青い宝石に想いを込めて「妓夫太郎…これを受け取れ」
そう告げられて、差し出されたのは赤いリングケースに入った、青い宝石の付いた指輪だった。
正直驚いた。驚いて目ん玉ひんむいた。いやだって、普通にリビングでお互いにソファーに座ってテレビ見てる時に急に出してんくだもんなぁぁ。
俺が驚愕してその指輪を見つめてると、指輪を差し出してきた俺の同居人&恋人・天元は続けて言葉を告げてくる。
「この石を見た時、お前のその瞳が頭から離れなくなっちまった。離れなくて、お前のその澄んだ青い瞳を独り占めしたくなっちまってな…これからは、お前のその瞳に俺だけを映してくれ」
赤い宝石のような瞳が俺を見つめてる…その瞳は真っ直ぐで真剣で、俺は吸い込まれそうになるかと思った。
つかこれって、プロ、ポーズ…だよな?ただ単にプレゼント贈りたいってだけじゃねぇんだよなぁ?
「妓夫太郎、俺と結婚しろ。他の奴がお前を幸せにするなんて、俺は許さねぇ」
あ、うん。プロポーズだ。完全にプロポーズだわ。つか「結婚してくれ」じゃなくて「結婚しろ」なんだなぁぁ。俺に拒否権無しなのかよ…。たく、困ったイケメンだなぁぁ。指輪も「受け取れ」だったしなぁぁ。もし俺が受け取らなかったらどうする気だったんだぁぁ?俺は天元から視線を逸して思わずハァ…と深い溜息をつく。
「妓夫太郎…」
さっきよりもトーンダウンした俺を呼ぶ声が聞こえる。あ、今の溜息で傷付いちまったか?俺が即OKすると思ってたのに、想像と違った反応して落ち込んじまった感じかぁぁ?おいおい…そんなんでよくまぁあんな強気なプロポーズできたもんだなぁぁ。もうちょっとドンッと構えておけねぇのかよ…みっともねぇなぁぁ…
「妓夫太郎、こっち向け」
俺がずっと俯いてると、大きな手が俺の頬に触れてきた。その手は優しく俺の片頬を包んで、俺の視線を赤い瞳に向けさせていく。向いた先には、宝石みてぇな綺麗な赤い瞳が、俺に優しい眼差しを向けていた…
「妓夫太郎」
ふんわりと優しい微笑みを浮かべて、囁くように俺の名を呼ぶ…キスをするのかと思う位に顔を近付けてきては、頬に触れてる手を撫でるように下ろして俺の手にそっと重ねてくる。そして、
「…顔、真っ赤だぞ」
「…るっせぇぇ」
俺の顔が真っ赤に染まってる事を指摘してきやがった。
んな事分かってんだよ。顔クソ熱過ぎて火が出ちまうんじゃねぇかって思ってたんだよッ。心臓だって爆発しちまいそうだわッ。なのに何クスクス笑ってんだッ。テメェのせいだろうがッ。ぶっ飛ばすぞッ。
「んで、返事は?」
「俺に拒否権ねぇんだろうがッ」
「まぁな」
「…まぁ、拒否権無くても即OKだけどなぁぁッ」
決まってんだろ。一々んな恥ずかしい事聞くなよなぁぁ。これだからイケメンはッ…
俺の返事を聞いて、コイツはニッコリと嬉しそうに笑いやがる。それに釣られて俺の頬も緩んでいく。
「ぜってぇ俺を幸せにしろよなぁぁ」
「当たり前だろ。じゃねぇと、プロポーズしねぇわ」
ずっと触れそうだった唇が重なっていく。唇を重ねて、舌を絡ませて…そのまま俺はコイツに押し倒されていく…
その日から俺の左手の薬指には青い宝石が光り輝いていた。柄にもねぇ事は分かってるが、俺は一生コレを手放す気はねぇ。ぜってぇになぁ。