召し上がれ「すっごくいい感じだった」
「何が?」
シュウがそう答えて目の前にある大きなバーガーに小さな口でかぶりつく。シュウと出かけて、たまたまふらっと入ったバーガー店は少し雑だが、味もよく何より早かった。そして何より持ってきてくれた子がかわいかった。
「さっきのサーブしてくれた女の子、スタイルも抜群だし、胸もいーかんじの大きさだった、そう思わない?」
「確かに、ミスタは好きそう」
そう言ってシュウはグラスの縁に乗っかったオレンジをちびちびと齧り始める、少し興味のなさげな顔が嫉妬から来るものだったらいいのに、なんて考えてしまう俺はきっとシュウから言わせれば『まだまだ子供』なのだろう。
「結構大事だと思わない?あんな可愛いお姉さんが笑顔で運んできてくれるなら不味いものだっておいしくなるよね〜」
自分もグラスのオレンジに手を伸ばして柔く歯を立てると溢れてくる甘酸っぱい果汁に奥歯がぎゅう、と締め付けられるような感覚。シュウもそんな顔をしているのだろうかと顔を合わせてみると、予想に反してにやにや、と意地の悪い笑みを浮かべていた。
「やっとわかった?」
「ん?なにが」
「僕がミスタが作ったベタベタの具が混ざりきってない炒飯も、焦げたソテーも、塩っけが多すぎたパスタも割と美味しく食べれる理由」
一瞬バカにされているだけかと思い顔を顰めたが、すぐにそうじゃないことに気づいて、恥ずかしいことを言われていると理解した瞬間、じわじわと首筋から熱くなる。なんだよこれ、シュウ!聞いてないんだけど!
「……シュウそれ、遠回しにdisってるでしょ」
「あは、バレた?」
「その顔、俺をからかう時の顔してる」
目を細めて片方の口角だけニンマリ上げて頬杖をついたその格好、何度も見てきた俺をからかう時の定番の格好。見すぎて腹たってきた絶対後で泣かすからな。
「ついでにもっと料理の腕上げてくれたら、もっと美味しく食べてあげるんだけどなぁ」
「……善処シマス」
「ふふ、楽しみしてマース」
やっぱ馬鹿にされてるし、少しムカつく。
でも、あぁ、やっぱりシュウの笑った顔が好きだなぁ、と改めて思う。
そんな自分に呆れながらシュウの手を引いて、その手にあるオレンジを口でもぎ取ってやった。
その様子をみて一瞬きょとん、としたシュウが笑い転げるまであと数秒。