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    伊那弥彪

    ラクガキと二次創作文物置。支部にアップしたりする。

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    伊那弥彪

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    「生まれ変わったら娘でした」軸、オメガバース宇妓、転生パロ、のほほん系

    ##宇妓
    ##短編集
    ##オメガバ
    ##転生パロ

    オメガバ宇髄家短編集【どっちに似てる?】

    「ねぇママ…」
    「どうしたぁ梅ぇ」

    買い物から帰ってきた妓夫太郎を愛娘・梅が浮かない顔をして出迎えた。

    「前、梅が歌が上手なのはパパに似てるからって言ってたよね?」
    「ん。そうだなぁぁ」
    「…絶対ママに似たんだと思う」
    「……へ?」
    「だってパパのハーモニカおかしすぎる」

    遡る事、十数分前…リビングでハーモニカの練習をしていた梅の元に父親の天元がやってきた。

    「お、ハーモニカの練習か?」
    「うん。今度幼稚園で発表会あるの」
    「そっかぁ。思い出すなぁ。パパも高校の時、バンド組んでハーモニカもやってたんだぞ」
    「そうなの?」
    「おう。何なら吹いてみようか?」
    「うん!お願い!」

    梅からハーモニカを受け取り、口を付ける所をハンカチで拭ってから、天元はハーモニカを吹き始めた……その音色は……

    ファーーーーーッ!!!!!

    音色を感じるどころではない音量が梅の耳を劈く…
    その音量で一瞬気が遠くなり、前世まで遡りそうだったところを何とか立ち止まった梅…二度とパパにはハーモニカは渡さないと誓ったのだった。

    「そんな感じだったんだけど…」
    (あんの肺活量お化け!あんだけ教えたのにまだ普通に吹けねぇのかよッ!)

    妓夫太郎が天元にハーモニカの吹き方を教えるのはまた別のお話……。




    ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




    【オバケなんてへっちゃら】

    リビングでテレビを視聴中の天元。どうやら2時間枠のロードショーが今から開始するようなのだが、画面に映し出されたのはおどろおどろしいタイトル画面…それを見た風呂上がりの妓夫太郎は顔をしかめて、

    「ホラーじゃねぇか…梅が怖がっから変えろよなぁ。それか消せ」

    同じく風呂上がりの愛娘・梅に画面を見せないよう抱き込む。そんな妓夫太郎に天元は「はいよー」と了承し、チャンネルを変えようとしたが、

    「梅平気だよ!!何なら一緒に見る!!」

    自信たっぷりの笑顔で妓夫太郎にそう告げると、天元の座るソファーに腰掛け、そのホラーを視聴し始める。

    「梅ぇぇ…泣いても知らねぇぞぉぉ」
    「平気だもん!!」
    「怖かったらパパに抱きつけよー」
    「平気だってば!!」

    頑なにホラーを視聴しようとする愛娘に、妓夫太郎はやれやれと溜息をつき、天元はハハハと笑いながら、その小さな頭を優しく撫でる。

    (大丈夫だもん!前世は鬼だったんだから!!こんな作り物なんて平気に決まってるわ!)

    そう意気込んで意気揚々とホラーを視聴していく梅……そして……

    「おおーい。妓夫太郎〜」
    「んああ?」
    「…梅、泣いちまった」

    ガタガタと震えながら天元に抱きつき涙目となっている梅…そんな梅を抱えて天元は、梅の部屋で寝具の準備をしていた妓夫太郎の元へ引き攣った笑顔でやってきたのだった。そんな2人を見て妓夫太郎は「言わんこっちゃない…」と呆れた表情を浮かべてしまう。

    (な、何であんなに怖いのよぉぉッ!鬼の方が全然マシじゃなぁぁぁいッ!)

    昔よりも進化したホラーに梅はついていけなかった……。

    「梅ぇ、今日1人で寝れ……」
    「ママとパパと一緒に寝るぅぅぅッ!!」
    「うん。そんな気がしたなぁぁ」

    その日は久しぶりに親子3人一緒のベッドで寝ました。




    ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




    【無理難題】

    「なぁ梅…」
    「何パパ」
    「弟か妹…」
    「いらない」

    天元の言葉を最後まで聞かぬうちに返答する梅。愛娘に即答され、天元はガックリと肩を落とす。

    「何でだよ…ついこの前まで赤ちゃん見て「梅も弟か妹欲しい!」言ってたじゃねぇか」
    「…女心は複雑なの!!」
    「ええ……」

    どうやって子供ができるのか知らなかった5歳児梅だったが今は違う。もう少し自分の気持ちが整理つくまでは両親のそういう行いを想像したくない。まだ微かに前世の兄と重ねてしまう母が、この父に組み敷かれる所を想像したくない。そんな難しいお年頃な梅。そんな梅に天元は笑みを浮かべながら「本当、女心はわからねぇなぁ」と梅の頭を優しく頭を撫でる。

    「……じゃ、」
    「ん?」
    「お兄ちゃんが欲しい」
    「……は?」
    「ママにそっくりなカッコよくて強くって優しくて梅の事守ってくれるお兄ちゃんが欲しい!じゃないとダメ!!」
    「ええぇ…それ、パパとママじゃダメなのか?パパとママなら梅に優しくするしちゃんと守っし」
    「お兄ちゃんじゃないと嫌なのぉぉぉ!!」
    「……参ったな」

    愛娘からの無理難題に苦笑してしまう天元。そんな天元を見て梅は、

    (これだけ言ったんだからしばらく作らないでしょ!ふふん!)

    と心の中でほくそ笑むのだった。
    そして、梅とのやり取りを天元は妓夫太郎に報告するのだが、

    「梅なぁ…ママにそっくりな可愛くて強くて優しくて梅の事守ってくれるお兄ちゃんが欲しいってさ」
    「ちょっと待てぇ。ぜってぇ梅は「可愛い」って言ってねぇだろぉぉ」
    「え?いや言ってたぞ??」

    少しだけ天元の主観が混じった内容で伝わってしまったのだった。




    ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




    【好きな色】

    今日は梅が友達と近くの公園に遊びに行っているので、夫婦2人でリビングのソファーで寛ぎ中の宇髄家。

    「そろそろ梅のランドセルの事も考えね?」
    「いやまだ早くねぇかぁぁ?」
    「最近は結構早めに考えてるらしいぞ」
    「マジかぁ」
    「ほら。色々種類あるし、早い者勝ちだぞ?」

    天元のスマホで見させられたランドセルのカタログには色とりどりのランドセル。

    「いやいっぱい有り過ぎて迷うなこれ…」
    「だろ?色もたくさんあるしな」
    「色はピンクで良いんじゃねぇのかぁぁ?梅、昔っからピンクが好きだったからなぁぁ」
    「いやぁ…女心は複雑だから変わってっかもしれねぇぞ」
    「何でそこで急に女心が出てくんだよッ」
    「イテッ」

    天元の口から「女心」と出てきて妓夫太郎は天元の足を蹴ってしまう。天元としては最近梅がやたらと「女心」と言っているのでそれを言ったつもりだったのだが…

    「んだよ…俺が浮気でもしたとか思ったのか?」
    「別にぃぃ」

    視線を反らし、ムスッとした表情となってしまった妓夫太郎。そんな妓夫太郎の顎を天元は指でクイッと自分の方に向けさせ、その唇に己の唇を重ねていく。チュッとリップ音を鳴らしながら愛しい唇を吸い、天元は微笑みを浮かべながら妓夫太郎の瞳を見つめる。

    「俺が浮気するわけねぇだろ?今も昔もお前一筋なんだからよ」
    「……黙れクソイケメン」
    「照れてんの丸分かり」

    悪態をつく妓夫太郎だが、その顔は真っ赤に染まってしまっている。そんな妓夫太郎が愛おしくて天元はクスッと笑い、再び触れるだけのキスを妓夫太郎へ贈る。贈られたキスに妓夫太郎は口を尖らせるも、お返しと言わんばかりに自分からも触れるだけのキスを天元へ贈り、その紅い瞳をジッと見つめる。

    「…そういや水色も良いな」
    「は?」
    「ランドセル」
    「急に話戻したなぁ」
    「お前の目見てたらな。梅と同じ、綺麗な澄んだ空色…俺の好きな色だぜ」
    「んじゃ俺は赤を推すぜぇ。お前の宝石みてぇな綺麗な目と同じ色だぁぁ」
    「意見真っ二つかよ…」

    2人とも好きなお互いの瞳の色を推し合い、クスクスと笑い出す。そして引かれ合うように、互いに唇を重ねていき、舌を絡ませていく……とした時、

    「ただいまー!」

    玄関から天使の声が聞こえてきて、2人は即座に唇を離した。そんな2人のいるリビングへ、2人の天使こと梅がやってくる。

    「梅おかえりー」
    「おかえりぃぃ梅ぇぇ。楽しかったかぁぁ?」
    「うん!」
    「喉渇いてねぇかぁぁ?何か用意しようかぁぁ?」
    「麦茶ー!!」

    梅にそう言われ、妓夫太郎はキッチンへと向かっていく。梅も妓夫太郎の後を追ってキッチンへと行こうとしたが、

    「なぁ梅」
    「ん?」

    天元に呼び止められ、ソファーの近くまで駆け寄ってくる。

    「なぁにパパ」
    「梅は何色が好きなんだ?」
    「え?急に何ー?」
    「何でも良いだろー」

    ニコニコと聞いてくる天元に梅は「うーん」と少し考え込み、そして、

    「紫!」
    「え?」
    「へ?」

    梅の口から意外な色が出てきて、ソファーに座る天元もキッチンから麦茶を持ってきた妓夫太郎も目を丸くした。そんな2人に梅は目をキラキラとさせ、

    「紫ってね!青と赤が混ざった色なんだからね!ママとパパが混ざった色だもの!だから1番好き!!」

    と告げてくれた。胸を張って、ふふんっと何故か自慢気になっている愛娘を見て、2人は……

    (俺らの娘、天使過ぎね!!?)

    と思いが重なる。
    そして、梅のランドセルが紫色となったのは言うまでもない。
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