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    伊那弥彪

    ラクガキと二次創作文物置。支部にアップしたりする。

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    伊那弥彪

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    支部に投稿した妓鬼殺隊ifうぎゅ、死ネタ要素あり

    ##隊士化if

    どこまでも取り立てに逝ってやる明るい日差しが差す部屋…昔ながらの日本家屋の座敷。そこには愛する者を抱き締める年老いた姿があった。

    「悪ぃな…もう立つこともできねぇ…」

    老人となっても肉付きの良い体と190を超える長身の宇髄天元は、自身を抱き締めている男の顔へ手を差し伸べる。

    「何でそんな肉付き良いのに俺より先に逝こうとしてんだよぉ…」

    シワの増えた顔をくしゃりと歪め、かつては黒髪だった白髪を風になびかせながら、謝花妓夫太郎は差し伸べられた愛する男の手を取る。

    「そんな顔すんなよ。笑っていてくれ」

    シワが増えても変わらない整った顔に笑みを浮かべ、宇髄は妓夫太郎へ語りかける。

    「色々あったな…俺達の人生…」

    「あぁ…」

    「出会いは最悪だったなぁ」

    「…周りを巻き込む俺にお前がブチギレたっけかぁぁ」

    「そうそう。お前、あん時は荒れてたもんなぁ」

    今は懐かしい出会いの時…鬼が存在した時代に二人は鬼を狩る鬼殺隊として出会った。
    死と隣り合わせの毎日。生きて再会できる事が望めぬ者達もいた中、二人は共に生き抜き、そして絆を深めていった。

    「あの頃はド派手に輝いてたなぁ」

    「…俺にとっちゃぁ、お前と過ごした日々の方が輝いてたけどなぁぁ」

    「おっ。嬉しい事言ってくれるなぁ」

    「ま、お前は違ったみてぇだけどなぁぁ」

    「ハハ。何拗ねてんだよ。俺だってお前と同じだ。俺もお前との日々が最高に輝いていたさ」

    昔の思い出話に花が咲く。
    とても温かく幸せな時間な筈なのに、妓夫太郎の顔は変わらず歪んだまま。
    抱き締めている愛する男の温もりが段々と下がっていく。脈も徐々に弱まり、呼吸も肩でするようになってきている。
    別れの時が近い。
    愛する男の体がそう告げている。

    もう少しだけ長く…
    その体から逃げていく温もりを逃さぬよう、妓夫太郎は宇髄を抱き締める力を強める。

    「…何か変な気分だな」

    「……何が」

    「いつもは俺がお前を抱き締めてたのに最期はお前にこうして抱き締められてる」

    「最期とか言うんじゃねぇよ…馬鹿がぁぁ」

    妓夫太郎の声が震えだす。元々か細い声が更にか細くなり、声を発する事さえもできなくなってしまう。いつの間にか溢れ出ていた涙がボロボロと頬から零れ落ち、その涙は宇髄の頬へと落ちていく。

    「なぁ…笑ってくれよ。頼む」

    笑顔を浮かべながら、しわくちゃの大きな手で妓夫太郎の涙を拭う宇髄。

    「お前の笑った顔見ながら逝きてぇんだ…」

    「ッ…だ、だったら"…わ"らわね"ぇッ…」

    「妓夫太郎…」

    「もっとッ…もっと長くッ生きろよな"ぁぁぁあッ」

    愛する男からの心からの願い…だが、それを叶えられる力は最早宇髄には残っていない…

    「なぁ…聞いてくれ妓夫太郎…」

    表情から笑みを消し、真剣な眼差しで妓夫太郎へ告げる宇髄。その声は段々と弱まり、愛する男へ告げれる最期の好機だと宇髄は確信していた。

    「俺はな…お前と違って地獄に堕ちる」

    宇髄の言葉に、妓夫太郎の赤く腫れた目は見開く。

    「何…言って……」

    「兄弟殺してんだ。閻魔様が許すわけねぇだろ」

    ハハッと眉をひそめながら笑う宇髄を、妓夫太郎は呆然と見つめる。

    「だからな。人を殺してない、オマケに最後まで妹を守り抜いたお前とは、本当にこれが最期かもしれねぇ…」

    願わくば、生まれ変わったその先でも会いたい。
    だが、地獄の刑期を受けるであろう自分は、生まれ変わった妓夫太郎とは会えないかもしれない。
    本当に、これが愛する男との最期の時となる…
    だからこそ…

    「お前の笑った顔を脳裏に焼き付けて地獄に堕ちてぇんだ…」

    段々と固まっていく顔の筋肉を懸命に動かし、宇髄はいつも妓夫太郎に向けていた温かく優しい笑みを浮かべ最期の願いを告げる。

    「ッ……ぁ」

    妓夫太郎の心が騒ぐ。

    愛する男の最期の言葉を受け取るのが怖い…
    受け取ってしまったらそのまま逝ってしまいそうで…
    まだ愛する男と過ごしたい…まだまだ隣にいてほしい……
    だが、この手に感じる愛する男の冷めていく体がそれを許さない…

    現実が、妓夫太郎へ無情にも突き刺さる…

    「ッ……たくっ、しょうがねぇなぁぁあッ」

    ずっと歪めていた表情に、精一杯の笑みを浮かべる妓夫太郎。
    それは、眉をひそめ、涙を流しながらの満面の笑みとは言えないものだったが、宇髄は愛する男の笑顔がようやく見れて、ホッとした表情で目を徐々に閉じていく。

    「妓夫太郎……」

    「あん?」

    その声は、妓夫太郎にしか聞こえない小さな囁き……
    宇髄には話す力は最早残っていない。だが最期にこれだけは…
    愛する妓夫太郎へこれだけは告げて逝きたい…。

    「愛…して……る………」

    途切れ途切れに伝えた言葉を最期に、妓夫太郎の涙を拭っていた宇髄の手は畳へと落ちる…。
    愛する男の体を妓夫太郎は、ギュッと強く抱き締め、何度も埋めたその胸に顔を埋める。
    聞こえていた心音…耳に触れていた吐息…自分を抱き締めていた温もり……
    全てがもう無いその体…

    「ばッ…か…俺はッ…伝えてねぇじゃねぇかッ……」

    冷めていくその胸に涙を零しながら、妓夫太郎は声を押し殺して泣いた。

    涙が枯れようとも泣き続け…

    最期に伝えれなかった事を後悔し…


    「ッ…ぐっ……な、なぁ天元……」

    もう返事をしてくれない愛する男へ語りかける。

    「お前とよぉ…一緒になる時、俺が言った言葉、忘れてねぇよなぁぁ」

    泣き崩した表情に微笑みを浮かべ、妓夫太郎は冷たくなった愛する男の唇に唇を落とし、目を閉じた……



    ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



    「ここは……」 

    宇髄は暗闇に立っていた。四方見渡しても光など見当たらない。

    「…やっぱ地獄だよなぁ」

    ハハッと笑い、髪を掻き上げる宇髄。己の体を見ると、派手な着流しを身に着けた筋肉隆々とした若き頃の体。顔に触れてみてもシワが無く、「これがあの世の特権てか」と死んだにも関わらず、悠々と余裕をもっている。だが、そんな宇髄にも1つだけ心残りがあった。

    「…あいつには辛い想いさせちまったな」

    笑ってくれた…
    自分の為に笑ってくれた愛する男。
    それでもその笑顔は悲しみに満ちていた…。

    最後にあんな辛そうな笑顔をさせるなんて、俺は本当地獄逝きで問題ねぇな…

    生前は散々色男と自負していたのに、最期は愛する者を悲しませるなんて…と、自分の不甲斐なさに呆れフッと笑う宇髄。
    それは宇髄自身に重くのし掛かり、どんな罰でも受けてやると覚悟を決めさせた。

    「つーか、これどっちに進めばいい……」

    「よぉぉ。そこの色男ぉぉ」

    背後から聞こえてきた声に宇髄は固まった。

    この声は…
    いや、そんな筈はない。
    だってアイツはまだ……
    俺の幻聴か…?
    それともこれが俺への罰なのか?

    宇髄の頭にグルグルと色んな考えが浮かぶも、一向に答えが見つからない…。そう宇髄が混乱していると、

    「おぉ〜ぃ。聞こえてねぇのかぁぁあ?」

    聞き覚えのある声が耳元で聞こえ、宇髄は思わず振り返った。
    そこには、黒いうねり毛に、特徴的な痣を顔に持った男……痩せ型の体に紺色の着流しを着た、若かりし頃の……

    自分が愛する男……

    「………は?」

    「おーおー。いい顔するねぇぇ。色男が台無しの間抜け面だぁぁあ」

    ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべ、自身を見上げてくる男に宇髄は今も混乱する。

    「オイオイ。何か言ったらどうなんだよ。感動の再会だぜぇぇ?」

    「おまッ……おまッ………何でここにいんだ!!?」

    宇髄は驚愕しながら目の前にいる男、妓夫太郎の両肩をガシッと掴み、声を荒げる。

    「あ?死んだからに決まってるだろうがぁぁ」

    「は!?死んだ!?いやお前ピンピンしてたじゃねぇか!!もしかしてあっちじゃあれから何年か経ったのか!?」

    「いんや。1日も経ってねぇなぁぁ」

    「んじゃ何でだよ!!!」

    生前の妓夫太郎は痩せてはいたが、特に生命の危険の兆候は無かった。それなのに何故、今ここに…

    「お前がよぉぉ。俺は人殺してねぇからお前と同じ地獄逝きにならねぇって言っただろぉぉ?」

    「え?あ、あぁ。言ったな」

    「だからな。地獄逝きになるように…」

    変わらずニヤニヤと笑みを浮かべている妓夫太郎の口から告げられたのは…

    「殺してきたんだよなぁぁ。自分をよぉぉ」

    「……は」

    宇髄はまるで頭に隕石が落下してきたかのような衝撃を受ける。
    自分を…殺した?
    それはつまり………

    「はあァァァァァァァッ!!!??おまッ、それッ!自殺したって事かぁぁぁッ!!??」

    「そうなるなぁぁ」

    「アホかぁぁぁァァァッ!!!取り残された梅はどうすんだよ!!!」

    「大丈夫だろおぉぉ。あいつには家族いるし、もう良い婆ちゃんなんだからよぉぉ」

    まさか妓夫太郎が自分を追って自殺するとは思ってもいなかった宇髄。妓夫太郎に荒げた大声を上げるも、当の妓夫太郎は余裕綽々といった様子で、宇髄はくらりと目眩がしてきて倒れそうになる。

    「いやッ、梅よりも俺を優先させてくれたのはスゲー嬉しいけどなッ」

    「おう。だったら有難く俺の気持ち受け取ってくれよ」

    「いやだからってな!俺と同じ地獄逝きはだなぁ!」

    お前は真っ当に生きてきた。性格に難はあったが、人を殺めず、人の為に、妹の為にと、自らを犠牲にしてやってきた。そのままならきっと天国へ逝けたであろう人生。それを棒に振ってまでどうして…
    そんな宇髄の疑問に、妓夫太郎はニヤニヤと笑みを浮かべながら答える。

    「俺の名前は何だぁ?」

    「……は?」

    「だぁからぁぁ。俺の名前は何だぁ?」

    「いや、妓夫太郎だろ。何言ってんだお前」

    自分の名前を尋ねてくる妓夫太郎に、目を丸くする宇髄。梅を覚えている事から自分が何者なのかも分かっている筈なのに、名前を尋ねてくる妓夫太郎の意図が分からず困惑する。

    「そうだなぁぁ。俺は「妓夫太郎」だぁぁ。どこまでも取り立てる「妓夫太郎」」

    妓夫太郎……妓夫という遊郭で取り立ての仕事等を受け持つ職種から名付けられた、考えれば考えるほど酷い名前。
    1度だけ…名前を変えるように促した記憶が宇髄の脳裏に蘇る。
    それは、二人で共に歩んでいこうと誓った日。
    もう鬼から取り立てる事もないと、宇髄は名前を変える提案をしたが妓夫太郎は悩む間もなく断った。
    「どうしてだ?」と首を傾げる宇髄に妓夫太郎が告げた言葉は…

    「「俺の心を奪ったお前からはとことん取り立てる。これから先ずっと。何があっても」…そう言っただろぉぉ?」

    妓夫太郎の言葉で、鮮明に蘇るあの瞬間…

    そうだ…
    俺から取り立てるから名前は変えない…これからはお前の妓夫太郎になるって言われて、名前を変えなかったんだ。
    そして俺も、それがコイツらしくてそれを告げてきた時のコイツの笑顔が愛おしくて、そのまま妓夫太郎と呼んで……

    その時の笑顔そのままで、今目の前にいる妓夫太郎は再び、宇髄へ誓う。

    「地獄の果てにだって取り立てについてってやる。俺の名は「妓夫太郎」だからなぁぁ」

    満面の笑みを浮かべる妓夫太郎。それは、ふんわりと温かみのある、妓夫太郎が愛する者だけにしか見せない笑顔。その笑顔は宇髄にとって何よりも輝いて見えた。

    この笑顔が見たかった。愛する男のこの屈託のない笑顔が。
    悲しみに浮かべた笑顔ではなく、心の底からのこの笑顔が。
    この笑顔を絶やさせたくない。
    その為には、きっと…これから先ずっと、例え地獄へ逝こうとも、二人一緒に…

    「……はぁ。たくっ…お前って奴は」

    呆れたような口調ながらも、どこか嬉しそうに微笑む宇髄と、クックックッと喉を鳴らしながら楽しそうに笑う妓夫太郎。

    「ヨッシャァァッ!!こうなったら二人でド派手に地獄巡りといこうじゃねぇか!!!」

    「ヒャハハッそりゃ面白そうだなぁぁッ」

    妓夫太郎の肩を抱き寄せる宇髄。その宇髄に身を寄せて共に歩んでいく妓夫太郎。

    「あぁぁ。そうだそうだぁぁ。言い忘れてたなぁ」

    「ん?」

    「愛してるぜぇぇ天元」

    宇髄を見上げ、笑顔を浮かべながら告げた妓夫太郎。
    それは生前、宇髄の最期に伝えれなかった言葉。妓夫太郎のただ1つの後悔。
    その後悔を晴らし、妓夫太郎はスッキリとした笑顔で宇髄を見つめた。

    「俺も愛してるぜ妓夫太郎。この先ずっと。生まれ変わってもなッ」

    「生まれ変われるかねぇぇ」

    「そん時はそん時だッ」

    「ヒャハハッ良いねぇぇッ行き当たりばったり感があってなぁぁあッ」

    光の差さない暗闇で、二人の男の楽しそうな笑い声がどこまでも響き渡る。

    これから先もずっとその幸せな音は鳴り続けるだろう。

    共に魂が生まれ変わるその時まで。

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