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    伊那弥彪

    ラクガキと二次創作文物置。支部にアップしたりする。

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    伊那弥彪

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    支部に投稿した妓鬼殺隊ifうぎゅ

    ##隊士化if

    何だかんだ仲良しです鬼殺隊音柱・宇髄天元は今、眉間にシワを寄せていた。
    それは、隣の男から聞こえてくる、ガリガリッと肌を引っ掻く音と、「妬ましい…妬ましいなぁぁ…」というブツブツとつぶやく声が原因だった。

    「オイッ謝花。お前久しぶりに町に出て来たんだからもうちょっと楽しめよッ」

    「あ"ぁッ!?」

    宇髄に「謝花」と呼ばれた男、宇髄と同じく鬼殺隊に属する謝花妓夫太郎は、宇髄の言葉に苛立ちの声を上げる。己より上背のある宇髄を見上げ、ギロリと睨みつける妓夫太郎。

    「だから、久しぶりに町に出て来たんだ。もう少し派手に楽しく…」

    「お前が無理矢理連れて来たんだろうがぁぁぁあッ」

    昼食を町で取ろうとした宇髄がちょうど見かけたのが、任務帰りの妓夫太郎だった。「昼飯奢ってやるから一緒に来いよ」と誘うも、「腹減ってねぇからいい」と即断られたが、そのまま妓夫太郎をヒョイッと肩に担ぎ上げ町まで連れ出してきて今に至る。妓夫太郎の意思を完全に無視した強制連行である。
    宇髄が連れてきた町は、大勢の人間で賑わい、辺り一帯から人々の楽しげな声が聞こえてきていた。

    「クソッ…だから町は嫌いなんだよ…どいつもこいつもキラキラした顔しやがって……」

    「特に今日は祭りだからな。そりゃキラッキラド派手に輝くさ」

    「あ"ぁぁぁ〜ッ」

    奇声に近い声を上げた後に、左手でガリガリッと自分の目元を掻きながら「妬ましい妬ましい妬ましいぃぃぃッ」と呪いの言葉のようにブツブツとつぶやく妓夫太郎。そんな妓夫太郎に、宇髄はハァ…と深く溜息をつく。

    「お前なぁ。周りから見りゃお前だって妬ましい存在なんだぞ?」

    「はぁッ?何処がだよぉぉッ」

    不機嫌丸出しな表情で、「俺みたいな醜男そうそういねぇだろうがっ」と自分をどこまでも卑下してしまう妓夫太郎に、宇髄はフッと口元に笑みを浮かべて、

    「こんな派手で華やかな色男が隣にいるんだぜ!妬ましいわけがねぇだろッ!」

    ドヤァッ!と自信に満ちた笑顔で言い放つ。
    そんな宇髄に対して妓夫太郎は…

    「………」

    しばらく無言で固まってしまった。

    「ん?どうし…」

    宇髄が妓夫太郎の無反応に首を傾げ、問いかけようとした時、

    「お前ッ、本っっ当に妬ましいなぁぁあッ!いつもいつも自信に満ち溢れててよぉぉぉおッ!しかもその自信に負けず劣らず色男なのが更に癪に触るんだよなぁぁぁあッ!!」

    町の人間への妬ましさよりも、宇髄への妬ましさが勝った妓夫太郎。声を荒げ、先程よりも強く顔をガリガリガリッと引っ掻き、引っ掻いた痕から血を流してしまう。

    「オイ止めろ!血ぃ出てんぞ!!」

    出血には流石の宇髄も慌てだし、顔を引っ掻き続けている妓夫太郎の左手を掴んで止めさせる。

    「離せクソ色男!!」

    「離さねぇよッ」

    腕を振り払おうとする妓夫太郎を力づくでギュッと抱きしめる宇髄。己の胸に妓夫太郎の顔を埋めさせ、ぽふぽふっと妓夫太郎の頭を優しく叩く。

    「オイコラッ!離せぇぇえッ!」

    「お前が落ち着くまで離さねぇっての」

    宇髄の胸の中で暴れる妓夫太郎だが、力では宇髄に勝てず、ただもがくだけとなってしまう。
    そのうち周りから「クスクス」「仲良いわねぇ」という笑う声が聞こえてきて、宇髄への怒りよりも羞恥心が増してきた妓夫太郎。「クソッ」と小さく吐き捨て、抵抗を止めるのだった。

    「落ち着いたか?」

    「落ち着いた…落ち着いたから離せぇ」

    妓夫太郎の言葉を受け、宇髄は最後に頭をぽふっと叩いて妓夫太郎の身体を解放する。解放の際、殴ってこないか身構えたが、それは杞憂に終わった。
    解放された妓夫太郎は、先程の羞恥心から頬を微かに赤らめ、今度は耳をボリボリと掻きはじめる。

    「だから、引っ掻くなって言ってるだろ」

    「昔っからの癖なんだよ…しょうがねぇだろうがぁぁあ」

    「たくっ」

    妓夫太郎の言い分に宇髄は少し呆れ気味な表情を浮かべた。そして、フゥ…と一呼吸し、妓夫太郎の出血した引掻き傷に優しく触れ、

    「折角の綺麗な顔が傷で台無しじゃねぇか」

    「…は?」

    それは笑いを誘う冗談を言う表情ではなく、真剣で真っ直ぐな表情で告げられた。
    自分の顔が綺麗??と己の見た目に卑屈な妓夫太郎は目を丸くし、宇髄を摩訶不思議な生物でも見るかのような目で見つめ、

    「お前…目が腐ってんのかぁぁあ?」

    「腐ってねぇよ。お前は自分が思っている以上に綺麗な顔してるんだぜ」

    真剣な眼差しで告げてくる宇髄。その眼差しを向ける紫がかった赤色の瞳に自分の顔が映りそうになり、妓夫太郎は思わずフイッと顔を横に逸らす。

    「オイ。何で顔逸らすんだよ」

    「何でもねぇよ…色男の顔をそれ以上近付けんなぁ」

    「何だ?惚れ直したか?」

    「そんなんじゃねぇよ…」

    チッと悔しそうに舌打ちをする妓夫太郎は心に思う。

    (お前の瞳の方がよっぽど綺麗じゃねぇかよ…)

    まるで宝石のような宇髄の瞳に、醜い自分が映るのが耐えれなかった妓夫太郎。「あぁぁぁやっぱ妬ましいぃぃぃ」と今度は右手で頬を掻きはじめる。

    「だから引っ掻くなって言ってるだろ!」

    「うるせぇぇッ!」

    「妓夫太郎君はそんなに俺に抱き締めて欲しいのかなぁ〜?」

    「いきなり名前呼び辞めろよなぁぁあッ」

    「何だ?名前呼びは寝床だけにしろって事か?」

    「ッ〜!」

    流れるように妓夫太郎の耳元へ顔を埋めた宇髄の囁き。それは妓夫太郎にだけ聞こえる低音の落ち着いた声。耳元で聞こえてきたその囁きに妓夫太郎は思わずビクッと身体を震わせ、頬を赤らめてしまう。そんな妓夫太郎の反応に宇髄はクスッと笑い、「もう引っ掻くなよ」と妓夫太郎の傷のない右頬を優しく撫でる。

    「クソがッ…」

    チッと舌打ちをし苛立ちを隠せない妓夫太郎。
    そんな妓夫太郎に対して、宇髄はニッと勝ち誇ったような笑みを浮かべながら「んじゃ飯でも食いにいくかっ」と妓夫太郎の肩を抱き寄せる。
    さらっと自分の肩に置かれた大きく綺麗な手を見つめる妓夫太郎。

    こういう事を涼しい顔で町中でやれるなんてどこまで色男なんだ…
    いつも余裕を見せてくる目の前の色男が妬ましくて、羨ましくて……
    本来なら嫌いな分類なのにそうでなくて…
    身体を許すくらいまでに自分はこの男を…

    認めたくない感情…自分には似合わない感情を、この男に向けている自分に苛立ちを感じる…

    苛立ちからまた顔を引っ掻こうとする妓夫太郎だが、フッと何かを思い付き、ニヤリと口角を上げて笑う。

    「なぁぁ色男ぉ…」

    「ん?何だ?」

    視線を向けた先には、自分を見上げて、まるで子供がイタズラを楽しむような妓夫太郎の笑顔があり、宇髄の胸はドキッと高鳴る。思わず、妓夫太郎を抱き締めてしまいそうになるが、

    「優しい優しい天元様はぁ、俺の代わりに顔を引っ掻かれてくれるよなぁぁ?」

    「……は?」

    宇髄の胸の高鳴りとは裏腹に、妓夫太郎の両手が宇髄の両頬へと迫ってくる。

    「ちょっ!待て!俺の顔引っ掻くつもりか!?」

    「うるせぇぇッ!俺を苛立たせてんのはテメェなんだから、テメェが引っ掻かれるのが筋ってもんだろうがぁぁあ!」

    「アホか!どういう理屈だ!」

    妓夫太郎の顔に傷が付くのは嫌だが、自分の顔に傷が付くのも嫌な宇髄は、迫りくる妓夫太郎の両手を振り払おうとする。だが、今回ばかりは妓夫太郎の動きが早かった。宇髄が振り払う前に、妓夫太郎の10本の指は宇髄の頬に接触し、そして……

    「……ん?」

    頬に伝わってきたのは、ガリガリッと強い刺激ではなく…
    ポリポリッとこそばゆい刺激。
    予想外の刺激に、宇髄は目を丸くし、妓夫太郎を見下ろす。

    「は?……妓夫太郎?」

    「お前の肌本当滑らかだなぁぁ…スベスベで指が滑るみてぇだ」

    「……」

    さっきのニヤリとした笑顔はどこへやら…
    特にこれといった感情もなく、少し感心したような表情で宇髄の頬をポリポリと優しく掻き続ける妓夫太郎。
    最初は傷を付けるくらい強く引っ掻くつもりだったのか、それとも最初からこんな風に優しく戯れるように掻くつもりだったのか…宇髄には見当もつかない。
    だが、これだけはハッキリと分かった。

    (コイツ、本っ当俺の事好きだなッ)

    まぁそれは自分にも言える事なのだが…
    自分の頬をポリポリと優しく掻き続ける妓夫太郎に、宇髄の欲情が沸き立つ。

    (昼飯食ったらぜってぇ抱くッ。真っ昼間とか関係ねぇッ!!)


    その日の夕方……

    とある出会い茶屋で……

    「なぁ。お前、今夜の任務いけそうか?」

    「ふっっざけんな!!テメェのせいで腰が立たねぇわ!!」

    一糸まとわぬ姿で同じ布団に横になっている二人。
    宇髄は汗を垂らしながらも、息を整え余裕の表情で、横向きで枕に肘を付き、隣に横たわる妓夫太郎の肩をぽんぽんと叩いている。
    対して妓夫太郎は、汗だくでゼーハーゼーハーと息を荒げ、うつ向きで枕に顔を埋めながら宇髄を横目で睨みつけていた。その頬は紅潮し、目からは生理的に流れたであろう涙がまだ残っている。

    「悪い。お前があまりにも可愛く誘ってくるもんだから、抑えきれなかったわ」

    「誘ってねぇよ!!」

    (無意識かよあれ…)

    可愛く愛らしい想い人が他の人間にあんな事しないよう願いながら、宇髄はその想い人へ口づけを落とす。

    その可愛い姿は俺だけに見せとけよッ

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