過ごせる道が思い浮かばない。
    男は梶の思案顔をじろじろと眺めて満足そうにすると席を立ち、さっさと賭場を出て行った。本当に嫌がらせをするためだけにやってんだな、と梶の中にごく単純な嫌悪感が涌いた。
    「梶様。今回の賭けの取り立てですが、梶様の私財と通信手段の二週間の没収・使用禁止です。期間が終了次第返却されます。」
    「はい、それはもう」
    物自体を奪われたわけじゃないからまあいいか、と撤収してゆく黒服たちを見送り梶は大きく伸びをする。
    「交番行けば電車賃くらいは貸してもらえるんで」
    「それでどうお過ごしになられるおつもりですか。ホテルにも入れない、支払いもできない…外はもう氷点下です。ここに来た恰好だってコートですらない。」
    黒服たちが出て行った元・賭場で二人になり、梶を見ている南方の視線に「あれ、」と思い身を起こす。
    「…南方さんって、立会人の割に甘いですよね」
    「…活きのいい会員に野垂れ死んでもらっても困る、というのが根にあるとは思っていただけませんか」
    「おまわりさんだから放っておけない、でもいいんじゃないでしょうか」
    「お上手です」

    さてどうしようかな、という思案は一旦捨て、促されるまま地上に待っていた車に乗った。
    「貘さんに言えばいいんでしょうけど、あんまりにもダサいから言いたくないなあ…」
    「否定はしません」
    「なんか最近門倉さんに似てきましたね…」
    二人で並んで後部座席にいるのは慣れなくてなんとなく窓の方に寄ってしまう。種銭がないので増やそうにも増やせないし、公営ギャンブルはもう閉まっている。
    まさか立ちんぼをして日銭を得るわけにもいかない。
    「とりあえず朝までコンビニで立ち読みして、酔って寝てたら盗まれたってていで交番でお金借りて競馬行きます。日曜だし。」
    貘さんも門倉さんも海外だし、こんなことでフロイドは頼れない。第一連絡手段は無いし、門倉さん以外はあの携帯以外からの直通の通信はできない。
    頼れる友人や親兄弟もいないから、選べる一番安全な経路はそれだった。
    はあ、と南方さんが頭をガリガリと掻く。運転席と繋がる車載マイクをオンにしたかと思えば、「うちに行ってくれ」とだけ言ってまたオフにした。


    セリフの通りたどり着いたのは南方さんの家だった。
    「立会人としてどうなんですか、ありがたいですけど」
    玄関で立ったままの僕を南方さんは手招いた。ジャケットを脱ぎながら靴も脱いで、招かれるままにお邪魔する。
    「おまわりさんとして放置はできないでしょう。あ、手洗うならどうぞ」
    お借りした水道から出る水が暖かく感じる。外がどれほど寒かったのかそこでようやく気付いた。
    「これは…きょう泊って行っていい感じですか?」
    「お屋形様も門倉もあと七日は戻りません。どこかに頼りがあるなら私の携帯で連絡でも」
    「それは…ないですけど…頼りとか…」
    なるとすれば南方さん経由で創一さんに連絡を入れるくらいだけど、これは僕がした勝負で僕が負けた事なので最初から選択肢にない。勿論、そこを経由して貘さんに連絡すると言うのも。
    「…凍死やら、身元不明やらっていうのは厄介なんですよ。一応探さないといけないし、情報の保存もあるし、始末も」
    「はい…」
    コーヒーメーカーのランプが青になる。料理用なのだろう砂糖と一緒にカップが差し出されひと匙拝借してコーヒーに落とした。
    「大人しく世話になってくれれば、おまわりさんもあなたの男も保護者も安心てなもんだと思いますが」
    手に持ったカップは熱い。普段ならこんなに持っていられないのに手の表面があまりにも冷たいからじっと持っていても平気になってしまっている。
    「じゃあ、お言葉に甘えて…」
    「よかった。これで明日も裏社会で生きていけますよ、私は」
    笑う南方さんに肩の力が抜けた。当座の宿を得たからなのか、自分を心配してくれていると頭が理解したからなのか、「自分のためにしたこと」という建前に安心できたからなのか。
    「なんか、親戚のおじさんとか居たらこんなかんじなんですかね」
    「まあ、歳の頃はそれくらいでしょうね。でもそれ門倉には言わんでやってくださいよ」
    「?、どうして」
    「この間、”ワシら並んだらまるで援交じゃった”って言ってたもので」
    「へへ、え?そんな事言うんですかあの人」
    「言いますよ。まあまだ体力が持つなら寝酒の肴にでも」
    「いただきます」
    こんなにシンプルな人からの好意を受けたのはいつぶりだろうか。適度な距離感が心地いい。
    運ぶくらいはします、と南方が取り出して来たつまみとグラスを受け取り、暖かい部屋に梶は腰を下ろした。

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    トーナ

    DONE初門梶SSですが、門倉さんあまり出ません。すいません…。

    裏ver書きたい。
    僕の秘密

     門倉さんに秘密にしていることがある。それは門倉さんがいない間に僕が彼のシャツを独り占めしてることだ。僕と門倉さんは恋人同士で今でもどうしてこの関係になったのかもわからない。きっかけはたぶん、プロトポロスでの出来事だろうと踏んでいる。お付き合いしてだいぶ経った頃に彼がある日仕事が長引いてなかなか会えなくて寂しくなった僕は洗濯物に混ざっているシャツを見つけた。シャツから香る門倉さんの匂い。たばこと体臭。最後に嗅いだのはいつだったか。そしてふと思いついて、実行すると寂しさが解消された。
     
     その日も僕はあることを始めた。洗濯せずに取っておいた門倉さんのシャツを抱きしめながら眠る。彼と一緒に暮らすようになって、いつしか彼の存在がそばにあるのが当たり前になっていた。だから、会えない間はそばにいないと僕は胸に穴が開いて落ち着けなくなってしまう。
    「…門倉さん」
    僕より大きいそのシャツから嗅ぎ慣れた匂いがした。その匂いがあるだけで門倉さんがいるんだと錯覚できる。だから、よく眠れるようになる。胸のあたりに顔を埋める。今は薄っぺらいシャツだけの感触しかないけど、ここには彼のたくましく厚い 1001

    トーナ

    MOURNING一度は書いてみたかった門梶♀信号が赤から青に切り替わったのを機に、止めていたハンドルを動かす。時刻はすでに終電を迎える頃だった。遅くまでかかった残業を思うとはらわたが煮え繰り返る。同僚の立会人のせいで事後処理が遅れたのだ。必ず、この恨みは後日に晴らすとして。
    『門倉さん?』
    「聞こえていますよ。大丈夫です」
    『なんだか、機嫌悪くないですか?』
    「そりゃあ、どっかのバカのせいで仕事する羽目になりましたからね。せっかくの半休が台無しです」
    スピーカーホンにしたスマホから漏れる彼女のの乾いた笑い声がした。おそらく梶の脳裏には急務の報せを受けて凶相になった私を思い浮かべたかもしれない。
    『本当に、お疲れ様です…。門倉さんにしか出来ないことだから、仕方ないですよ』
    梶の宥めるような声がささくれ立った私を落ち着かせてくれる。
    「梶、眠くないん?」
    『んん…、もう少しだけ』
    「また薄着のままでいたら、あかんよ」
    『でも、かどくらさんとはなして、いたい…』
    どこか力が入らなくなってきてる彼女の声に眉をひそめる。共に過ごせなかった半日を名残惜しむのはいいが、前科があることを忘れてはいまいか。
    「明日、無理やり休みもぎ取ったから、い 1173