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    L.R.

    @L_R_94

    20↑字書き。94のノスをメインにウスノスCP未満を好んでいます。
    推しを弱らせたり流血させたりするのが好きです。
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    L.R.

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    Δ軸。隊長ルク視点ぽい、退治人で人間ウスと本部長ダンピノスくんの何か。
    私の萌えの為だけの文章だからもう全部見逃して。

     鋭い爪が刃のごとく迫る。知性のある吸血鬼なのだろう。こちらの司令塔がドラルクだと気付き狙ったか。ドラルクはそれをスローモーションのように捉えていた。ダンピールの五感は人間のそれよりも鋭い。その前提を差し引いても妙にゆったりと流れる景色に、極限状態下で感覚が鋭くなるって本当だったんだなぁと、ドラルクは他人事のように思った。遠く、自分の名を叫ぶ声を聞いた。嫌味垂れで気障でクールぶった癇癪持ちの、嫌なところを挙げれば一晩では足らない我が師匠、ノースディン。こちらに手を伸ばし、地を蹴るのが見えた。同じくダンピールである彼の身体能力には不本意ながら全幅の信頼を置いているが、おそらくは間に合わない。
     ああ、いつもの取り澄ました表情はどこへやったんです。自慢の整ったご尊顔が台無しですよ。いつもなら淀みなく口から零れる言葉も、今は時が足りない。あれで存外愛の深い男だ。目の前で弟子に血を流させたら酷く落ち込むだろう。ダウナーになった彼の処理をするのは面倒だというのに。
     そう思う内にも、もう爪が眼前まで迫っていた。吸血鬼が歪に嗤う。快楽殺人鬼か、悪趣味な。ドラルクは諦めて、直ぐに来るであろう痛みに耐えようとぎゅっと目を瞑った。その時。
     風が吹き抜けた。
     ノースディンが駆け寄る逆側から、それ以上の速度で迫った風。黒と白を纏うそれは、手にした銀色の槍を迷いなく振るった。切っ先が、ドラルクに迫った爪を身体ごと薙ぎ払う。吸血鬼の身体は声を上げる間もなく塵となって崩れ去った。穂先に付いた塵を気に留めることなく、警戒するように周囲を睥睨していたそれは、一先ずの脅威が去ったと判断して振り返り、
    「ドラルクぅぅぅぅ!!」
     全身でドラルクを抱き締めた。
    「お父様、苦しいです。骨が折れます」
    「あっごめんね力加減が……エーン私は側溝に捨てられた使い捨てのマスク」
    「今そんなことやってる場合じゃないので」
     先程の場を支配するような威圧感はどこへやら。安堵、歓喜、消沈、くるくると表情を変えた男は最終的にドラルクに窘められ、前髪をしおしおと萎れさせた。
     ドラルクにお父様と呼ばれたこの男、現役退治人のドラウスである。漆黒のロングコートに身を包み白髪を揺らす、退治人としては老齢と言っていい年頃である。銀の槍一本で吸血鬼を屠る武骨なスタイルと、人間でありながら血液錠剤を服用したダンピールさえ優に凌ぐ身体能力で、かつては最強の名を恣に、吸血鬼からすらも恐れられた退治人。後進に道を譲るよと言って退治人達の雑用係のような立場に落ち着いて久しく、その真の強さを知るものも今やドラルクやノースディンといった一部の者になった。
    「正直防戦一方で、どうしたものかと思いあぐねていたんです。でもお父様がいらしたなら攻勢に出られます」
    「任せてドラルク! 秒殺で終わらせてあげるよ!」
     息子に頼られて元気よく胸を張るドラウス。相変わらずおチョロい。我が父ながら扱いやすくて助かる。秒殺は流石に言い過ぎだが、それがあながち冗談にもなり切らないのがこの男の怖いところなのだ。
    「相変わらず緊張感のない奴だな」
     一歩引いて親子の会話を見守っていたノースディンが口を挟んだ。先程の必死の表情は幻覚だったのかと思うほど、その金眼にはいつもの冷ややかさが戻っている。取り繕うのがお得意なことで。心配したとか、安心したとか、素直に口に出せる男であったなら愛を返せただろうか。ドラルクは時々有り得ない仮定を想う。
    「やあノース、久しいな。君が現場に出るなんて珍しいじゃないか」
    「これほどの大規模侵攻は類を見ない。伝令を待っていては被害を拡大させる」
     ずっと遠慮がちに親子の会話を盗み聞いていた周囲が、いよいよ訝しげにドラウスを見る。無理もないだろう。部下にも上層部にも誰にも阿らず、ともすれば孤立していると見られがちなノースディンを愛称で呼び、いかにも親しげに話しかける。天地がひっくり返っても、吸対内では見れぬ光景だ。
     ノースディンは吸血鬼の大群と、それを相手に防戦一方の前線に目を向けたまま、ドラルクに言った。
    「ドラルク隊長、全隊員を下がらせろ」
    「それは……、いや、分かりました」
    「ドラウス、暴れてこい」
    「え、でも……いいのかい?」
     ドラウスは周囲の隊員や退治人を見回して気遣わしげに言った。吸対が指揮している場で好き勝手暴れて良いのか、ということらしかった。加えて退治人稼業というのは人気商売の面もある。互いの仕事や縄張りを荒らさないという不文律があるのだ。
    「構わん。この場の命令系統のトップは私だ」
    「乱戦になります。こういう時は、周りを気遣うより好きに暴れる方が強いでしょう、お父様は」
     息子と親友に推され、ドラウスは困ったように笑いながら、そう言うことなら……と槍を手に進み出る。一見頼りなく見えるその姿に周囲は眉を顰める。その三白眼に楽し気な、捕食者の眼光が宿ったことに気付くのは、この場においては二人だけ。
    「借りるぞ」
     一言断って、ノースディンはドラルクが腰に佩いた鞘から刀を抜き払った。血液錠剤を噛み砕く音が聞こえて、自身が佩いていた刀とを両手に提げて歩み出る。
    「おや、本部長殿。貴男が前線に?」
    「あいつに追いつけるのは私くらいだろう。それに、ストッパーが必要だ。あいつ一人ではやりすぎる。取りこぼしはそちらで処理しろ」
     無いとは思うがな。最後に零した一言が余計だとドラルクは苦虫を噛み潰したような顔をする。その言葉を否定できないから、余計に腹が立つのだ。
     溜息を吐いて、ドラルクは前線から下げられた隊員と退治人達に向き直る。あの二人の本気を知らぬ若造達に。
    「さあ諸君、お勉強だ。よく見ておきたまえ。ふんぞり返って指示を飛ばすだけのお偉いさまと、老いぼれた七光りだと君達が揶揄する者達の、本当の実力をな」

     吸血鬼の群れに対峙する二人は、物量差も素知らぬ涼しい顔で武器を構える。
    「腕は鈍ってないだろうな、ノース」
    「愚問だな。私を誰だと思っている」
     捕食者と被捕食者が入れ替わる。蹂躙が始まった。


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