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    伊那弥彪

    ラクガキと二次創作文物置。支部にアップしたりする。

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    伊那弥彪

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    原作軸宇妓、オメガバース、超ご都合主義、何でも許せる方向け

    ##宇妓
    ##柱鬼
    ##オメガバ

    運命の番は鬼だった運命の番は鬼だった…

    鬼殺隊音柱・宇髄天元はアルファ性である。アルファ・ベータ・オメガの第二の性の情報が日本に伝わったのは開国してから数年後の事で、今の日本では既に常識の範囲であった。
    そんな中、アルファの宇髄はまことしやかに噂されていた"運命の番"という存在に出くわしてしまった。それも戦火の中で……

    「ッ、ぁっ…く、クソぉぉ…ッ何で今頃ッ…!」

    上弦の陸・妓夫太郎との熾烈な戦いの最中、劣勢だった宇髄に好機が訪れた。突然妓夫太郎が自分の身体を抱き締め、悶え苦しみだしたのだ。上弦の陸は兄妹二人で一つの鬼…どちらの頸も斬らねば滅殺できない。だが、この兄・妓夫太郎の頸さえ斬れば後は簡単だ。宇髄と妹・堕姫には歴然とした力の差があるからだ。千載一遇の好機…逃すわけにはいかないと、宇髄は地べたに蹲る妓夫太郎の頸へ刃を向けた…だが、

    「うッ!」

    宇髄は異変に気付いた。妓夫太郎から発せられている甘い香り…性的興奮を刺激してくるこの匂いは…

    (オメガの誘引香じゃねぇか!)

    オメガの誘引香…学術名でフェロモン。それは、オメガが発情期に発する強力な催淫効果のある匂いで、特にアルファは自我が保てなくなる程性的興奮を刺激されてしまうものである。そのフェロモンにより、互いにその気がなくとも性交に至ってしまう事態が発生してしまう為、通常なら発情期を迎えたオメガは家に引き篭もるか、抑制剤を飲んでフェロモンを抑える等対策を行うのだが、鬼である妓夫太郎がそんな事をしている筈もなく…妓夫太郎からはフェロモンがほとばしり、その匂いはアルファである宇髄に纏わりついてくる。

    (大丈夫だ!抑制剤は飲んでる!誘引香に俺が負ける筈がねぇ!!)

    オメガにフェロモンの抑制剤があるように、アルファにもフェロモンに対する性的興奮を抑える薬は存在する。鬼殺隊という生と死隣り合わせの環境に身を置く宇髄は特に強力な抑制剤を服用して、如何なる状況にも対応できるよう対策していた。それは今も同じ…必ずこの頸を斬る!そう意気込むが、心臓はドクンッと激しく高鳴り、身体は何故か熱く滾っていく。

    (何でだ!?今までオメガの発情期には何回か出くわしたが、誘引香は全部弾き飛ばしてきたじゃねぇか!なのに何でコイツのはッ…!)

    欲しい頸は目の前…すぐに斬り落とせる筈のその頸を斬り落とす事ができない…身体が拒絶している?コイツの頸を斬る事を?何故…?
    困惑の渦が巻く宇髄の脳裏に、あの噂が過ぎった。

    『"運命の番"には抑制剤は効かないらしい。しかもそのオメガの誘引香を嗅ぐと、身体が本能的に"運命の番"だと理解し、アルファはその番を守ろうとする』

    「いや、ふざけんなぁぁぁぁぁッ!!」

    アルファとしての本能が自分を邪魔している。それが非常に腹立たしくて、宇髄は思わず声に出して叫んでしまう。その叫び声に、蹲っていた妓夫太郎は顔を上げ視線を宇髄へと向けてきた。その顔は発情により紅潮し、発情の苦しさから涙を瞼に溜めては瞳を潤ませ、ハァハァと熱い息を吐いているという、まるで情事中を思わせる妖艶なものだった。

    「ッ〜!(治まれ!治まれ俺ぇぇぇぇッ!!)」

    明らかに自分は欲情している。目の前の宿敵に。こんな時、鬼殺隊最強の男悲鳴嶼ならお経でも唱えて心落ち着かせんのかなぁ!等、よく分からない事を考え始める宇髄。そうでもしないと、目の前の鬼を襲ってしまうと自覚しているからだ。

    (あ〜!確か不死川はおはぎが好きで!伊黒は甘露寺が好きで!!冨岡はえ〜と…なんだっけか…あ!鮭大根!)

    最早何でも良いので、劣情とは関係のない事を瞼をぎゅっと閉じて思い浮かべ己を落ち着かせていく宇髄。元々感情を殺す事を生業とした忍びであった為か、精神を落ち着かせるのは得意だった。そのおかげで段々と冷静さを取り戻し、身体も動くようになってきた事を感じた宇髄は、瞼を開き、妓夫太郎へと鋭い視線を向けた。

    (いける!今ならその頸を!!)

    狙うは頸一点…骨の浮き出たその頸へ視線を向けて、宇髄は動き出す…
    緑髪の合間から見える項…そこに……

    がぶり……

    「ひやぁぁああッ!」

    妓夫太郎の甲高い声が、吉原に響いた……


    それから数ヶ月が過ぎ、宇髄は変わらず鬼殺隊の音柱として活動していた。そして今日は久しぶりに我が家である屋敷へと帰って来たのだった。

    「天元様、おかえりなさいませ」
    「ただいま。俺の居ねぇ間何も問題なかったか?」
    「ええ。特に何も」

    宇髄の嫁の一人である雛鶴が宇髄を出迎え、宇髄の留守の間何事も無かった事を笑みを浮かべて報告する。それを聞いた宇髄は「そうか」と答え、靴を脱いで屋敷に上がり、自身の部屋へと向かっていく。

    「今夜はゆっくり休めそうだ」
    「そうですか。なら部屋着の準備をいたしますね」

    宇髄の言葉を受けて、雛鶴は宇髄の部屋着を準備しようとタンスを開ける。だが、

    「あら?」
    「どうした?」
    「それが、その…天元様の部屋着が一着も無くて…」
    「は?」
    「部屋着だけじゃなくて、タンスに仕舞っておいた天元様の衣類がゴッソリと…」

    もぬけの殻となった宇髄のタンスに雛鶴は困惑する。泥棒でも入ったのかと心配し、くノ一である自分たちに気付かれずに盗み出す等どれ程の手練だろうかと宇髄に相談するが、宇髄は「あ〜…」と何か心当たりのある表情を浮かべていた。

    「安心しろ。犯人分かってっから」
    「え?」
    「後は俺に任せとけ。夕飯の準備頼む」

    そう告げて、宇髄は隊服のまま、ある部屋へと向かっていった。その部屋の前まで来て、宇髄は「入るぞ」と告げ、襖を開ける。そこに居たのは…

    「すぅ…すぅ…」

    宇髄の部屋着その他を無造作に積み上げ、その中心で寝息を立てながら熟睡している黒髪の妓夫太郎だった。宇髄が与えた紺色の着流しに身を包み、背を丸めては、宇髄の部屋着をぎゅっと握り締めている妓夫太郎…そんな妓夫太郎の姿に宇髄は手で目を覆って俯いてしまう…

    (可愛過ぎんだろッ、チクショーッ!)

    あの日…妓夫太郎の項を直視してしまった宇髄はアルファの本能を抑える事ができず、その項に歯を立てて噛み付いてしまった。それは『番の契り』。その時から宇髄と妓夫太郎は番となったのだ。妓夫太郎に変化が見えたのはその時からだった。まず瞳から『上弦』『陸』の文字が消え、無惨の呪いから解放された。それでもまだ鬼であった妓夫太郎だが、宇髄との番が成立した為か、宇髄に対して悪態はつくものの敵意を向ける事は無くなり、そのまま宇髄の屋敷で共に暮らす事となった。それからは徐々に人間の姿へと変わっていき、今ではすっかり普通の人間として暮らしている。そしてそんな妓夫太郎を宇髄は溺愛し、大切な者として接していた。

    (気持ちよさそうに寝てんのを起こすのは気が引けんな)

    己の衣類の中で熟睡している妓夫太郎の側に座り、宇髄は妓夫太郎の頬を指で優しく撫でる。その感触に妓夫太郎は「んんっ…」と身じろいでは、握り締めている宇髄の部屋着に顔を埋めていく。

    (ダメだ…可愛過ぎて抱き締めてぇッ)

    妓夫太郎の仕草一つ一つが宇髄の心に突き刺さり、宇髄は己の欲情を何とかギリギリで抑え込む。
    そんな悶々としながら妓夫太郎を見つめていると、

    「お兄ちゃーん!大福貰ってきた……って天元!アンタお兄ちゃんに何してんのよ!!」
    「来たな妹…」

    艶のある白髪を揺らしながら、花柄の着物に身を包んだ人間の堕姫…基、梅が二つの大福を持って部屋にやって来た。

    「つかんな大声出すなよ。妓夫太郎寝てんだぞ」
    「まさかっ、寝てるお兄ちゃんを襲うつもりだったんじゃッ…!」
    「お前には俺がどんな人間に見えてんだコラ」
    「お兄ちゃんを無理矢理番にした強姦魔」
    「強姦してねぇわ。営みはいつも合意だわ」
    「番にしたのは無理矢理じゃない!!」
    「不可抗力だわ。運命の番の結び付き甘く見んな」

    『運命の番の結び付き』…自分も甘く見ていた。まさか鬼を人間に戻す程のものとは…。これには鬼舞辻無惨も驚愕しただろうな…と宇髄は今の自分たちの状況を感慨深く思い、妓夫太郎へ視線を移していく。

    「んッ…んん〜……」

    宇髄と梅の会話が聞こえたのか、妓夫太郎は眠りから覚め、薄っすらと瞼を開けて身体を起こし、寝ぼけ眼で宇髄へと視線を向けた。

    「よう。よく寝れたか?」
    「……?あり?天元の幻覚が見えんなぁぁ」

    宇髄が任務から帰って来ていると知らない妓夫太郎は、自身に微笑みを向ける宇髄を幻覚だと思い込み、目をゴシゴシと擦っていく。そんな寝惚けた妓夫太郎が愛おしくて宇髄は我慢ができずに、ぎゅっと抱き締めた。

    「これが幻覚に思えるか?」

    落ち着いた低音の優しい声で囁く…耳元に触れる音と息…身体に伝わる温もり…それらが現実であると妓夫太郎は感じて、脳を覚醒させていく。

    「なっ…!ア、アンタ!いつ帰って来たんだよ!!」
    「さっき」
    「え!?あ、お、おかえりっ」
    「おう。ただいま」

    寝起きの為か多少混乱していた妓夫太郎だが、徐々に冷静になっては宇髄へおかえりの挨拶をしてきた。そんな妓夫太郎に宇髄はニカッと笑ってただいまと告げる。そんな二人の間に、

    「お兄ちゃーん!」

    梅が割って入っては、妓夫太郎を宇髄から奪い取るように抱き締めてしまう。

    「お兄ちゃんおはよー!」
    「え?あ、おはようなぁ梅ぇ…っても、夕方だよなぁぁ?」
    「オイコラ…何俺から妓夫太郎を奪ってんだ」
    「はぁ!?お兄ちゃんは元々アタシだけのものなんだからね!アンタなんかにやった覚えないわよーだ!」
    「はい残ねーん。妓夫太郎はもう俺のもんでーす」
    「はぁ!?」
    「周り見ろよ」

    ニヤニヤと勝ち誇ったような笑みを浮かべる宇髄に言われ、梅と妓夫太郎は周りを見渡す。そこには宇髄の部屋着とその他の衣類…

    「俺の服で巣作りしてたもんなぁー妓夫太郎」
    「ッー!!」

    巣作り…番となったオメガが、番であるアルファの匂いに包まれたいと本能的にアルファの衣類を自身にとって居心地が良い場所に持ち込み、くるまってアルファを待つ行為である。それを指摘され、妓夫太郎は顔を真っ赤に染めてふるふると小刻みに震えだしてしまう。
    巣作りの事は知っていた梅もそれを指摘され動揺し、「アタシの着物も持ってくるもーん!」と泣きながら部屋から出て行ってしまった。

    「俺の完全勝利だな」
    「いやアンタ、ちょっと大人気ねぇよ……」

    ドヤ顔で勝利宣言をする宇髄に、妓夫太郎は顔を真っ赤にしながらも呆れた視線を送る。

    「ところで妓夫太郎…」
    「んん〜?」
    「巣作りしてたって事は、発情期だよな?」

    巣作りは発情期にやってしまう行為。それを優しい微笑みを浮かべた宇髄に指摘され、妓夫太郎は言葉を詰まらせた。宇髄の大きな手が頬に触れ、優しく淫らに撫でていく。

    「そろそろ、お前と子供作りてぇんだけど?」

    そう告げて、宇髄は妓夫太郎の頸へ顔を埋めてかぷっと甘噛みをする。その感触に妓夫太郎は思わず「んッ」と身震いをし、宇髄の身体を引き離そうとするが宇髄がそれを許さない。妓夫太郎の細い腰に腕を回してぎゅっと抱き締め、自分に密着させていく宇髄。甘噛みした箇所からゆっくりと鎖骨へと舌を這わせては妓夫太郎の体温を上げていく。

    「ッぁ!んんッ…ぁッはァ、あァッ…!」

    発情期の体温の上昇はフェロモンも上昇させる。甘く妖艶な匂いが意図せず身体から発せられ、妓夫太郎はハァハァと口から熱い吐息を漏らしていく。

    「て、天元ッ…だ、ダメだぁぁッ…まだ、ダメッ…!」
    「"まだ"ダメって…いつになったら良いんだよ」

    宇髄は顔を上げ、どこか寂しげな瞳で妓夫太郎を見つめた。
    巡り逢えた運命の番である妓夫太郎との子を授かりたい。その想いは日に日に強くなっていたが、妓夫太郎は未だ躊躇った様子で子作りだけは拒否していた。性交は何度も何度もやっているというのに。

    (まぁ今までオメガって自覚無くて生きてきて、いきなり野郎から子供孕んでくれ言われたら躊躇っちまうのは分かるが)

    妓夫太郎はあの日まで自分がオメガであるという事を知らなかった。第二の性の事は知っていたが、鬼である自分たちには関係ないだろうと思っていたらしい。周期でやって来ていた発情期を何かの発作だと思い、妹の身の中でやり過ごしていたのも周知が遅れた原因の一つである。
    そんな妓夫太郎の気持ちを分かった上で宇髄は妓夫太郎との子を強く望む。それはアルファとしての本能ではなく、宇髄天元として…大切なかけがえのない妓夫太郎との子が欲しいという愛情からの望み…
    そんな宇髄の気持ちを知らない妓夫太郎は、何故宇髄がそんな寂しげな瞳をするのか分からなかった。分からなかったが、戸惑いを隠せない表情を浮かべ"まだ"ダメな理由を宇髄へと答えていく。

    「いやだってッ…また梅が来るかもしんねぇし、嫁さん達だって起きてっしッ…てか夕飯だってまだなんだからよぉぉッ」
    「ん?…んじゃ、今夜皆が寝静まった後なら良いって事か?」
    「えっ、あ、ぅ、ぅん…ま、まぁなぁぁ……」

    そう頬を赤らめて、眉を下げて恥ずかしがりながら上目遣いで宇髄を見つめてくる妓夫太郎…。
    "まだ"というのは時間だった。時期ではなく時間…妓夫太郎は既に宇髄の子を成す事を決めていたのだった。それを知った宇髄は、

    「絶対な。絶対今夜な?」

    キリッとした表情で妓夫太郎に念押ししていく。そんな宇髄に妓夫太郎は「お、おぅ…」と宇髄の熱意に圧されながら答え、

    「だ、だから…今は、その…抑えてくれよなぁぁ…」
    「おう。夜にド派手に解放するわ」
    「それはそれで不安だなぁぁ…」

    宇髄の発言に不安がりながらも、妓夫太郎は照れ臭そうに笑う。それは宇髄の子を宿す事への喜びの笑み。その笑った顔が可愛くて、愛おしくて、宇髄は微笑みを浮かべて妓夫太郎に口付けをする。それは触れるだけの軽い口付け。いつもならば、舌を絡ませたり口内を責めていく濃厚な口付けをするのだが、それは夜にとっておくつもりのようだ。

    「なぁ妓夫太郎…」
    「ん?」
    「今、幸せか?」
    「幸せに決まってんだろぉ…アンタは?」
    「んなもん、幸せに決まってる」

    微笑みを向け合い、再び触れるだけの口付けを交わす二人…

    運命の番は鬼だった…それでもド派手に幸せになってやるさ。この笑顔を守りながらな。
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