アイスが溶けるまでにスイパラネタ?
元々、私達は互いに認識が甘かった。
グループ総裁の娘とグループトップクラスの御子息達、そして総裁娘の花婿(女)
もう少しデリカシー持ちなさい。女として見なさいと言うと、「え、スレッタは兎も角、お前はなぁ…」「ねぇ…」と言った前髪ピンクと氷の君(笑)の頭を叩いておいた。
(シャディクについては死にそうな顔をしてた。コイツ過去の恋愛引き摺り過ぎでしょ。)
何を言いたいかと言うと、互いに兄弟とか姉妹とかそんな身内に感じていたのだ。そのままで行くと思っていたのだ。でも関係が変わるのは仕方ない。むしろ、悪くならないなら問題無い。
悪くならないなら。
最初は目を合わせても逸らす事が増えた気がした。2人の目線が合えば逸らす。しかも、逸らす人間がおかしい。絶対アンタは逸らさない方でしょ。てか何その顔、耳赤い。なんで?え、まさか???
そうやって避けられて(?)いると段々オロオロしてくる金髪のっぽ優男。でも見てて段々分かってきた。コレアレだわ、私が中々好意を出してくれないからってイライラしてたら、不安そうに見せてた態度と同じだわ。
兎も角だ、そう関係が変わったらバレるのは当たり前だと思う。だから報告しろ。勝手に始めるな。
いや、まぁ、そのまま進み幸せになるなら良い。進めば2つ。アンタ達の幸せと私達の幸せが手に入ればいい。逃げて気まずさを手に入れるな。マイナスでしょうが。
誰が始めたか分からないけど、私達5人の仲は悪くない。だから、正直言えば同性異性間で距離が近い。そんな人間達がスイーツパラダイスに来ている。所詮シェアも起きるし食べさせ合い、つまりは『あーん』させ合いっこが発生する。
最も、シャディクにしたりさせたりするとガチ恋勢が発狂するから、命が惜しくてやらない。
そんな中だ。いつもの様に『一口ちょうだい』が始まった。女子がするのは良しとしよう。正直スレッタがグエルやエラン4号(兄弟の4番目と聞くが嘘だと思う)に『あーん』されたり、ましてやしてあげるのはじゃイラッとする。私の花婿なのに。
1度問い詰めたら2人とも「ちゃんと告白して玉砕したから割り切っている。スレッタ・マーキュリーが幸せなら良い」との事。もちろん許した。同じだけヤツもハッキリしてると良いんだけどね。
話が逸れたが、つまりシャディクを除いた4人はシェアするのに抵抗が無い。男女間でするのにも抵抗が無くなった。スレッタは単純に美味しい物を共有したいだけなのだろう。グエルも似たような物で弟妹に食べさせたいのだろう。エランは逆に何も考えていない気がする。ちなみに私は勿体ないから。食べ切れないんだから食べて貰わないと困るのよ。
そんな中、本人もして貰えない理由は察していると思うが、「ずるいな〜。俺にもちょーだい?」と言われ全員が「何言ってんの?」となるはずだった。
今回は違った。
「……ん」
差し出されたスプーンに空気が静まり返った気がした。その主は小さなスプーンにクリームブリュレを掬って差し出してた。いつも皺になっている眉間はそのまま。口も一文字に結ばれている。
目線は最初こそ相手を見ていたが、沈黙が続くと下に落ちた。
それでもスプーンが下げられなかったのは。
「ぇ…」
思わず漏れたような声。それが驚きの為に漏れた事は誰もが感じた。
「…ぁ、悪ぃ」
それを拒絶と感じたのだろう、スプーンの先を己に向け、口に咥えた。そのまま早くと聞こえそうな顔で掬ってた方と違うクリームブリュレのカップを相手の皿に置く。その後は顔を一切上げなかった。
「ぁ、ありがとう」
貰った当人はさぞ喜ばしいだろう。どう見てもチラチラと自分に渡した相手を見て、機嫌を損ねてないか不安そうにしている。だがその反面、当人はあからさまに落胆の表情を浮かべている。それに気付かないのは、顔を上げない人間位だろう。
「「「…」」」
要は、気まずい。他所でやって欲しかった。
花婿がライブラリで見た奴だと目をキラキラさせてるのも。氷の君が我関せずとしているのも。
自分が行儀悪くケーキにフォークを荒々しく突き刺し、食らいついたのも。仕方ない程度に気まずいのだ。